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田中 江美(たなかえみ)さん

【ロールモデル】
ロールモデルとは

TOTO株式会社総務部リスクマネジメントグループ グループリーダー (取材時:広報グループリーダー)

相手にとって価値ある自分でいられるように

 

契機は危機感

 田中さんは、入社からまっすぐ管理職としての道を歩んできたわけではありません。当初は一般職として採用され、初めの配属先は来客を笑顔で迎え、お茶を出すことが中心の受付業務でした。しかし数年後にはバブルがはじけ、各企業が人を絞る時代に突入した頃、「このまま、ただ会社にぶらさがっていては会社から嫌われる!」そんな危機感が、田中さんの働く意識を徐々に変化させていきました。
 先ず、毎朝新聞に目を通し、興味や疑問を抱いた記事は先輩に尋ね書籍で調べて解くことから始めました。そして、職場内で手が足りないと言われた仕事を積極的に手伝いながら、少しずつ会社の状況を把握し、会社の中での自分の位置を探していったのです。その後、広報部に欠員が出るという社内情報をいち早く入手し、自らの希望で広報部に異動しました。異動の希望が通ると、今度は「広報の仕事自体が分からない」という壁が田中さんの前に立ちはだかります。しかし、仕事は次第に面白いものに変わっていきました。「とにかく、自分にやらせてもらえることは雑用から何でもやりましたね。それに、受付で社内外の方との面識が出来ていたのが、後の仕事にとても役立ちました。仕事に無駄なことは何もないんですよね。どんなに小さな仕事でも仕事はつながっているんです」。
 更に数年後には、社内で新しく導入された職群変更制度を利用して一般職から専任職へ、そして専任職から総合職へと社内試験にもチャレンジし、合格を果たします。危機感から始まった働き方の見直しは、働くことへの意欲と努力、そして、自己実現への道につながっていったのです。

管理職への不安

 そんな田中さんも、会社から課長の内示を受けた時はさすがに不安を覚えました。管理職として働きながら、家庭と両立ができるの?・・・「内示を断ろうと思う」と夫に打ち明けました。しかし、夫から発せられた言葉は衝撃的でした。「内示を断るなんて、普通は聞いたことがない」。この言葉で不安をふっきることができました。「男女は意識していないといいながら、実は私自身が「女とは」にこだわっていたんですね」。自分なりに課長として務めてみようと決意しました。「今は、仕事の広がりを感じ、チームの皆と仕事ができることをうれしく思います」。

産休育児ガイドブック

 広報部時代に結婚、出産、そして、職場復帰を経験した田中さんは、その時苦労した体験と、広報部で培ったノウハウや人とのつながりを活かし、社内向けの産休・育児休業ガイドブックを作成しています。『妊婦になって休みを取り、復職するまでに関わる全てのこと』を時系列にまとめたガイドブックは、両立支援を推進する会社や女性社員のニーズに合致し、社内のガイドブックとして正式採用され、現在も更新されながら活用されています。
 また、女性社員の能力発揮の場づくりを進めることを目的とする『きらめき活動』の初代中心メンバーとして、女性社員の研修の拡充や新卒採用を男女同率にする取組などを推進してきました。多くの女性社員と意見を交わしてきた中で感じたことを田中さんはこう語ります。「男女が同じように勉強して就職したはずなのに、社会に出た途端、女性はチャンスが減ってしまっています。社内会合にも「電話当番」で参加できなければ社内事情が広く深く把握できず、意図が分からないまま仕事をしてしまいがち。会社のことを正しく知れば、会社へのかかわり方も変わってきますし、自分の仕事のあり方を積極的に見直そう、という気持ちになります」。

コラム

 「情報は単純に集めれば良いのではなく、情報の背景を知ることが大事。それと“伝える力”を身に付けることも大切」。
 そんなこだわりを持って仕事に臨む田中さんは、社内の情報を網羅的に収集し発信する本社広報チームの広報課長です。「伝える力とは?」と問い返すと、「情報はただ伝えるだけでは伝わりません。相手のことを知り、相手が理解し共感できる言葉で伝える必要があります。更にもう一歩踏み込んで相手の行動を変えるためには、相手の懐に入っていかなければいけません。相手の視点や立場に立つことです。」社内外と交渉の多い広報グループリーダーならではの言葉が返ってきました。

プロフィール

TOTO株式会社広報グループリーダー。
地元の短大を卒業後、一般職として入社。その後、広報課へ異動。
結婚し、第1子出産時に産休・育児休業を取得。復帰後、社内試験に合格し、専任職へ職群変更。
第2子出産時に産休・育児休業を取得。復帰後、産休・育児休業の経験に基づく社内向けの産休・育児休業ガイドブックを作成。加えて、社内試験に合格し、専任職から総合職へ職群変更。本社広報グループリーダー(課長)に就任。
その他、「北九州市ベストボス賞」受賞。「きらめき活動」コアメンバーとして活躍。

 

 


 

 

 


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【た】 【働く・キャリアアップ】

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