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講師情報
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株式会社フラウ 代表取締役社長 /NPO法人男女・子育て環境改善研究所 顧問 / NPO法人NPOふくおか 理事長
どこへ行くにも自由気ままな独身時代から一転、結婚・出産を経て“子づれ主婦”となったとたん、大好きだった街が、ビルが、駅や道路が、「来るな」とばかりに行く手を阻む。それ以上に高く厚い壁は、子育ての先輩であるはずの女性や、主婦の社会参加に無理解な男性の意識だった。1993年(平成5年)、福岡初の子育て応援情報誌「子づれ DE CHA・CHA・CHA!」を創刊した濱砂圭子さんは、当時の状況を鮮明に覚えている。
「子どもを産んで初めて気づく不便や不満はたくさんあるのに、『私たちだって我慢したんだから』と我慢の申し送り。自分が困ったことを人にも我慢させるのは意味がない。私にできるのは母親のための育児情報誌を出すことだと、生命保険を崩して自費出版しました」。
子づれで出かける方が悪い、しょせん女のわがまま――そんな声をものともせず、「子育て環境の改善」を自らのミッションと信じて生み出した創刊号。その反響はすさまじかった。さまざまなメディアに取り上げられ、やがて企業や行政の街づくりを動かすほどの力に。「待たれていたんだ」と実感した瞬間だった。
現在、濱砂さんは「男女・子育て環境改善研究所」「NPOふくおか」という2つのNPO法人の理事長も務めている。子育てに関するイベントや講演、マーケティング、中高生へのキャリア教育、福岡市NPO・ボランティア交流センターの管理運営(2006年~2009年)など、事業内容も多岐にわたるが、「コンセプトは一切ぶれていない」ときっぱり。
「私は『子育てと女性を助ける』という太い幹から、まったく離れていないんです。そこから健康や環境、教育、医療、労働問題、女性問題と、いろんな枝葉が伸びていくけど、根っこはつながっている。だから絶対にネタ切れしない自信もあった。当時まったく聞く耳を持たなかった男性たちから、今になって『あなたの事業を見抜けなかったのは、僕の汚点だ』なんて言われますよ」。
1995年(平成7年)、全国の地域密着型子育て情報誌を集めて「マミーズサミット・ネットワーク」を発足させたのも濱砂さんだ。16年を経て、メンバーの中から起業家・女性センターの長・議員を出すという夢はすべて叶った。今でも年1回、全国各地で手弁当での子育て支援サミットを行うマミサミは、子育て支援団体の自立発展形となって実を結んだのだ。
「とにかく現場主義」と自らを評する濱砂さんが今、新たに取り組んでいるのが、企業向けの育児休業者職場復帰支援プログラム「wiwiw(ウィウィ)」だ。東京ではすでに約400社が導入しているが、福岡ではわずか27社。「人事担当者が女性なら話が早いけど、男性は『このシステムを女性が使うかどうか分からないから』って全然動かない。チャ・チャ・チャを作った時と同じです。男女共同参画のリトマス試験紙みたいだけど、あきらめません」と、第2創刊の意気込みで燃えている。2011年(平成23年)6月からは、NPO「男女・子育て環境改善研究所」が運営する子育てママの再就職講座「子育てジョブカレッジ」を東京・茨城・福岡で開講予定だ。
「結婚も子育ても、人間は一生学び。いろんなチャンスを生かして、チャレンジ精神を投げ出さず、人生を謳歌してもらいたい。そのために、結婚や出産で女性が立ち止まらなくてもいい社会を作ることが私のミッションです」。
(2011年3月取材)
子どもの頃から絵が好きでデザイナーを目指していた濱砂さんは、大阪の叔父の家に下宿してデザインの専門学校に通うことに。親戚とはいえ、自宅とは違う、“他人の飯を食う”体験をしたことで、自分がいかに両親や祖父母に大切にされていたかを実感したという。一人っ子でもあるため、特に祖父母が赤ちゃんの頃からの話をよくしてくれた。そんな体験も踏まえ、講演で必ず話すことがある。「大きな怪我もさせないよう、大病もしないよう子どもを育てる努力は、筆舌に尽くしがたいものがあります。そうした、親が頑張って育てた話などはどんどん子どもに伝えるべきであり、一人で大きくなったような勘違いをさせてはいけない。親の愛情にあぐらをかくようなことにならないために、コミュニケーションが大切と話しています。そうした努力を伝えていれば、親への感謝も芽生え、 命も人間関係も大切にするでしょう」と。
東京都生まれ、飯塚市育ち。日本デザイナー学院グラフィックデザイン科を卒業後、広告制作会社で販売促進から企画編集までを手がけるディレクターとして活躍。1990年(平成2年)、結婚・出産を機に退職し、1993年(平成5年)、福岡で初めての地域密着型子育て応援情報誌「子づれ DE CHA・CHA・CHA!」を創刊する。2006年(平成18年)、内閣府男女共同参画局「女性のチャレンジ賞」特別部門賞受賞。2008年(平成20年)、「子どもと家族を応援する日本」功労者表彰・内閣府特命担当大臣(少子化対策)表彰ほか、受賞多数。
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