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森 純子(もりすみこ)さん (2013年7月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

株式会社如水庵  副社長

「受け入れる」ことで、それぞれの人間力を発揮させたい

 学生時代に一目ぼれしてその後結婚に至った相手は、江戸時代末期から続く老舗菓子店の跡取りだった。結婚後、看護師を辞め、専業主婦として4人の息子を育て上げた。現在は副社長として充実した日々を過ごすが、家事や子育てに走り回った約20年間のことも「すごく幸せだった」と振り返る。「人生は予定通りにいかないもの。今できることをしていけば、道は開ける」。そんな柔軟で朗らかな人生観は今、社員たちの働きやすい環境づくりに生かされている。

話を聴いて、一人ひとりに対応

 全社員のうち約8割、管理職の半数以上が女性という如水庵グループ。その数字の裏には、結婚や出産、育児、介護といった大きな変化があったときでも、「仕事を辞めるか続けるか」という二者択一を迫らない職場環境がある。例えば、正社員が難しい時期はパート勤務になり、余裕ができたら正社員に戻るという選択肢もあるし、一度退職した人でも希望があれば再雇用も可能という。社員やパートの区別なく利用できる産休や育休の制度など、働きやすい仕組みづくりにも力を注ぐ。
 「社員から相談を受けることが多かったのですが、家庭の状況によって悩みはさまざま。だから、一人ひとりの話をよく聴いて、その人が今できることを支援しようと個別に考えた。いろいろな事情をできる限り受け入れる、懐の深い組織になりたいという思いがあります」。
 長い人生の中でどっぷり子育てできるのは一時期。存分に謳歌してほしいという子育ての先輩としての思いと、せっかくのキャリアを生かし続けてほしいという副社長としての思いを持ち合わせながら、緩急自在な働き方の可能性を広げてきた。

転校続きで学んだ心の柔軟性

 経営にかかわることになったのは、突然だった。1992年の夏、夫と二人三脚で会社を支えていた義母が倒れ、わずか1週間後に亡くなった。結婚翌日から朝3時に起き、あんこを炊く準備をするなど、実質的に店を支えた義母。生き様を尊敬していただけに、「店を支えよう」と決意。子育て一色だった生活は、夫と理想の菓子作りを追求する生活へと急変した。
 「ただ、私は人生の予定変更に強いんです。看護師を辞めるときも潔かった。これには、子ども時代の経験が影響していると思います」。転勤が多い家庭に育った。小学校は3回、中学校2回、高校は2回転校した。友人と別れては、新たな環境でゼロからの関係づくりという繰り返し。精神的な負担が大きかったが、「計画していたことにとらわれず、目の前の現実を受け入れる」という心の柔軟性を身に付け、楽になったという。
 周囲に支えられた思い出もある。大好きだった長崎の高校を転校せざるを得ないとき、友人家族が「うちに居候して長崎に残ればいい」と言ってくれた。学校側も「編入試験がうまくいかなかったら、戻ってきたらいい」。そこで、冒険に出た。父親の転勤先にある高校の編入試験を白紙で出し、わざと不合格。ショックを受ける両親を説得し、長崎の高校に通った。「結局は3か月でホームシックになって両親のもとに戻ったんですが、周りの懐の深さに勇気をもらいました」。

社員もわが子も、信じて見守る

 副社長として大切にしてきたことがある。苦手分野を克服させることに労力を注ぐのではなく、一人ひとりの長所を生かすようサポートするという心構えだ。本人はもちろん、組織にとっても効率よく、いい結果につながると考える。
 「自分のことを見てくれている、認めてくれているという信頼関係があれば、人は幸せな気持ちで過ごせる。心が安定している人は、自分の力を十二分に発揮できる。そんな風に『人間力』を高めていきたいですよね」
 子育てでも、長所を伸ばす方針だった。息子4人にラグビーをさせたが、長男だけは苦手な様子。幼稚園児のとき、「お母さんピアノを始めるんだけど、一緒にやってみない?」と誘ってみた。発表会で親子連弾した思い出もある。それが大当たりで、長男は今、米国で音楽関係の仕事をしているという。
 「社員もわが子も一緒。どう生きたいかという本人の思いを受け入れ、それを支えるのが私の役割。できることは支援するし、できないことはできないと伝える。信じて見守る応援者がいれば、みんなまっすぐ伸びていけると思うんですよ」。これからも、母のような眼差しで社員たちと接していく。

(2013年7月取材)

コラム

宝物の思い出

 家族が集まると、笑い話には事欠かないそうだ。ピアノ発表会の親子連弾では、息子ではなく自分が弾き始めを忘れてしまったとか。舞台上で、小学校低学年だった長男に向かって「もう一度お願いします…」。
 あるときは、子どもたちの夏休み気分を盛り上げようと、テントを購入。親子でワクワクしながらキャンプに出かけたが、テントを使うことなく引き返したそうだ。「蚊が多かったんだよね…」と笑うのは、如水庵専務取締役を務める次男の森英俊さん。
 「ラグビーでは、毎週日曜日の朝に親子でグラウンドに通う生活を15年続けました。子どもたちと笑いや感動、挑戦を共有できた日々は、本当に人生の宝物です」。

プロフィール

熊本市出身。九州大学医学部附属看護学校卒業。約2年半の看護師勤務を経て、専業主婦になり、4人の息子を育てた。1992年の夏、会長を務めていた義母が他界したのを機に入社。現在、副社長。

 

 

 

 


 

 

 

 

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