【ロールモデル】
ロールモデルとは
ふくおか明るい読書会 主宰 / でんホーム株式会社 代表取締役社長
人懐っこい笑顔と、初対面であることを忘れてしまうほど気さくな語り口。「ふくおか明るい読書会」を主宰する藤本香織さんは、そんな不思議な魅力に包まれている。月に1、2度、主に福岡市内のカフェで開催されている読書会は、読んだ本の感想を参加者全員で話すスタイル。事前に読む本を指定することもあれば、テーマに沿った本を各自が持ち寄ることもある。発足のきっかけは、『週末起業』の著者である経営コンサルタント・藤井孝一さんのセミナーに参加したことだった。
「『読書会をするなら主宰がいいよ』という藤井さんの話を聞いて、mixiで呼びかけました。同じ本を読んでも人によって感じ方は違うから、価値観が凄く広がったし、初対面でも共通の話題で盛り上がれる。それで少し自信を得て、続けていこうと思ったんです」。
参加者は職業も年齢もさまざまで、リピーターも多い。時には著者を招いて直接話を聞く機会を設けるなど、有意義な情報交換・異業種交流の場として人気を集めている。
藤本さんが読書会と出会い、自ら主宰するまでの道のりは波乱万丈だった。造園業を営みながら「本当は大工になりたかった」という父親を喜ばせようと建築の道へ。大学卒業後に就職した建設会社では責任ある仕事も任され、充実した日々を送っていた。しかし、婚約者の要望で福岡に来たことを両親に反対され、結局破談に。転職した設計事務所での仕事もうまくいかなかった。
「家族を作る目標が消え、仕事にも誇りが持てない。生きることに何の意味もない。いっそ死んでも一緒じゃないか」とまで思いつめるように。人生のどん底を味わった3ヵ月だった。
立ち直るきっかけは、建設会社時代に顧客から貰った手紙。そこには、住宅設計の担当者だった藤本さんへの感謝の言葉があふれていた。同じ頃『自分のための人生』(ウェイン・W・ダイアー著)を読んで、それまでの価値判断の基準が自分以外にあったことを自覚。初めて「自分のために新しい住宅会社を作ろう」と思い、『週末起業』を手に取った。後の読書会主宰につながる第一歩だった。
本業の建築士としても、新会社設立に向けて準備を始めた。順調に業績を伸ばしている建設会社を全国で120社ほどピックアップし、経営者としての教えを乞いに行くという荒業を敢行。約20社は直接訪問し、失敗の経験や成功までの過程、独自の創意工夫を聞くことができた。「こんな会社を作りたい」というイメージが固まってきたという。
「私のミッションは、明るい未来を創ること。どん底を経験して打たれ強くなったし、読書会を主宰して自信もつきました。人の評価は気にせずに、自分がやりたいことで喜んでもらえたら素晴らしいですよね」。真っすぐ前を見つめる藤本さんの瞳に、きっと未来は明るく映っているはずだ。
(2011年1月取材)
藤本さんが最近、印象に残っている本は『ゆたかな人生が始まる シンプルリスト』(ドミニック・ローホー著)と『食品の裏側――みんな大好きな食品添加物』(安部司著)。「読書会のテーマは私のエゴ、わがままです。読んでよかった本や、自分が今から勉強したいこと、他の人の意見を聞きたいことなどを取り上げます。1人で読むより皆で学び合う方が、より多くのエッセンスを共有できてお得ですから」。脳が活性化する朝にこうしたコミュニケーションを図ることで、仕事へのモチベーションも上がると好評だ。
山口県生まれ。愛称は“でん”。広島大学工学部卒、一級建築士。愛媛県の建設会社、山口県の工務店・建築設計事務所勤務を経て、2007(平成19)年から福岡に在住。2009(平成21)年、「ふくおか明るい読書会」を発足し、現在までの読書会開催は40回を超える。2012(平成24)年3月、でんホーム株式会社設立。
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