ロールモデル
ロールモデルとは
講師情報
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(有)食工房地蔵原 代表 山口怜子デザイン室 地熱たべもの研究所
山口さんは自然豊かな山里で育ちました。「ヤギの乳や手作りの野菜。おいしいものばかりでした」。市販の食品の味に違和感を覚え、食品づくりに興味を持った山口さんは酒蔵の女将として酒の原料である米に注目。20年前に朝倉農業高校に除草剤を使わない酒米作りを依頼したのが、食のかかわりでした。
子育てをしながら、女将として従業員の食事づくりや裏方の雑用もこなす忙しい毎日。「女将としての仕事の一つが来客の対応。来客あっての酒造業ですから、日々戦争みたいです。」忙しい中でも手作りの食品を使った料理で来客をもてなし喜ばせたいという思いから、調味料まで自家製にこだわるようになりました。
40代初め頃から子ども達の食生活を守る親の立場で、本格的に「食」に取り組み、地熱を利用した開発を始めます。「多くの女性が子育てや仕事から離れてひといきつくのが60歳頃じゃないでしょうか」。60代をむかえた頃、「食工房地蔵原」を設立。「山口酒蔵が年一回行う‘筑後の土蔵’というイベントにみえたお客さんとの対話から育った食品づくり」でした。現在は福岡 天神の一角に4坪ほどのアンテナショップをおき、一人ひとりの体調や症状に合わせてこだわりの食品を量り売りするという、時代に逆境かもしれませんが大型SHOPの正反対で超小型SHOPスタイルです。「おいしい酒づくり」から始まった取り組みは「食」全体へ広がりました。
女将として忙しい中、古着を使ってのパッチワークを作り始めてもうすぐ40年。その作品は国際的にも高い評価を得ています。しかし山口さんは「仕事の合い間や、夜寝る前の時間に姑とおしゃべりしながら作っていただけ。特に力をいれていたわけではなく、人様にみて頂くとは思っていなかった」と語ります。大切にしているのは家族の思い出の布をデザインすること。「デザインする布は買いません。子どものTシャツや染みのついたエプロンには思い出があります。それがデザインのヒントになって楽しいですよ」。
食工房地蔵原の店内では、スリランカから取り寄せた商品も取り扱っています。その縁はパッチワークでつながったものです。「一本のお酒と一本の針が衣食住につながっていたとは知らなかったです」。
精力的に活動する山口さん。落ち込むことや参ってしまうことはありませんかと尋ねると「まず、ないです!」ときっぱり。そんな前向きな山口さんのもとには自然と人が集まります。「夫に、生前『酒蔵の看板の横に“よろず相談所”って書いたら?』と言われたくらい。みんな元気になって帰っていきますよ」。そんな山口さんでも、やはり気分の優れない日もあります。「体は正直で、イライラしているとなかなか針を持つ気になりません。針という字は金(きん)に十(クロス)と書くでしょう。人が心身共にまっすぐ立っていれば、金(きん)のごほうびがもらえる、いいことがある」そう思って常に針を持てる自分でいようと心がけています。
(2008年2月取材)
現在取り組んでいる竹林利用の開発プロジェクトも軌道に乗りつつあります。「もちろん酒米の栽培が基本です。資源としての竹の開発に携わった北島農法に注目しています」。竹による代替エネルギー(竹ボイラー)や堆肥の開発を通じ、未来の世代のために環境、医療に興味を持ちライフワークとして楽しんでいます。アンテナショップには竹の堆肥で育てた玄米や十数種類の雑穀が並びます。「仕事帰りの人や若い人に利用していただきたいですが、これから先、子を持つ親に『食』の大切さを指導していきたい」と語る山口さん。「一主婦でも世の中に大きく貢献できるということを感じてほしいですね」と話す笑顔が、とても爽やかで印象的でした。
毎年、秋に開催する「筑後の土蔵」も今年は25年目を迎えることになりました。
家族の物語を綴った主婦の手仕事を見物に訪れるように、少しでも楽しんでいただけるように新しい企画を考えています。
また、私自身のライフワークとなった「地熱とたべもの」の研究も30年が近づき近年の蒸気ブームで少しずつ認知度がひろまってまいりました。
熊本県小国町の山里に岳ノ湯温泉があります。
地元の住民と共に楽しみながら、地域おこしの協力をさせていただいております。奥深い地熱との関わりは楽しいものです。皆さんも是非味わってくださいね。
(有)食工房地蔵原代表
江戸天保創業「庭のうぐいす」10代目蔵元と結婚。
酒造および家庭の古着を使って、刺し子風キルトを発案。無除草剤・無化学肥料による酒米づくりや食に関する研究し、地熱を利用した食品開発に取り組む。
キルト作家として2009年福岡県文化賞・創造部門受賞。
キーワード
【や】 【農林水産】 【研究・専門職】