【ロールモデル】
ロールモデルとは
コラムニスト
大学を卒業後、すぐにお見合い結婚。一度も働いた経験のないまま専業主婦となった。家事と育児に追われ、妻・母・嫁としてしか評価されない日々。16年間、家族のために自分を押し殺し、我慢する毎日が続いた。
「子育てをして、親の介護をして、夫の介護をして、最後は自分が介護されて…。このままじゃ、死ぬ時に絶対後悔すると思ったの。『私の人生、何だったの?』って」
自分の人生を取り戻したい、社会の中で認められたいと思いは募り、離婚を考え始めたものの、一人で生きていくための経済力のなさを痛感した。30代半ば、実務経験ゼロの女性には求人もほとんどない。子どもの学校だよりに書いた文章を国語教師に褒められ、嬉しさのあまり「これを仕事にしよう! プロになろう!」と決意したのはこの頃だ。趣味で作っていたミニコミ紙に本腰を入れ、「プロになる練習」と締め切りを設定。一度も休むことなく、月2回の定期発行を約3年続けた。原動力は「これが成功したら、別れられる」の一心だった。
こうして書きためた原稿を出版社に売り込み、めでたくコラムニストデビューを飾ったトコさん。家や縁故のしがらみの象徴だった名字も捨て、“赤い眼鏡の辛口オバサン”はテレビ番組のコメンテーターをはじめ、講演やセミナーに引っ張りだこだ。その中で常に訴えてきたのは、女性が自由に、自分らしく、自立して生きることの大切さ。専業主婦時代に自分を見失った苦い経験を踏まえ、妻が収入を得て自らの生活基盤を築くことは、夫婦が対等でいるために必要だと語る。
「家庭にあっても社会の一員なんだから、社会人としての感覚を麻痺させてはダメ。家族の都合で簡単に約束を変えるなんて、仕事じゃ通用しないのよ。『これだから主婦は』と思われて、ますます社会参加が難しくなる。悪循環でしょ」
主婦にありがちな一種の甘えに釘をさしながら、とにかく外に出て社会とつながりを持とうと呼びかける。そのきっかけになればと、女性のための新しい団体も立ち上げた。
2010年(平成22年)11月、トコさんが代表を務める一般社団法人「ピュアウーマン」がスタートした。すべての女性が自分の新しい可能性を見つけ、より充実した人生を送ってほしいと、さまざまなテーマでイベントやセミナーを実施。発起人には、徳永玲子さんや西川友紀子さんら地元で活躍するタレントのほか、医師や弁護士も名を連ね、子宮頸がんの予防啓発運動やDV防止・抑制キャンペーンに取り組んでいる。DVシェルターの保護から抜け出し、人生を再スタートさせる女性の生活支援・就業支援も目標の一つだ。
「少しでも興味がわいたら気軽に参加してほしい。迷ったらやってみる、それでダメならやめればいい。“軽はずみが運を開く”よ!」。かつての自分と同じ悩みや苦しみを抱える女性のため、毎日忙しく飛び回り、パワーを振りまくトコさんの人生は今、「残りの時間が足りない」ほど充実している。
(2011年1月取材)
積極的な面の裏返しに、おひとり様の老後への不安もあるトコさん。それを話していたら、「模索の様子をリアルに書いてください」と西日本新聞から頼まれ、女性の老後レッスン「おひとりサマンサ」というコラムの連載が始まった。「1人でポックリ、息子に宣言」「快適な老眼ライフ」「ホルモン療法で若返る!?」など、いろいろな生活の悩みやアイデアは、ありのままの自分をさらけ出しているため、読者の共感を呼んでいる。
北九州市若松区生まれ。慶應義塾大学法学部卒。16年の専業主婦生活を経て、初めての著書『スーパーごりょんさんの博多ちゃっちゃくちゃら』がベストセラーとなり、離婚。歯に衣着せぬ辛口コラムで人気を博す。現在、KBC「アサデス。九州・山口」、FBS「めんたいワイド」にコメンテーターとして出演中。
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