【ロールモデル】
ロールモデルとは
JAふくおか八女理事 、クララハイジ代表
2011年7月、八女市の農業委員会で福岡県初の女性会長が誕生。八女市農業委員会は45名の委員から構成され、そのうち女性は2名。他地区の農業委員会では男性が大多数を占める中での塚本ちゑ子さんの会長就任は、まさに快挙。これからの地域を照らす存在として期待されている。
農業委員会は、公的に認められた唯一の農業・農業者を代表する機関で「農地を守る」「農業を守る」ことを目的とした行政委員会。面積の多くを農地や山林がしめる八女市、これからの農業をどうしていくか?また、高齢化にともなう耕作放棄地やイノシシ・カラスなどの有害鳥獣害にも取り組んでいる。
専業農家に生まれ、家業の担い手として育った塚本さん。22歳で兼業農家の男性と結婚し、厳しい義父の手ほどきをうけ仕事を覚え、妊娠中や子育て期間も、休まず働き続けた。「おなかが大きかろうが、関係ない」そんな思いで、農作業にも参加した。そんな中、大型機械の免許取得講座でとった免許もまわりの人のおかげという塚本さん。「次に続く女性に恩返しせんといかん!」と「トラクター講習会」を開催。講習会に参加した方から、後に「夫を亡くした後も、農業が続けられた」と感謝され、とても嬉しく感じた。女性も学習する場に出ていくと社会的な立場が変わってくるからとの思いから、その他に「じゃがいもづくり」などの講習会を行った。
身を粉にして家業を担い、気がつけば親の介護。これが、農業を支える女性たちの現実。「義父の死は非常に残念でしたが、自分一人で抱えていた介護の問題を、家族で共有できたことは収穫でした」。兄妹から「ありがとう」の一言で、「自分一人だけがまんすることはない。自分には自分の人生もある」と思い、自分の意志を外へ向けて発信していく重要性を確信した塚本さん、農家の一女性として、その経験や学んだことを社会に還元しようと、積極的に外へ出て活動を始めた。
女性が社会的に責任ある立場に就くとき、尻込みすればそれで終わり。先人の努力を無駄にできないと、会長職を引き受けた塚本さん。就任前、女性出席者一人で臨んだ市町村合併協議会では、「女性に何が出来る」というささやきも聞えた。それに対し、八女市は男女共同参画宣言都市でありながら女性協議委員がたった1人であったことを指摘するとともに、議員定数の削減問題にも鋭く切り込み、膠着状態だった議会を調整の方向へ導いた。
県の農業委員会常任理事やJAふくおか八女農協の理事を兼任し、会議や現場調査など、毎日多忙を極める。八女市農業委員会がかかえる深刻な高齢化問題と、始まったばかりの八女市の男女共同参画を、周辺地域や他機関と連携し、どのように導いていくか、塚本さんたちの手腕が問われる。
“人が助けてくれる。1人で抱え込まない”と言う塚本さん。会長になって最初の挨拶は、「みなさんのご協力があれば、がんばれます!」だった。
一緒に働く人たちに寄せる全面的な信頼と、謙虚な気持ち、細やかな心配り。
男性陣からも心強いサポートを受け、次の世代へのたすきを手に走り出した。
(2011年8月取材)
塚本さんが今、夢中になっているのは「染め」。藍や緑茶、クララソウで、タオルや衣類を染める。クララソウ(眩草)は、耕作放棄地対策として栽培する植物で、さまざまな商品として開発中。この活動を行うのは地元女性グループ、その名も“クララハイジ”。「染色は人生に似ています。いろんな色に染まり、組み合わせの妙もあり、間違えても何度でもやり直せる。仕事と同様、楽しくて仕方ありません」。
平成18年から21年まで八女地区JA女性部長に就任。その間、平成19年3月24日八女市は「男女共同参画宣言都市」となる。同審議会委員も務め、翌年、議会推薦で農業委員に就任。農業委員は2期目。平成23年7月の改選で会長に就任。
現在は、JAふくおか八女理事、八女市の農業・農村の活性化をめざす女性の会幹事も務め、積極的に地域の活性化に取り組んでいる。
平成24年、第11回福岡県男女共同参画表彰(女性の先駆的活動部門)受賞。
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