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田代 久美枝(たしろくみえ)さん (2013年12月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

おとなりさんネットワーク「えん」 代表 / 北九州市地域福祉振興協会 理事

「居場所」をつくり、誰もが安心して暮らせる社会に

 「高齢になった時、助け合えるネットワークが欲しい」そんな思いを共有する仲間達と、『おとなりさんネットワーク「えん」』を立ち上げたのは53歳の時だった。「いざという時、頼れる場所があれば心強いでしょう?」そう微笑む田代さんは、困った時に誰もが駆け込める「居場所づくり」に力を注いでいる。

自分たちのために、自分たちでやろう

 子ども会などの地域活動に関わりながら、同世代の主婦仲間と交流を深めてきた田代さん。しかし50歳を迎える頃には、「夫のリストラ」「子どものパラサイトシングル」「親の介護」といった困難に直面し、とまどう仲間達が増えてきた。
 介護保険制度が導入された2000年前後は、様々な社会問題が表面化してきた時期だった。「生活に支障を来すほどの問題を、誰もが抱えていたんです」。田代さんはそれを個人の問題だとは切り捨てなかった。解決法をみんなとざっくばらんに話すうちに、「社会を変えることはできないけれど、お互いが支え、助け合うことはできるんじゃないか」と。こうして2001年、近隣型助け合いの活動グループ「えん」がスタート。当時、「誰かのために」活動するボランティア団体がほとんどだった。「自分達のために」活動する「えん」は珍しがられたという。

「認知症・草の根ネットワーク」スタート

 「えん」は誰でも自由に参加できる緩やかなネットワーク。活動の中心は、田代さんの自宅を開放する「火曜日の会」だ。乳幼児を連れた主婦から高齢者まで、幅広い年代のメンバー20名ほどが毎週集う。料理やバザー用の小物作りに勤しむ人や、食べるだけ、おしゃべりを楽しむだけの人もいる。そんな気楽な居場所だからこそ、互いに悩みを打ち明けることができるし、親身になったアドバイスも自然と出てくる。時には、社会保障や医療問題などの勉強会をすることも。そうやって、15年以上の活動を通して、お互いの絆を強めてきた。
 いつしか、初期の認知症の方とそのパートナーも訪れるようになった。田代さん自身も昔家族が認知症を患い、介護に苦労した経験を持つ。「認知症の患者さんは行き場がない。それに心身共に疲弊した家族の方も頼れる場所がないのです」。認知症への理解と、居場所づくりの必要性を痛感し、医師や介護事業者、行政なども巻き込んで、2009年、「認知症・草の根ネットワーク」の活動を開始。「えん」のメンバーも積極的に認知症について学び、専門家や患者、家族との連携を進めている。

お互いに支え合う取組を広めたい

 「残念ながら、高齢化、独居、非正規雇用…公的な社会保障だけでは生活が成り立たないケースが、今後ますます増えていくでしょう。ならば、ご近所同士自分達で支え合っていくしかありません」。家の仕事をこなし、地域と共に暮らす女性は、周りの人を支える力に優れていると力説。これからの社会には、女性の力が欠かせない、と期待する。
 高齢化が進み将来への不安が広がる昨今、社会保障を補う「居場所」の必要性をできるだけ多くの人に伝え、仕組づくりを急ぎたいと語る。積極的な活動が功を奏してか、ここ数年、「えん」のノウハウを知りたいと話を聞きに来るグループは後を絶たない。そして、同様の取組も各地で進みつつある。
 認知症カフェや高齢者のシェアキッチン・シェアハウスなども検討しているようだ。誰もが安心して暮らせる社会を目指し、人々の心に寄り添う田代さんの思いは熱く、尽きることがない。
                                                                        (2013年12月取材)

コラム

 無類の猫好きで野良猫を見過ごせず、今では4匹もの面倒を見ている。活動の原動力を尋ねたら、「人が好き、それにさみしがり屋だから」と笑う田代さん。その優しい眼差しは、命あるものすべてに向けられている。

プロフィール

北九州市若松区生まれ。北九州市立大学文学部国文学科を卒業後、地元企業に就職し秘書等の仕事をする。26歳で結婚・退職後は、地域活動に励む。2001年、おとなりさんネットワーク「えん」を設立。2009年には「認知症・草の根ネットワーク」の結成に参加。認知症を理解し受け入れる社会づくりを進めるほか、障害者の自立支援など、様々な社会活動に取り組んでいる。北九州市地域福祉振興協会理事。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【た】 【NPO・ボランティア】 【福祉】

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