黄世惠（こうせいけい、JoyceHuang）さん（2014年11月取材）

チャイナエアライン(中華航空）九州山口地区　支店長

台湾と九州の架け橋になりたい

　台湾の航空会社・チャイナエアラインで、36歳のとき、ゼネラルマネージャー（支店長）に抜擢された黄世惠さん。2014年７月、最年少かつ女性初の九州山口地区の支店長に就任して、福岡へやって来た。中国語に加えて、日本語も英語も流ちょうに話す黄さんは、とても穏やかで優しい雰囲気に包まれていた。

語学を身につけたくて日本の大学へ進学

　台湾南部にある台湾第二の都市・高雄市で生まれた黄さん。15歳から５年間、ファッションデザインの学校に通った後、何か外国語を習得したいと考え、日本に留学した。「前に家族で北海道を旅した日本もいいなと。台湾は雪が降らないので、北海道で生まれて初めて見た雪に感動したんですよ」。
　関東の学校で日本語を10か月猛勉強して、難関とされる日本語検定１級を取得。ファッション、ビジネス、国際関係の３つの学校に合格した中で、東海大学教養学部国際学科に入学した。「それまで政治や経済に興味がなかったので、あえて自分が一番苦手なことを学ぼうと思いました。私はもともとチャレンジするのが好きなタイプなんです」。留学生団体の役員も務め、楽しく充実した大学生活を送ったという。

航空業界を目指して留学し、見事に入社

　卒業後は、台湾に戻り銀行の子会社に就職。２年後に旅行会社へ転職すると、航空会社の仕事に興味を持った。そこで、英語を学ぶべく、一念発起してオーストラリアに留学。2001年に29歳で帰国したときは、折しもアメリカ同時多発テロの影響で、航空業界は厳しい状況に。旅行会社で働きながら機会をうかがっていたところ、運よくチャイナエアラインのマネジメント人材募集を知り、採用に至った。
　念願の業界で、30歳からの再出発。台北支店の営業課長アシスタントからスタートして、本社の国際関係部の次長に。「台湾と日本の両政府が運航路線を決める大事な交渉の場に携わることもできて、非常にやりがいがありました」。さらに高雄支店の営業次長、台南支店長、本社旅客マーケティングの旅行パッケージを担当する部長へと異動し、女性の少ない営業畑を主に歩んできた。「実は私、お酒が飲めないんです。お酒を飲まないで営業ができるのかとよく聞かれるのですが、私がそれを証明しますよと返しています」と茶目っ気たっぷりに笑う。

ポジティブ思考でワンステップずつ夢に向かう

　2014年7月、九州山口地区の支店長として、福岡に来た。「福岡は食べ物がおいしく、人が親切であったかくて、とても生活しやすいですね。支店のメンバーはとても頑張っていて、私もそのチームのひとりです。メンバーが困っていることがあれば、本社とのつながりを活かしてサポートしたい」と力強く話す。メンバーとの日常会話は日本語で、会議やメールでは英語を使うという。
　九州山口エリアのトップとして、各地を飛び回っている。旅行会社と提携したプランを企画したり、就航路線の拡大・増便などに関わるほか、機内食のメニューを試食し、「お肉をおいしそうに見せるために、ソースは下にかけましょう」「盛り付けを美しく」など、乗客目線の細やかな提案もするという。
　そんな黄さんが仕事で心がけていることは、２つある。「ひとつは、仕事はできるだけその日のうちに終わらせて、翌日に持ち越さないこと。毎朝フレッシュな気持ちで仕事に向かいたいので。もうひとつは、早く決断すること。迷っても、その場で考え続けて決めます」。
　「台湾と九州の架け橋となり、交流を深めたい」と熱く語り、「今の仕事は自分に合っているから幸せ」と優しく微笑む黄さん。「何かやりたい気持ちがあるなら、夢に向かってワンステップずつ進めば、きっとできる。もし辛いことがあっても、悪いことには目をつむり、いい面だけに目を向けてポジティブでいれば乗り越えられますよ」。国境や言葉の壁を自らの努力で飛び越え、信念を持ちチャレンジを続けてきた黄さんのアドバイスは、私たちに勇気をくれる。　（2014年11月取材）

私の大切な時間

　黄さんの趣味は、ゴルフと旅行。友達や家族とグリーンを回るのが楽しく、旅行先でもゴルフをして、美しい景色を眺めるのが好きだという。また、料理も趣味のひとつだ。「仕事の付き合いで外食が多いため、時間があるときはできるだけ自炊するように心がけています。九州の食べ物は何でもおいしくて、特に和牛と明太子は絶品。ただ、馬術部だったから、馬肉だけは食べられないんです」とチャーミングに首をすくめる。