【ロールモデル】
ロールモデルとは
株式会社安川電機 ロボット事業部 ロボット工場 製品管理課
杉井さんは入社以来さまざまな部署で、「仕事はできるだけ定時内に、素早く、正確に」を心がけてきました。そこには本社時代の上司から『指示された事をするだけでなく、何のためにこの仕事があるのか、なぜこのようにするのかを 常に思考し、本質(ポイント)を押さえながら仕事を進めなさい』と教えられたことが根底にあります。上司の言葉を聞き流すことなく、前向きにとらえ仕事への意欲に結びつけてきたことが今に生きています。「作業をするだけなら誰でもできますよね。わからないことはそのままにしないで、すぐに調べたり人に聞いたりするようにして仕事を理解するようにしています」。
職場ではいくつもの改善に取り組んできましたが、最初に取り組んだ改善は、生産技術部時代のデータ集計業務でした。手入力で残業するほど時間がかかっていた作業を、クリックひとつで、集計表や帳票のアウトプットが簡単にできるシステムを、工場の担当者と意見を出し合い、システムエンジニアに仕様を出して構築しました。そのおかげで定時に帰宅できるようになり、工場の担当者も「作業が早くなった」「楽になった」と喜んでもらえました。このとき、「自分もHappy!まわりもHappy!」を実感、さらなる業務改善の意欲へつながっていきました。
4児の母である杉井さんは、4回の育児休業を取得して働き続けています。
ひとりの社会人として会社や社会に貢献していきたい、また母親として、子どもたちに自分がいきいきと輝いて人生を送る姿を見せたいという願いは彼女の強い原動力でもあります。そのためには仕事の効率を高めて時間を上手に活用するということは必須条件です。
数年前ロボット事業部に異動になったときのことです。前任者から引き継いだ業務であるデータの取り込み作業は、仰天するほど膨大で残業や休日出勤をしないと終わらない状態でした。「保育園の迎えがあるので早く帰りたい。なんとか定時内に終わらせることができないかと一生懸命考えました」。そこで、データベースのシステムを取り入れて、39時間かかっていた仕事を4時間に短縮しました。おかげで定時に帰れるようになり、子供は大喜びしました。また、上司もこのデータを使って資料を作成しているので、早くできるようになって喜びました。ここでも「自分もHappy!まわりもHappy!」を実感しました。
保育所通いは計17年間に及びます。妊娠中や子どもが小さい頃は体力的・精神的にきつく、仕事がうまくいかない時期もありました。しかし、そんなつらい時期も「家族や職場の理解や支えがあったからこそ、乗り越えていくことができました」と振り返ります。 仕事と家庭の両立の秘訣を訊ねると、「家事はぱっぱとこなすなど時間の使い方を考えることと、家族とのコミュニケーションです」という答えが返ってきました。「それに、子どもたちには自分でできることは自分でやる、母が留守のときは上の子が下の子の面倒をみるなど協力してもらっています」。
家族のそれぞれが自立と役割を考え、支え合う杉井さんの家庭ですが、彼女が家族や職場の理解を得られたのは、仕事への熱意と努力、そして周囲の皆への思いやりと配慮があったからこそではないでしょうか。
また、杉井さんは母親としてだけでなく、ひとりの人間として常に自分の目標を追い続けています。仕事の幅を広げるため品質管理検定やVE(バリューエンジニアリング)認定リーダー資格(※1)(社内女性ただ一人)を取得したり、プライベートではNLP心理学(※2)の資格を取得したりと自己研鑽も怠りません。「何事も楽しんでやっています。そして行動を起こすことで視野が広がり、夢や目標が広がってきます」。こうした杉井さんの日々の積み重ねが「北九州市ワーク・ライフ・バランス表彰 個人部門」で市長賞受賞につながりました。
(2009年1月取材)
※1 VE(バリューエンジニアリング)とは、製品やサービス価値を、機能とコストの関係把握して向上をはかる手法。VEリーダーは、活動のリーダーを務めるために必要な基礎知識をもっている人材であることを日本VE協会が認定するもの。
※2 NLPとは、1970年代に米国で開発された実践心理学で、成功者の思考や行動を分析して誰でも応用できるようモデル化したもの。五感を使って潜在意識にアクセスすることにより夢や目標を明らかにする。
「仕事を辞めたいと思ったことはないですね。会社を通して自分が培ってきた人とのつながり(財産)を大事にしたかったから」。
明るい笑顔できっぱり言い切る杉井さんは、今年で㈱安川電機 勤続25年目を迎えます。常に楽しく前向きに、仕事も家庭もそして自分磨きの時間も充実させて、パワフルに活躍する彼女はとても魅力的に輝いています。
●ワーク・ライフ・バランスを広める活動「『子どもがいるからできない』からの脱出術」「ワーキングマザーの『ワークライフバランス実践術』」について、団体・会等で講演しています。
●地域活動
2008~2009年 北九州市後期次世代行動計画策定委員
2009年 北九州市タウンミーティングパネリスト
2010年 働く女性応援誌 アヴァンティ 働く女性研究所運営委員
株式会社安川電機ロボット事業部勤務。
結婚、第1子出産時に産休・育児休業を取得(社内で育児休業取得第1号)。
仕事の改善を発表して、2002(平成14)年「CS改善「物流費の改善」QCサークル 石川 馨賞」受賞。2008(平成20)年度、「北九州市ワーク・ライフ・バランス表彰個人部門「市長賞」」を受賞。
キーワード
【さ】 【働く・キャリアアップ】 【研究・専門職】