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渡邉 福(わたなべさき)さん   (2012年12月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

筑豊子育てネットワーク「かてて!」 代表

人とのつながりが私の財産

 「私、子どもが苦手だったんです」と、意外な言葉で切り出した渡邉福さん。筑豊で活動する子育てグループ「かてて!」で8年に亘り代表を務めている。「子育て支援をしている人って、育児で悩んだ経験のある人が大半ですよ」と、明るく自然体で本音を聞かせてくれた。 

赤ちゃんを「かわいい」と思えずに…

 「出産はゴールだと思っていたら、実はスタートだった」。27歳でお見合い結婚し、29歳で長男を出産した当時のことを、渡邉さんはそう振り返る。「おむつ、おっぱい、わけのわからない大泣きとか、24時間休みなしの子育てはすごく大変で…。赤ちゃんをかわいいと思えず、『とにかくこの子を育てていかなければ』という義務感でいっぱいでした。育児書を見ても楽しいことばかり書かれ、まわりの人から『子どもはかわいいでしょ?』と声をかけられるのもプレッシャー。自分を追い詰めて、暗い気持ちで過ごしていました」
 そんなとき、人づてに「かてて!」のことを知る。思い切って参加すると、いろんな年齢の母親たちに優しく迎えられた。「うちの子を抱っこして、『かわいいわね』『お口がちっちゃい』なんて言われて。その瞬間はじめて、自分と子どもを客観的に見ることができたんです。『ああ、かわいいと思っていいんだ』と思えました」。頑なになっていた心がほぐれ、温かい気持ちに満たされた。

会員の思いや時代に合わせて活動を展開

 「かてて!」が誕生したのは1997年10月。就学前の子どもと母親9組が立ち上げたネットワークは16年目に入り、夫の転勤や世代交代で5人が代表に。渡邉さんは1年目の途中から参加して、通算8年代表を務めている。各代表のカラーを反映しながら、時代のニーズに合わせて活動してきた。公共の子育て支援センターができたときは、「親子が無料で集まれる場所ができたから、私たちの役目は終わったと思った」という。けれど「残してほしい」という会員の声に後押しされ、続けてきた。
現在の会員は40人強で、月200円の会費制。週1回の集まりと月1回の託児付きお茶会をベースに、飯塚地区の子育て情報をまとめた月刊カレンダーと通信を発行。カレンダーは飯塚市のHPに掲載され、乳幼児健診や子育て支援センターに置かれるなど、長年の活動が実を結び、社会的な信頼を得てきたと実感している。
さまざまな企画に誘われ、協働イベントを開催する機会も増えた。たとえば、平均年齢70歳くらいの女性たちと交流講座を実施したり、飯塚病院と子育て中の親に向けた病気やケガの対処法をレクチャーするYou Tube番組を作ったり。「小さな子がいるママだけでは苦労していた準備も、ほかの団体と協力すればスムーズに。『一緒にすればこんなにいいんだ』と気づき、肩の力が抜けました。私たちだけでできないことは、行政やほかの団体と手を取り合っていきたい」と展望を語る。

学んだことを自らの家庭づくりに生かす

 「かてて!」で学んだことは、家庭生活にも好影響をもたらしてきた。「結婚当初の夫は、家事を進んではしてくれず、なんで私ばかりとイライラを募らせていました。でも、相手を尊重しつつ自分の気持ちを伝えるIメッセージやアサーションを学び、夫に冷静に話したら、『早く言ってくれればよかったのに』と協力的になったんですよ」と笑顔で打ち明ける。高校生から小学生まで2男2女のお子さんたちとの関係も良好だという。「『かてて!』の活動等を通して男女共同参画を学んだことで、男だから女だからではなく、『あなただから』とその子のありのままを受け止められるようになりました。私も子どもに自分をさらけ出して、いろんな相談もしますよ」

それぞれができることで助け合える社会に

 「子どもにはね、ママは働いてないのにすごく忙しいねと言われる」とおおらかに笑う。それもそのはず、渡邉さんは行政と学校の委員7つに加え、子育てなどに関する12の活動にも参加。「かてて!」を原点に、驚くほど活動の場が広がっているのだ。「忙しい毎日だけど、仲間とハードルを越えていくのが楽しい。いろんな方の人生に触れられるのもおもしろい」
参加している活動のひとつに、放射能汚染地域から短期滞在に来る親子へのサポートがある。「親子に提供する食材を募ったら、たくさん野菜をわけてくれる人たちがいて、ありがたかった。その方たちの団体には、私が得意なチラシづくりで恩返ししました。人とのつながりは財産ですね。みんな自分ができることで助け合ったら、もっと豊かな社会になると思う」と語る。「今の生活に息苦しさを感じている人は、外に出てみてほしい。自分を客観的に見られて、いろんなことに気づくから。かつての私がそうだったように」。渡邉さんの名前は「福」(さき)。その名の通り、みんなの「幸福」を願い、渡邉さんは楽しみながら走り続ける。

                                                                                          (2012年12月取材)

コラム

わたしの大切な時間『おいしい時間』

 障がいのある娘さんの入学を機に、毎朝、子ども2人を小学校まで歩いて送るようになった渡邉さん。この20分ほどが至福のときなのだそう。「はじめは母としてやる気をみせなきゃとか、ダイエットにもなるしなんて、よこしまな考えもあったんですよ(笑)。でも、パソコンも携帯もしない環境で、子どもたちといろんな話をしたり、季節で移り変わる景色を眺めたり、空ってこんなに青かったんだって感じたり…今では一番大切な時間になっています」と目を細めてにっこり微笑む。

プロフィール

嘉麻市生まれ。鹿児島の大学を卒業後、福岡市の金融関係の会社に就職。27歳のときに結婚、29歳で長男を出産。子どもが1歳のときから「かてて!」に参加して、現在まで通算8年ほど代表を務めている。高2、中2、小4、小1の2男2女の母。飯塚市次世代育成支援施策委員など行政の4つの委員、中学校のPTA副会長など学校の3つの委員に就きながら、「かてて!」をはじめ子育てや障がいなどに関する12の活動にも参加中。

 

 

 

 


 

 

 

 

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