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春田 久美子(はるたくみこ)さん (2013年11月取材)

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福岡エクレール法律事務所 弁護士

法教育を通して、幸せに生きる力を養う

 「法律家っぽくないねって、よくいわれるんです」。柔らかくキュートな雰囲気を醸す春田久美子さん。OLからスタートして、裁判官、弁護士へと転身。私生活でもいろんな思いを味わってきた。「私にはこれしかないと決めつけず、肩の力を抜いて。できることはたくさんあると思うから」。まっすぐな瞳でそういうと、にっこり微笑んだ。

一度はあきらめた法律家への道

 裁判官だった祖父の影響もあって九州大学の法学部に入学した春田さん。法律家に淡い憧れはあったものの、政府系金融機関に就職。だが、働くうちに法律家への想いが募ったという。「男女で待遇に歴然とした差があり、女性はお茶くみや雑用に時間をとられて仕事が進まない。資格や秀でたものがないと厳しいなと思って…。それに、仕事で契約や権利などに触れる機会が多く、法って私たちの生活に密接し、世の中でダイナミックに動いているものだと実感したんです」。仕事の傍ら、司法試験の勉強をスタート。本腰を入れるため、3年後に退職した。その甲斐あって、27歳で司法試験に合格。念願だった裁判官となり、30歳で結婚、そして妊娠。幸せな日々が続くと信じて疑わなかった…しかし、切迫早産で緊急入院した翌日、夫が心臓発作で他界。幸い男の子を無事に出産したものの、福岡の実家で涙に明け暮れた。だが、育児休暇には限りがある。京都地方裁判所に復帰するか、決断のときが迫っていた。「泣いてばかりはいられない。子どもは元気に生まれてきてくれたし、憧れていた仕事もある」。結局、生後8か月のわが子を両親に預け、京都の職場に復帰。わが子に会えるのは月に数日という状況で仕事に打ち込み、小倉、佐賀へと転勤。佐賀地方裁判所ではいつも百数十件ほどの事件を担当し、深夜まで働いた。「仕事の責任はだんだん重くなり、やりがいがありました。でも、心の奥にはずっとさみしさを抱えていましたね。子どもと離れた生活で“母親”業もままならない。パートナーもいない…」。
 40歳を目前にして、良縁に恵まれ再婚。裁判官を辞め、福岡で弁護士として新しいスタートを切った。「裁判官を続ければ、数年おきに転勤がある。子どもや家族との生活を大切にしたいと思ったんです。20代の頃、仕事を辞める決断ができた。裁判官として10年仕事を続けられた。そんなことを振り返り、自分を奮い立たせて決断しました」。

法と人びとの橋渡し役として

 弁護士の本業に加えて、もうひとつ春田さんが情熱を注いでいる活動がある。それは子ども向けの「法教育」。法律の知識ではなく、法の意義や仕組みを学ぶための教育で、小中高の新学習指導要領にその充実が盛り込まれた。興味を持ったきっかけは、裁判官だった11年ほど前。裁判所の広報係として、子どもに模擬裁判を体験してもらった。すると「検察官と弁護人の両方の言い分に納得しました。どちらがいいかわからない」と感想が寄せられた。「子どもは素直で多様な考え方を受け入れる土壌があると確信しました。キラキラと目を輝かせて真剣に話を聞いてくれる子どもたち。未来に開かれた大きな可能性を感じ、法教育に携わることが楽しく大好きになりました」。
 現在は月数回、小中高校で法教育の出張授業を行う。春田さんがテーマにするのは、子どもにとって身近な話題ばかり。アイドルグループの人気投票を題材に選挙や平等について考えたり、小学生が携帯電話を持つことの是非を議論したり。子どもたちには「間違ってるとか心配しないで発言してね」と必ず伝える。「正解はひとつじゃない。いろんな考えがあっていい。自分の頭で考え、意見を持ち、どう伝えるか。立場が異なる人の意見にも耳を傾け、対話する。法教育は、一人ひとりが幸せに生きる力を養えるんです」。

法教育を福岡から広めていきたい

 実践を繰り返した経験を踏まえ、法務省主催の法教育懸賞論文に応募したところ、2年連続で受賞。「私は間違ってなかったんだと思えて、素直にうれしかった」。2012年の夏休みには、子どものための法教育イベントも主催。フランスやアメリカ、ブータンの人たちの話を聞いたり、ゲームやワークショップを通して楽しく法について考える場を提供した。「自分の考えを持ちつつ、お友だちと折り合いをつけていくことは、異文化理解・交流にも役立ちます。フランスには哲学の絵本があって、小さなころから“自由ってなぁに?”“生きるってどういうこと?”みたいに哲学や法に親しんでいるそうです。世界とつながることも私の目標。法教育を福岡から全国、そして海外へと発信していきたい」と力を込める。
 弁護士になって8年目。元シェフの夫が家事をこなし、多忙な春田さんを支えてくれる。「将来は夫とフレンチのレストランを開きたい。いろんな人と、ワイン片手に法教育談義ができるような」。法教育のパイオニアとして、家族を愛するいち女性として、春田さんの夢はどんどん広がる。 

(2013年11月取材)

コラム

私の大切な時間

 春田さんの人生を豊かに彩ってくれるのは、ピアノの存在だという。「単身赴任が続き、寂しかったころ、奮発してスタンウェイのピアノを買いました、中古ですが… 。小さいときに習っていたピアノを再び弾くことで、ずいぶん救われましたね。最近は6歳の娘と一緒に弾いて歌ってますし、今では恥ずかしがって一緒には弾いてくれなくなった高校生の息子ともいつかまた連弾してみたいな~。ピアノを真ん中に家族が集まって楽しむ…。そんな日常の一コマが、とっても幸せです」。

プロフィール

静岡県浜松市生まれ。父の転勤で全国を転々とし、小学生から福岡へ。九州大学法学部卒業後、金融機関で3年間働き、27歳で司法試験に合格して裁判官に。40歳のとき、弁護士に転身。弁護士としての業務のほか、法教育の出張授業から講演、新聞やネットへのコラム執筆、テレビ出演まで幅広く活動。法務省の法教育推進協議会などが主催する「法教育懸賞論文」で、平成22年度は優秀賞、平成23年度は法教育推進協議会賞を受賞した。

 

 

 

 


 

 

 

 

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