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神崎 邦子(かんざきくにこ)さん (2014年1月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

一般社団法人だんだんボックス 代表理事 (取材時:だんだんボックス実行委員会 代表)

たくましき楽観主義者であれ

 のびやかなライン、大胆な色使い、生き生きとした動物たち…見る人の心をグッとつかむ段ボール箱「だんだんボックス」をご存じだろうか。この絵を描いたのは、障がいのあるアーティストたち。彼らの自立に向けて活動する「だんだんボックス実行委員会」の代表を務めるのが神崎邦子さんだ。カラッと陽気な神崎さんに、これまでの自身の歩みや思いを伺った。

30年にわたって女性の会を主宰

 東京の浅草生まれ。母親の影響で歌舞伎や舞台、映画、本などの芸術に親しんで育ち、立教大学の文学部へ進学。在学中から雑誌の編集に携わり、卒業後は子育て情報誌等の取材・制作を生業とした。25歳で結婚して1男1女を出産。夫の転勤に伴い、全国を転々とした。「引っ越した先々で女性と集まり、いつも楽しんでいましたね」。
 そんな神崎さんが福岡へ居を構えたのは、30代後半のこと。夫の仕事の都合だった。「私は私の世界を持ちたい。長く続けられる好きなことで」と考えたとき、頭に浮かんだのは紫式部の「源氏物語」だったという。「源氏物語は単なる恋愛物語ではないんですよ。恋愛という装飾を施しているけれど、実は人間の本質に対する問いかけなんです」。「源氏物語」を通して生き方を深めようと、女性17人で「女性文化研究会」を設立。これまで30年にわたり、会を継続し、様々なイベントも開催している。

障がいのあるアーティストに輝いてほしい

 自他ともに認める“世話好き”で芸術を愛する神崎さんが今、情熱を傾けているのが、冒頭で紹介した「だんだんボックス」。作品の素晴らしさに惚れ込み、縁のあった3人で「絵の才能に恵まれた障がい者たちを支援したい」と2010年に活動を始めた。彼らの絵をデザインした段ボール箱を販売し、売上を本人や福祉施設に還元するという取組だ。「福祉という形ではなく、一般の方や企業と橋渡しをすることで障がいのあるアーティストが活躍できる場をつくり、精神的・経済的な自立をサポートしたい」。立ち上げから3年、郵便局での取り扱いも始まり、活動の場は全国へ。
 さらに、魅力ある絵が様々な企業の目にとまり、百貨店のバッグ、バス、福岡港のコンテナ、運送会社のトラック、病院の検査室の扉、自動販売機など、コラボの輪が広がっている。例えば、熊本の人吉では、地元の青年の絵が自動販売機に採用された。売上金の一部が本人に入り、絵の具代になる。「地域の人が『○○くんのジュースを飲みに行こう』と買いに来てくれるそうです。これからは、そんな顔の見える支援が理想ですね」。
 2011年には企業と協働で、だんだんボックスを彩る作品の公募を始め、全国から444作品が集まった。受賞作品の一部はボックスに採用されている。「授賞式で本人は笑顔、家族は涙…彼らと家族の頑張りに胸が熱くなるし、頭が下がります。この公募が障がい者の励みとなり、一流のアーティストと肩を並べる登竜門になるように頑張っていきたい」と力を込める。この取組は「ふくおか共助社会づくり表彰(協働部門賞)」を受賞した。一方、支援されるだけでなく、社会に恩返したいという思いで、障がい者の絵で被災地を応援するプロジェクトも進行中だ。だんだんは、西日本の一部に残る方言で「ありがとう」の意味。福岡の地にまいた思いやりの種はだんだん広がり、各地で花を咲かせている。
 「今の私のテーマは“つないで結んで、一人ひとりが輝いて”。人間は弱い存在だから、仲間を見つけて、折れない心を持つことが大切。私だって傷付くことはいっぱいあった、人をすぐ信用しちゃう性格だから、余計に。でも、全て受け止め進んできた。たくましき楽観主義者であれ、と心に刻んでね」。太陽のように輝く笑顔で、神崎さんの挑戦はこれからも続く。
(2014年1月取材)

コラム

私の大切な宝物

 神崎さんの宝物は、作家の田辺聖子さんに書いてもらった書。「10年ほど前にお会いしたとき、源氏物語の会を主宰していると話したら、さらさらと書いてくださったんです。源氏物語は女人賛歌、これを引き継いでいってほしいと託されました」。

プロフィール

東京都浅草出身。立教大学卒業後、子育て情報誌の編集やフリーペーパーのレポーターなどを務めた。1985年、福岡で「女性文化研究会」を設立。芝居や古典を学ぶ会、日本の文化歴史を再発見する企画などを開催。同年、福岡県女性海外研修事業「女性研修の翼」に参加。2008年には人間力アップを目指すNPO法人「匠ルネッサンス」を設立。2010年「だんだんボックス実行委員会」を設立、代表に。2011年、だんだんボックスが日本デザイン振興会の「グッドデザイン賞(パッケージ部門)」を受賞。2012年3月には公募プロジェクトが「ふくおか共助社会づくり表彰(協働部門賞)」を受賞した。2014年8月、一般社団法人「だんだんボックス」となり代表理事に就任。
また、2012年「第3回福岡グッドエイジャー賞」を受賞。長年にわたり九州市民大学の常任理事・運営委員も務めている。

 

 

 

 


 

 

 

 

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