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西川 ゆかり(にしかわゆかり)さん(2013年11月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

有限会社ブルーランク 代表取締役

志さえあれば、人は何でもできる

 西川ゆかりさんがアパレル会社を辞め、起業したのは26歳のとき。スーツケース1つと30万円だけを抱え、アメリカへ渡った。あれから15年。今や14人のスタッフを擁する会社の社長となり、一児の母となり、「いやあ、いきあたりばったりだったけど、天職だと思います」と陽気に笑う。

たまたま就いた仕事にやりがいを感じて

 沖縄で生まれ、母の影響で絵が好きだった西川さん。中学生のとき、アメリカに住む伯母からもらった1冊の本に心を奪われた。「ロサンゼルスにある美術館のガイドブックでした。世界の多様な美術品が揃っていて、ここで学芸員として働きたいと思ったんです」。別府大学で英語を学び、学芸員の資格も取った。意気揚々と就職活動を始めたが、海外はおろか国内でも新卒の学芸員を採用する職場は見つからない。募集があるまで待つかどうか迷ったが、就職を決意。大学の先生の紹介で面接を受けたのは、福岡に支店を置く婦人服製造・販売会社の営業職だった。「ファッションを学んだ人たちの中で、正直に話しました。『私はファッションについて全く知識がない。でも、やる気だけはあるので、これから勉強します』と」。熱意をかわれ、見事採用に。同社で唯一の女性営業として、九州・沖縄を飛び回った。「沖縄はコートが不要だから、かわりにニットを売りましょう」と会社に企画提案し、売上アップに貢献していった。「人々のニーズをとらえ、心をつかむ企画を立てる。心底楽しいと思えました」。

若いうちに起業しようとアメリカへ

 入社4年目、東京で企画をしないかと社長に打診された。それを機に、ふと自分の将来に目を向けたという。「若い女性向けの洋服を扱い、ショートパンツで営業。今はいいけど、10年後の自分は自信を持ち輝いているか、ポジションはあるかと疑問に思い始めて。ゆくゆくは自分で何かしたいと考えていたので、アメリカの伯母のところで雑貨輸入の道を探ろうと思い立ちました。若いうちに起業すれば何度でもやり直しがきく」と潔く退社。独立資金30万円を貯め、新たな夢に向かい渡米した。
 たまたま前職のお客さんから「ロスでジーンズを買ってきて」と頼まれた。これを機に、売りに出されていた叔母の知人の会社を買収し、アメリカでの拠点をつくり、顧客のニーズに応えていくことに。
 今度は、こんな製品を作れないかと依頼され、韓国の工場で商品づくりも開始。次々と声がかかり、1か月のうち1週間は九州のお客さん回り、1週間は韓国、残りはアメリカで買い付けという目まぐるしい生活がスタートした。わずか1年足らずで軌道に乗せるとアメリカ会社を閉め、拠点を日本に移し、福岡に事務所を構えた。その後は海外を飛び回りながら、服飾雑貨の輸入、卸・販売、企画生産を手がけ、スタッフも少しずつ増えた。
 だが、ずっと順調だったわけではない。2001年のアメリカ同時多発テロ事件により、商品の入荷が大幅に遅れ、数千万円の借金を抱えたことも。「もう駄目だと思いました。でも必死にバイトもして、5年かけて完済。挽回したくて、百貨店に出店しました」。

今の自分にできる“半歩”でいい

 6年前には「予想外の妊娠で、慌ただしく結婚、出産した」という西川さん。「どうしたものかと考えましたね。店は店長に、アメリカ支店もスタッフに任せれば大丈夫。ただ、私が気軽に海外へ行けなくなるから、卸を縮小し小売を強化しました」。会社の代表として、育休を取る余裕もない。生後2か月のわが子を連れて出勤し、授乳しながら打合わせしたり、電話の相手から「赤ちゃん泣いてるよ」と言われたり。「実践して、できることとダメな部分がわかった。あとに続くスタッフはしっかり休めて、それぞれが能力を発揮できる環境を作りたい」と意気込む。現在14人の女性スタッフは、4人が育休や妊娠中で、子育て中の人もいる。「何より大切なのは本人の意向ですね。その人のビジョンや家庭の事情によって、働き方は正社員でもアルバイトでもいい。社員は財産だから、融通をきかせて全力でサポートします」。
 「私の好きな言葉は“The sky is the limit.”。可能性に限界はなく、志さえあれば、人は何でもできる。いきなり100歩は難しくとも、半歩なら出せると思うんです。私自身、借金を背負い、出産して、無理だと思うこともあったけど、その都度やれることを考え踏ん張ってきました」。すがすがしい秋晴れの下、情熱的な瞳とのびやかな笑顔が輝いていた。 (2013年11月取材)

コラム

私の大切な時間

 インテリア関連の会社を経営する夫と6歳の息子と一緒に過ごす時間が、西川さんにとってかけがえのないひととき。「最近はパパが保育園に迎えに行ってくれることもあって、ふたりのたわいない会話を聞きながら、おいしいものを食べたりお酒を飲んだりするのが最高のご褒美ですね」とにっこり。保育園では父母会の副会長も務めているそう。「子どものことも地域のことも、やってみないとわからないから。みんな頑張っていて、やれる範囲のことをやっています。息子も毎日お風呂掃除をしてくれるんですよ」。

プロフィール

沖縄生まれ。別府大学国文学部英文学科を卒業後、大阪が本社の婦人服製造・販売会社に入社して、福岡支店で営業として働く。26歳で退社し、アメリカへ。アメリカで会社を買収。27歳のとき福岡で有限会社ブルーランクを創業。服飾雑貨の輸入、企画生産、卸・販売業を行うほか、福岡市の岩田屋新館「Blue Rank」、VIORO「Flavour」の直営店2店舗を運営。35歳で結婚・出産。

 

 

 

 


 

 

 

 

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