ロールモデル
ロールモデルとは
講師情報
講師情報とは
株式会社サムライト 代表取締役
専業主婦として12年間、子育てと家事中心の生活を送った。子どもが手を離れるころ、派遣社員としてパソコン教室のインストラクターになった。仕事の面白味を見出して、たった1人で起業。そこから、人生が勢いよく回り始めた。オリジナルの教材を使ったシニア向けパソコン教室、タブレットPCを使った脳の若返りトレーニングなど、新たな事業を次々と展開。「私のミッションは、健康寿命の延伸」と語る光岡さん。そんな願いの背景には、自身の両親への思いもあるようだった。
カリキュラムを終えたら卒業というパソコン教室のやり方に疑問を感じ、「楽しく続けられる教室がしたい」と、たった1人で開業したのが2003年。パソコンを5台購入し、近所の公民館でパソコン教室の生徒を募ったところ、集まったのがシニア世代だったという。聞けば、夫婦2人きりで特に楽しみもないという女性や、定年退職して急に社会とのつながりがなくなり、「予定があると安心する」という男性も多かった。「経験豊富な“人生の先輩たち”に、もっと人生を楽しんでほしい」。教室では、操作技術の習得以上に、「講師や仲間と会いに行きたくなる場づくり」に心を砕いた。
習ったことを忘れてしまってもいい。みんなでワイワイやろう―。そんな雰囲気や手ごろな月謝、公民館での開催という続けやすさもあって、生徒数は2年で100人を超えた。「『死ぬまで通います』って言ってもらえたのが嬉しかった」と光岡さん。継続率は82%。10年間通っている人もいる。パソコンを通じて、高齢者が子どもや孫たちとのコミュニケーションも楽しめるよう、講座内容も充実させていった。
ただ、経理や機材管理、テキスト作り、講師まで1人でこなすには限界があった。体が悲鳴を上げ始めた2006年、福岡市男女共同参画推進センター「アミカス」が実施した女性起業塾に参加。経営を一から学び、2009年に法人化させた。このとき、同時に立ち上げたのが、健康寿命を伸ばし、生き生きと充実した生活を送るための取組を行う「介護予防事業部」。シニアが元気でいつづけるためのサービスを追求するための部門だ。
きっかけは、パソコン教室中に、1人の生徒が突然ズボンを脱いでしまったことだった。「尊厳を守りながら、認知症予防を楽しくやれる方法はないだろうか」。その出来事から認知症予防について新たに学び、タブレットPCを使った「みつおか式脳若トレーニング」を開発した。機器を操作しながら、みんなで体を動かしたり、音読したり、ゲーム感覚で場が盛り上がるプログラム。言葉数が増える人や、笑顔が増える人。字を書くのが嫌いだった男性が、弱々しい字で「楽しみになった」と書いてくれたこともあったという。
女性に偏りがちな料理教室や体操教室と違い、「タブレットを使った講座は、男性にも人気なのが特徴です」と光岡さん。行政や介護施設にも実践が広がっており、職員から「光岡さんの講座は、参加型ですね」と反応があることに手ごたえを感じる。「本人が受動的になるのではなく、『参加したい』とワクワクすることが大事。その要はコミュニケーション。だから、講師の採用では人間性を重視するんですよ」。
集まった生徒が、たまたまシニア世代ばかりだったことに始まる事業展開。ただ、偶然の出会いの中で、「最期まで幸せに生きる」というテーマに心つかまれたことには、背景があった。光岡さんの父親は、17年間寝たきりで亡くなった。介護に通った施設では、高齢者たちがいつもロビーのテレビをぼーっと眺めていた。生徒たちと親しくなるほど、「幸せな老後を過ごしてほしい」と強く思ったという。
一方、90歳を迎えた母親は、メールも打つし、タブレットで読書もする。成人した光岡さんの息子さんも感心するほど、生き生きとしている。「超高齢化社会の話題は深刻に語られがち。でも、適切なサポートをすれば、健康寿命を延ばせる時代なんです」。
パソコン教室の講師に採用するのは、子育て中の主婦たち。通いやすい範囲を担当するので、教室が、地域のシニア世代と子育て世代を結ぶ場にもなる。幸せの原点は、人のつながり。光岡さんはあの手この手で模索し続けている。
(2013年8月取材)
社名のサムライトは、「侍」と光岡の「光」の語呂を合わせてつくった。「実は、私は本物のサムライなんです」と光岡さん。中学校時代、友人の誘いで始めた剣道。その後、めきめきと腕を上げ、世界選手権個人優勝の桜木哲史さんからスカウトされるほどの剣士になった。大学には剣道特待生として入学。早朝から夜まで剣道一色の青春だった。「しんどかったけど、コツコツと努力を積み重ねることを学ばせてもらったのは、あのときでしたね」。今、道場に行くような時間はないが、いつも車には竹刀を積んでいる。「見ると、がんばろうって思えるから…かな」。心のお守りになっているようだ。
大学卒業後、2年間働いて結婚、退社。息子2人を出産して12年間、専業主婦として子育てと家事を担った。その後、派遣会社に登録してパソコン教室のインストラクターとして経験を積み、起業。大野城市の公民館でパソコン教室を始め、現在は、広島市を含む22会場40教室で実施。2009年に法人化し、iPadを使った「みつおか式脳若トレーニング」にも力を注いでいる。
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