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丸野 香代子(まるのかよこ)さん     (2011年3月取材)

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株式会社談 代表取締役社長

女性が活躍できるグローカリゼーションを目指して

 

3ページ1万2000円の初仕事

 “言葉を炎(も)やす”をコンセプトに、コミュニケーション支援のためのあらゆる仕事を手がける、株式会社談。代表取締役社長の丸野香代子さんが大学を卒業した頃、世は就職氷河期だった。地方出身の女子学生、しかも浪人していたというハンデのため希望の職に就くことができず、故郷・熊本に戻り結婚。専業主婦として子育てに追われながら、社会から取り残されているという焦りは消えなかった。起業のきっかけは、育児情報誌の走りのようなミニコミ誌を作ったことだ。見よう見まねで雑誌の企画や編集、営業を学んでいたある日、知人から紹介された出版社で、街歩きページの取材と原稿制作を任される。
 「私が初めてお金をもらってする仕事でした。3ページ書いて1万2000円。跳び上がるほど嬉しくて、とにかく一生懸命に取り組みました」。熱意を買われ、その後はあちこちから仕事が舞い込むようになった。ミニコミ誌のメンバーと共に編集プロダクションを設立し、1991(平成3)年には法人化。九州初の、会社組織としての編集プロダクションが誕生した。

九州で働く意味とは何か?

 法人化して間もなく福岡に支社を構え、次は東京進出か?という“常識”に反し、丸野さんが選んだのは上海。東京より近く、東京より巨大なマーケットに挑む理由は何だったのだろう。
 「古代から、九州は大陸文化の玄関口。それを踏まえた上で、アジアの中で九州は何ができるか、日本と大陸のつながりをどう作っていくべきかを考えました。そしてたどり着いたのが、アジアの発展を支える国際的な人材の育成と、日本ファンの中国人・中国ファンの日本人を作ることなのです」。
 上海には、日本人に対して好意的で日本語を話せる人材が多い。外資企業を積極的に取り込みたいという政府の方針もあり、日系企業が進出しやすい条件が揃っているという。実務日本語に加えてコミュニケーションスキルやサービストレーニングなど、日本企業の優れたビジネスリテラシーを広めるべく、丸野さんは日中間を忙しく飛び回っている。

女性の能力発揮の場を世界に作ろう

 同社には、「談十訓」と呼ばれる10カ条の社訓がある。そのひとつに掲げているのが「世界水準の仕事をしよう」。より大きな仕事、質の高い仕事、ハードルの高い仕事にチャレンジし、成し遂げることで、社員たちにも成長してほしいと願う丸野さんに、今後の目標を訊いた。
 「円滑なコミュニケーション社会の実現、アジアの発展を支える人材の育成、そして女性の能力発揮の場の提供です。私は女性だからという理由で職に就けず、結局自分で会社を起こしました。その頃の思いを反映させつつ、パートやSOHOといったいろいろな能力発揮の形が実現できる機会を作り出したいと考えています」。
 目指すは九州(ローカル)を拠点に世界(グローバル)基準の仕事を手がける“九州発グローカリゼーション”。小さな会社の大きな挑戦は、始まったばかりだ。
                                                                                                          (2011年3月取材)

コラム

29歳から18歳まで、5人の子どもの母親でもある丸野さん。「子どもを産むたびに仕事上の転機があった」というから驚きだ。「産婦人科のベッドの上で1週間くらい過ごしていると、暇でたまらないから何か考えてしまう」と、次の一歩を踏み出すきっかけになったそうだ。2歳から家事分担がある丸野家では、男女を問わず料理・洗濯・掃除と何でもこなす。「家事上手な家族を育てるのが、私の特技なんです」。

プロフィール

熊本県生まれ。京都大学経済学部卒。熊本日日新聞でのコラム連載などフリーライター時代を経て1987(昭和62)年、編集プロダクション「スタジオ談」を設立。編集者の目・女性消費者の目を活かした企画やマーケティング、販促コンサルタント、商品開発などを幅広く展開。2007(平成19)年からは中国で、日本の企業文化やビジネススキルを伝える人材戦略コンサルティング事業に取り組んでいる。

 

 

 

 


 

 

 

 

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