【ロールモデル】
ロールモデルとは
ワーキング・ウィメンズ・ヴォイス(WWV)代表、働く女性の全国センター(ACW2)共同代表
1988(昭和63)年、佐崎さんは、夫の転勤で大阪にいた。1985年(昭和60)年に「男女雇用機会均等法」が成立(1986(昭和60)年施行)し、「女子差別撤廃条約」が批准されたばかり。当時は「女性が働く」ということが社会的に注目されていた。そんな機運の中、11年間の専業主婦生活に終わりを告げ、人材派遣会社に再就職した佐崎さんは、奇しくも女性の再就職支援に携わった。
その後、再度の夫の転勤で福岡に戻ってきた佐崎さんは、「働く女性を応援したい。社会保険労務士になれば何か力になれるのでは」と思い一念発起。学校に通い、1年後には社労士試験に見事合格した。
それから、社労士事務所に勤務した後、パートタイマーからの相談を受ける仕事に就いたが、「働く女性の支援をするためは、法律だけで支援するのではなく、色々な方面から支援する必要性を感じた」ため、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの資格も取得し、「変えよう均等法in福岡(現ワーキング・ウィメンズ・ヴォイス WWV)」にも参加するようになった。
現在はWWVの代表として、働く女性の支援に尽力している佐崎さんに現状を伺うと、「キャリアアップしている女性や、起業している女性にはスポットが当たりやすいが、働く女性の半数を占めているのは非正規労働者。彼女たちを支援し、底上げをしなければ、働く女性を取り巻く環境は良くならない」と答える。
この問題を解決するため、WWVでは講座やセミナーを開くだけではなく、「働く女性のホットライン」を開設したり、ホームページをリニューアルして携帯電話からもアクセスできるようにするなど、「つながりやすい団体」を目指している。「働く女性の全国センター(ACW2)」に立ち上げ時から参加したのも、全国の働く女性とつながれるネットワークの必要性を感じたからだ。
「組織を運営する中では、大変なこともある。だが、自分と同じように、仕事をしながら活動している人たちが全国にいて、その一人ひとりが、精一杯の時間の中で、それぞれの地域で頑張っていると思うと、それが刺激になり頑張れる」と佐崎さんは語る。
佐崎さんは、働く前の女性に対して、もっと「労働基準法」や「男女雇用機会均等法」、「育児・介護休業法」など、働く女性に必要な法律を学んでほしいと言う。それは、「自分を守る権利を知らずに、厳しい社会に出て行く女性が多い。何も知らないから何も言えないままになり、ますます働きにくくなってしまう」からだ。
そして、働いている女性に対しては、「転職などをしてでも、絶対に働き続けてほしい」と訴える。それは、女性が働き続けることで、1人の人間として自信になると考えているからだ。
佐崎さんは「仕事を選ぶ際、自分がどう働き続けるのか、どう自立するのかということを、働く女性全員に意識してほしい」と述べ、自身は、働く女性が語り合えるスペースを作りたいと考えている。そこで仕事や職場の問題を共有することで、解決する糸口を見つけてもらうとともに、どう働くかと意識するきっかけにしてほしいからだ。
「1人で社会を動かすのは大変だが、働く女性全員が意識するようになれば、男性も含めた社会全体が1歩進んで考えるようになる」と語る。
(2011年3月取材)
以前は、西区にある自宅から天神に出かけるのも車だったが、3年前に「メタボ脱出」を思い立ち“歩き派”に。「以前は、歩かなければならないとうんざりしていたが、今は、歩いている途中で新しいお店なども発見できるので、歩けると思うと心がはずむ。事実は同じでも、自分自身の考え方が変わると気持ちが変わる」と語る。
八女市出身。結婚し専業主婦を11年続けるが、1988(昭和63)年、子どもの小学校入学を機に再就職。人材派遣会社や銀行に勤めた後、1996(平成8)年から市民団体「変えよう均等法in福岡(現ワーキング・ウィメンズ・ヴォイス WWV)」に参加。
2007(平成19)年には、福岡大学大学院法学研究科にて労働法の修士号を取得し、WWVの代表に就任。さらに、同年「働く女性の全国センター(ACW2)」の立ち上げに参加し、2010(平成22)年より共同代表を務めている。
また、上記の活動の他にも、ハローワークで職業訓練の相談員として働きながら、福岡県人権擁護委員を務めるなど多忙な日々を送る。
キーワード
【さ】 【NPO・ボランティア】 【研究・専門職】