【ロールモデル】
ロールモデルとは
農事組合法人モア・ハウス 代表
モア・ハウスの「モーア」は、オランダ語で“母”を意味し、英語では“もっと更にそれ以上”という意味があります。農家の女性が人生の目標、本当にやりたいことを現実できるような環境を作っていけるようにと「モーア」から「モア・ハウス」と名づけました。 モア・ハウスは、ぶなしめじを年間280t。アスパラガスを、年間22tを生産・販売しています。平成9年の7月30日に事業を開始し、女性だけのプロジェクトとして大木町に農事組合法人を設立し起業してきました。女性だけの農業組合は県内でも先駆的な取り組みでもあり、注目を集めています。
大藪さんを含めた常勤3名と非常勤1名の計4名が主なメンバーになって活動しています。初めはまったくの初対面で、何の技術的なことも経営のノウハウもないところからのスタートでした。にもかかわらず、設立から10年近くなりますます事業が発展しているのは、大藪さんたちのメンバーが協力しあいながらうまくまとまって団結力があるからです。
筑後地域は男尊女卑が強く残っている地域で、女はでしゃばらず、家庭を守るという考えが強く、大藪さんも以前はそのような考え方だったそうです。それまでイグサを生産していたのですが、イグサの値段が下がりこのままでは生活していけないと感じていました。そのときに、女性だけのプロジェクトを立ち上げてみないかという話しがあり、夫もシメジ栽培を手がけたいと興味を持っていたので、背中を押して応援してくれました。また、起業をするのにお金や家事の問題が大きかったのですが、大藪さんたちの想いと家族の協力、理解、又行政、JA,部会等の後押しがあったからこそ、勇気をだしてチャレンジしてこられたのです。
大藪さん自身モア・ハウスを始める前までは、人から使われる仕事はしたことがあっても人を使うような仕事をしたことがなかったので戸惑いや難しさを感じていました。「何の技術も経営ノウハウも知らないところからのスタートでここまでこられたのは、JA福岡大城・大木地区しめじ部会の大木センターというところが親法人となり、モア・ハウスを全面的にバックアップしてくれたからです。」とおっしゃいます。
技術的なことや労力的なことは技術者が足を運んでくれて、経験のない大藪さんに手取り足取り指導してくれました。センターの培養ビンを、モア・ハウスやほかの法人が栽培していくという仕組みになっていることも成功の一つです。こうした後ろからの支えがあって、「うまくいっているね。」と言われるようになりました。しかし、経営は「うまくいってる」ではなくて「うまくいくようにする」しないといけないということをすごく肌で感じてきました。
特質を生かした販売促進活動に取り組むことが今後の課題です。お客様と触れ合いながら店頭販売やぶなしめじなどのきのこを使った料理の紹介をしています。お客様からの声を事業改善していくように日々努力しています。また現在では、加工食品にも力を入れています。混ぜご飯用のきのこご飯とおつまみ感覚でたべることのできるエリンギの酢漬けを今開発中で、もうすぐ発売できるところまできています。
加工食品の売りは、大木町のきのこの里で取れたきのこを使っているので生産者がわかるという安心を売りにしています。こうした、活き活きとした女性たちの手で、農業の新たな可能性が育まれています。
(2005年12月取材)
〔近況をお聞きしました!〕
今後、一次産業から二次、そして六次産業と拡大していかなければ事業継続の道はありません。まず、第一歩として、きのこご飯の素を開発し、現在、佃煮、ゴブ漬、酢漬、ドレッシング等に取り組んでいますが、その収益性については、まだまだ低く、アイテムの充実や完成度を上げる工夫、努力をしていきたいと思います。また直販部内の比率をもう少しあげ、市場価格に左右されない戦略的な販売に踏み出す必要があります。
これまで定着してきた試食宣伝販売に加え、伝統文化活動へと輪を広げ、本当に素敵な田舎の実現に向け貢献できればと思っています。
(2011年2月)
三潴郡大木町生まれ。
1974年4月に食品関係の仕事に就職。
1976年12月専業農家の夫と結婚。
1997年9月、福岡県では先駆的な取組として、女性だけの農業組合法人「モア・ハウス」を設立。女性の視点を生かした作業環境の改善や資源循環型農業を実践している。
キーワード
【あ】 【農林水産】