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龍 美樹(りゅうみき)さん (2014年11月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

株式会社九州字幕放送共同制作センター 代表取締役社長

高齢化社会や災害時に不可欠な字幕放送を普及させたい

 2014年7月、九州電力のグループ会社の代表取締役社長に就任した龍美樹さん。入社以来、“女性初”をいくつも経験してきたが、気負った感じはなく、話し方もいたって自然体だ。「長年、広報業務に携わってきましたが、自分が表に出るのは好きじゃなくて」と言いつつ、これまでの道のりを語ってくれた。

男性社員と同じように指導してもらった

 小学生のころから福岡市で暮らし、西南学院大学を卒業。就職難の中、ようやく採用された就職先は、九州電力株式会社だった。「学生時代に事務のアルバイトをしたことがあり、雰囲気のいい会社だなと好印象を抱いていたんです」。入社した1985年は男女雇用機会均等法施行の前年で、同社が4年制大学卒業の女性を採用したのは初めてだった。
 最初の2年は、福岡県内の営業所に配属。「初めての大卒女性だからと変に区別されることはなく、新入社員を職場全体で指導してくれる恵まれた環境でした。会社で働くことはおもしろいと感じました」と振り返る。
 入社から3年目、福岡の本店営業部サービス課へ。大卒社員は営業所3年、支店3年を経て本店というのが一般的で、3年目で本店配属というのは異例のことだ。「実は同期女性4人のうち1人がすぐに結婚退社したため、女性は早めに本店でキャリアを積ませようという会社の配慮だったのだと思います。会社側も私たちの扱いを模索していたのでしょうね」。本店では上司や先輩から優しく、厳しく、指導をしてもらったが、龍さんは自分の経験と知識不足を痛感。「お茶出しやコピーは女性の仕事、と言われていた当時ですが、上司がコピーを頼むのは、その資料をコピーしながら読んで勉強しなさいという意味でした」。そこで、先輩と上司の打ち合わせに耳を澄ませ、コピーの資料に目を通すなど、周囲が何をしているのか、会社の動きに関心を持つことを学んだという。
 

広報部では発信する楽しさと苦しい時期を経験

 20代後半から12年間にわたり、広報部へ。会社のCMやPR誌、社内報の制作などを担当した。そのうち2年間は東京にある電気事業連合会へ出向。全国の電力会社10社から成る組織で、女性の出向は初めてだった。さらに経営管理室、福岡支店経営計画グループ長など、経営管理に関わる部署を経験。経営について知識を深めるべく、各界の人材が最先端の経営哲学を学ぶ「九州・アジア経営塾」の第1期生募集に手を挙げ、各界でリーダーを目指す人たちと切磋琢磨した。
 広報部に戻ると、原子力広報グループ長を経て、2010年から報道グループ長に。エネルギー需要の高まりなどを背景に原子力発電を再評価しようとする潮流のなか、折しも2011年3月の東日本大震災が起こり、福島第一原子力発電所事故が発生。原子力への風当たりが一気に強まり、九電も苦境に追い込まれた。原子力発電所が停止し、厳しくなる電力の供給、電気料金値上げ…。記者会見など、報道機関からの厳しい質問もあり、社内調整と報道対応に奔走。「これまでの会社人生で、報道対応が一番苦しい時期だったかもしれません」。

社会に必要な字幕放送の普及拡大に努める

 そして2014年7月、株式会社九州字幕放送共同制作センターへ出向となり、代表取締役に就任。同社は、九電と福岡の民放5社の共同出資により、テレビ番組の字幕制作のために設立された九電の特例子会社だ。テレビ字幕はテロップと違い、視聴者がリモコン操作でオン・オフにできる。「字幕は、聴覚障害者や高齢で難聴の方など、通常のテレビ音声が聞きづらい方々へ放送局が行う補完的なサービスです。特に東日本大震災以降、震災などの緊急時は難聴の方々が迅速・確実に情報を入手するために、字幕が不可欠だと認識されています。現在、難聴の方は約1,000万人以上と推計され、高齢化が進めば、さらにその人数は増えていくでしょう。必要とされる多くの方に字幕放送を利用してもらいたいですね」と龍さん。社長就任から4か月が経った今、「これまでの仕事とはかけ離れた放送業界で字幕放送の制作や普及に関わり、経営者としては会社の収益を上げて、社員待遇もよくしていきたい」と語る。
 九電初の大卒女性社員として入社し、女性で初めて業界団体へ出向、経営塾の1期生でも唯一の女性で、ついには九電グループで初の女性社長に就任するなど、何かと“女性・初”と注目されてきた龍さん。「どう感じていますか?」と尋ねると、「特に気負っているつもりはありません。 意識していたらやっていけないから」とあっけらかんと笑う。「毎朝ご飯を食べたり歯磨きするのと同じように、私にとって仕事は生活の一部であり、自分らしく職務を全うしているだけです」ときっぱり。物事に動じることなく、龍さんはこれからも自分らしく歩んでいく。
(2014年11月取材)

コラム

私の大切な時間

 海外旅行が好きで、毎年のように海外へ行っていたが、ここ数年は旅行する余裕がなかったという龍さん。「最近の楽しみは、学生時代の友人たちと会うこと。ようやく子育てが一段落した人もいて、週末にランチしながら、たわいない話をするのがリフレッシュになります」と柔らかい笑顔で話す。

プロフィール

福岡県大牟田市で生まれ、小学生の頃から福岡市で育つ。福岡中央高等学校、西南学院大学法学部を卒業後、1985年に九州電力株式会社に入社。1990年から2002年まで広報部に属し、経営管理室、福岡支店企画管理室経営計画グループ長、広報部原子力広報グループ長、同部報道グループ長などを経て、2014年に株式会社九州字幕放送共同制作センターへ出向し、代表取締役社長に就任。

 

 

 

 


 

 

 

 

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