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佐藤 摩利子(さとうまりこ)さん ( 2005年12月取材 )

【ロールモデル】
ロールモデルとは

国際連合人口基金(UNFPA) 東京事務所 所長

世界中が平和になる日がいつか来るために

 水色と白で統一された部屋、たくさんの外国人、そこはいつもの天神とは違い、まるで外国にいるようなオフィスでした。佐藤摩利子さんは国連ハビタット福岡事務所で人間居住専門官として働いています。女性に対するいわれのない差別との闘いが現在の仕事にたどり着くきっかけとなりました。

「女に教育はいらない」から エンパワーメントまでのプロセス

 佐藤さんは秋田県出身。「女に教育はいらない」が持論の父親に大学進学を反対され、短大へ進学しましたが、父親への反発や社会における女性に対する差別意識に疑問を感じ、ロータリー財団奨学生として一年間アメリカに留学します。そこでアメリカの女性と日本の女性の考え方や生き方のギャップを感じました。帰国後、秋田県で市役所に勤務しましたが、女性の仕事といえば「お茶くみ」という現実に直面し、当時の日本では馴染みのなかった女性学を学ぶために再渡米することを決意しました。この再渡米により、佐藤さんのなかで女性の生き方について新たな価値観が生まれ始ました。
 権利と平等の意識が強く、“unfair(アンフェア)”な物事に対して反発するアメリカの女性たちの行動力や力強さに動かされ、佐藤さんも実際に幾度かデモ活動に参加し、権力構造が作り上げた女性への差別と戦いました。
 そして、ニューヨーク州立大学を卒業後,世界貿易センタービルの中にあった邦銀で働き始めました。世界経済の中心にいながら自分が女性として経験してきたことと、途上国の人々のおかれた立場があまりにも対比的なことに、葛藤が重なりました。経済格差や宗教など、幾重もの差別が女性を苦しめていることを知り、「自分は途上国の女性のために何かできないか」という思いに突き動かされます。
 国連に「発展途上国の女性と開発」というプロジェクトがあること知った佐藤さんは,専門知識を身につけるため、学費を貯め、コロンビア大学大学院に通い始めることになります。二年間開発援助プロジェクトのセオリーと実践を学び、卒業後帰国、横浜に事務所を構えるNGO機関シティーネットに入所しました。そして、国連ハビタットが福岡に事務所を構えるにあたり、現在の仕事につきました。

貧困削減とスラム改善

 佐藤さんは現在、カンボジアやアフガニスタン等の貧困削減、スラム改善のための都市環境改善プロジェクトを始め、都市行政に関するガバナンス・キャンペーンやジェンダー問題などを担当し、各国を飛び回っています。国連ハビタットは自治体と市民のパイプ役になったり、様々な技術を移転したり、「住民が主役のまちづくり」をめざし、コミュニティの復興・再建をサポートしています。そこで重要になってくるのが女性の参画です。佐藤さんは、女性同士でのネットワークを作り、行政に意見を訴えたり、活動をしたりすることが重要だと言います。住環境と言うのは女性にとって身近な問題で、やはり家にいる時間が長い女性のほうが改善したいという思いが強く敏感です。スラムなどでも女性が采配を握ると、家計の中で保健衛生、教育などへ多くの支出が分配され、生活環境がより改善するそうです。そんな女性の声を取り入れ参画してもらうことが良い住環境作りの近道につながります。そのため、行政に対して女性がまちづくりに参画するシステム作りを働きかけるのも佐藤さんの大切な仕事です。「女性にやさしいまちづくりコンテスト」も企画しアジア太平洋の自治体に呼びかけ、ジェンダーに配慮した都市行政、まちづくりを推進している自治体を表彰しました。「女性たちの生活が向上し自信をつけていくそのプロセスを目の当たりにし、自分もエンパワーメントされている。」佐藤さん自身が女性に対する不当な差別を体験したからこそ、弱い立場にある人々の気持ちを理解し、その上で今の活躍をされているのだと思います。

これからの夢とメッセージ ~世界の平和に向けて~

 「他の国の人のために、自分に何ができるのかを考えてもらいたい」。その理由として「世界の中には、紛争も絶えないし、自然災害も容赦なく襲ってくる。一瞬にして人々の暮らしが失われる。水も食べるものもなく、劣悪な住環境の中で日々、明日生きていられるかのギリギリの状態で生活している人がたくさんいる。日本に生まれた私たちは、とりあえず毎日の食べ物に困ることはほぼないし、住環境も十分に整備されている。自分は恵まれた国に生まれてラッキーと思うだけで片付けてはいけないのではないか。日本の中の日本を見るのではなく、世界の中の日本を見てほしい。そして、世界の変化に敏感になってほしい」。と佐藤さんは語ります。様々な困難に苦しんでいる人々のために何ができるのかを考え、世界の人々が助け合い、宗教や人種の違いを乗り越え、お互いに理解し尊重し合って、世界中が平和になる日がいつか来るようにと貧困や差別なくすために毎日の仕事に頑張っておられます。

                                    (2005年12月取材)

プロフィール

秋田県出身
カンボジア、アフガニスタンなどにおける都市環境改善プロジェクトなどのサポートに従事。
事業計画の作成、資金調達などその世界的規模の仕事は多岐にわたる。

<これまでの歩み>
短大卒業後一年間米国留学。

帰国後、市役所勤務後、女性学を学ぶため再渡米。

ニューヨーク州立大学で女性学を学び、卒業後邦銀に勤務。

コロンビア大学大学院で2年間開発援助プロジェクトの理論を学ぶ。

帰国後、横浜にあるNGO「アジア太平洋都市開発ネットワーク」の事業課長に就任。

98年から国連ハビタット福岡事務所の人間居住専門官として従事する。

06年ジュネーブ事務所勤務

09年バンコク事務所 所長

17年国連人口基金 東京事務所 所長

 

 


 

 

 


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【さ】 【研究・専門職】

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