【ロールモデル】
ロールモデルとは
九州旅客鉄道株式会社 人事部長 (取材時:JR九州ファーストフーズ株式会社 代表取締役社長)
民間企業の女性管理職の割合は11.0パーセント(平成22年度総務省「労働力調査」)。女性管理職の登用は進みつつあるものの、依然として10パーセント未満の事業所が約半数を占めている(平成22年度「福岡県雇用均等仕事と家庭の両立実態調査」)。そんな中、JR九州グループで初の女性社長が誕生した。2012年6月、JR九州ファーストフーズの社長に赤木由美さんが就任。81店舗・従業員約1100名のトップとなった(2012年12月14日現在)。同社は、ミスタードーナツやケンタッキーフライドチキンなど、外食のフランチャイズ5事業を展開。競争が激化するファーストフード業界で、9期連続増収増益と順調に業績を伸ばしている。
フランチャイズ店はメニューや価格が同じで差別化が難しい。しかし、赤木さんは型にはまらない心からのおもてなしが、顧客の心をとらえると考える。「人に尽きます。人がお店を作っていくのですから」。赤木さんが理想とする店には、人材が不可欠なのだ。そのため、スタッフ育成には特に力を入れ、さらに働きやすい職場環境を整え、もっと社内の風通しをよくする取組を始めている。
赤木さんは大学を卒業し、九州旅客鉄道へ入社。本格的な女性の採用が始まった3年後のことだった。25歳で結婚し、現在は中学生の子を持つ母でもある。その間、産休・育休をとり、周囲の助けを得ながら仕事と子育てを両立してきた。そんな彼女も、仕事について迷い落ち込んだ時期があった。「当時、女性には5年後10年後、『あの人みたいになりたい!なれるかも!』という青写真がありませんでした。具体的な将来を描けず、目標を見失っていたんです」。そんな時、尊敬する上司から声をかけられた。「仕事はクラブ活動だよ」と。「クラブ活動は楽しむもの。しかし成果を出さなければいけないから、努力は必要。自分の大切なものを常に心に置きながら、与えられた役割を全うすればよい。そして、試合に出るからには勝ち続けよう」。その言葉を聞いた時、肩の力を抜いて仕事を楽しみたいと素直に思えた。
縁と運を大切にしながら「明るく・楽しく・貪欲に」をモットーに今まで歩んできた赤木さん。夢や目標に軸を置き「達成するためにはどうすればよいか?」ということだけを思い描きながら、結婚・出産や仕事でのステップアップを実現させていった。「考え方を変えて、明るく楽しくしていれば、うまくいくことが多い。欲深いって大事だと思います」。
ポジティブに前進してきた赤木さんだが、当然ながら社長としての重責やプレッシャーを感じるという。「最後に決めるのは自分しかいないという、孤独感や責任の重さをすごく感じます。しかし、すてきなお店を作ればお客様が喜んでくださり、スタッフもやる気になる。社長としていい循環を生み出したいです」。そのための努力も惜しまない。外食をはじめ、様々な食に関する情報について、常にアンテナを張り、学び続けるのはもちろん、分からないことは素直に聞くなどして、日々知識を吸収している。若き女性社長だからこそ、若い社員が多い社内においてもコミュニケーションが取りやすい。「たくさんある選択肢の中で、女性がトップになるのも自然なこととして受け止めてほしい。今後続く人が出てきてくれると嬉しいですね。これからも肩ひじ張らず自分らしく仕事をしていきたいです」。
そんな母の姿をずっと見てきた娘が、社長就任をだれよりも喜んでくれた。支えてくれる家族の深い愛が彼女の原動力だ。とても謙虚でどんな質問にも丁寧に応えてくれる赤木さん。これからも真摯な姿勢で、顧客、そして社員に愛される会社を作り上げていくのだろう。
(2012年11月取材)
赤木さんは中学2年生の娘と過ごす時間が大好き。「ショッピングをしたり、待ち合わせをして外食しています。いろいろな話を二人でするのが何よりも楽しい。そんなにたくさんの時間が取れるわけではないけれど、その分凝縮した、本当に大切な心休まるひとときです。これから何年先もずっと続けていきたいですね」。
早稲田大学第一文学部卒業後、1991年九州旅客鉄道株式会社に入社。広報や営業、経営企画部門を担当し、2004年、九州新幹線部分開業の時にはプロモーションを手掛ける。2012年3月に初の女性部長になり、同年6月、JR九州ファーストフーズ株式会社の代表取締役社長に就任。JR九州グループで初の女性社長に抜擢された。2014年7月、退任に伴い九州旅客鉄道株式会社総務部担当部長を経て、2015年7月人事部長に就任。
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