<パネリスト>
金 成子さん(株式会社アヴァンティ北九州支社 取締役支社長)
栗原 咲子さん(三井化学株式会社大牟田工場 総務部人事グループ)
青柳 雄太さん(株式会社読売新聞西部本社 事業部)
<コーディネーター>
岩永 真一さん(福岡テンジン大学 学長)
<話題提供>
脇 夕希子さん(九州産業大学商学部 准教授)
大学連携・若年者スタート応援事業として福岡地区での1回目の開催となった本講座、“福岡で活躍する社会人による本音トーク”ということで、社会人3名の方をパネリストにお迎えし、「熱談!働くこと・生きること」と題してのパネルディスカッションを行いました。
最初に、脇さんから今回のテーマについての話題提供をしていただきました。「『働くこと』と『生きること』は重なる部分がある。人は誰かのために役に立つことで『生きること』に意味を見出し、目的を達成しようとする。見知らぬ他人の役に立つための手段の一つとして『仕事(働くこと)』がある。また、『楽しい仕事がしたい』という意識があるが、それは自分の価値観によるもので、経験によって変化していく可能性が高い。このセミナーを通じてみなさんが『生きること=働くこと』のヒントにしてほしい」とのお話でした。
次に、コーディネーターの岩永さんからパネルディスカッションの進め方についての説明があり、ご自身とパネリストの自己紹介からスタートしました。
岩永さんは自己紹介の中で、大学卒業後アルバイト、正社員、契約社員として、5年間広告業界で働いた後独立、学生の頃から街の清掃活動に参加するなど、社会活動をしていたことがビジネスにも役に立っているとお話されました。福岡テンジン大学を立ち上げ、大学で特任教員などを務めるなど、パラレルキャリア※を実践されています。
韓国出身の金さんは、韓国では大学を卒業後1,2年働いたら結婚して専業主婦になることが当たり前の時代に、日本へ写真の勉強をするために留学し、映像関連の仕事を経て、アヴァンティに入社。当時募集をしていなかったアヴァンティへどうしても仕事がしたいという思いを手紙に書いて送ったところ、即面接、即採用となったそうです。学生時代は周りに働く女性のロールモデルが全くいなかったため、「働く」ことがイメージできなかったけれど、好きなことを仕事にしたいという思いがあったとのこと。「『働く』ということは好きなことを深めていくことだけでなく、会社や社会に対して自分には何ができるのかを考え、貢献していくこと」と、部下、上司、経営者という様々な立場で働いた経験からお話いただきました。
現在2度目の育児休暇中の栗原さんは、市民活動に参加したり自己啓発の講座に行ったりと育休中だからこそできる活動をして過ごしているそうです。就職後、リーマンショックの影響で会社の体制が大きく変わり、思うような仕事ができず悩み苦しんだことや、学生時代には周りと同じように就職活動し企業に就職することだけを考え、自分がどう生きたいかを深く考えなかったことなどをお話しいただきました。「結婚、出産という大きな人生の変化を経験し、家族と過ごすことが一番大事だと感じています。仕事を通じて色んな人と関わって、育ててもらった会社や社会に貢献することも続けていきたい」と述べられました。
広告の仕事に憧れて新聞社の広告局に入社、営業職を経て現在は事業部に所属し、新聞社の主催の文化事業で企画運営を行っている青柳さん。社内だけでなく社外での活動を通じて発見される個性を大事にしたいという思いで、入社1年目から福岡テンジン大学の活動に参加するなど、社外活動を積極的に行っているそうです。創造力を持って自分の個性を発揮して働きたいと思い目指した業界だったが、営業職としてお金を獲得していく仕事は苦しいものだったと語られました。事業部への異動は珍しく、社外活動で学んだことを社内でアピールすることで希望がかなったとのことでした。「自分にしか作れないものを作りたい。個性は磨かれることで発揮できるもの。その個性を大切にしていきたい」と述べられました。
ディスカッションの中では、パネリストの方々が学生の時にイメージしていた「働くこと」はどういうものだったのか、社会人として働いてみて実際はどうだったのか、理想と現実のギャップで悩みながら歩んでいった経験などが語られました。
パネルディスカッションの後は、参加者全員で「つぶやきwork shop」。今回の話を聞いて頭に浮かんだものや発見、心の中のざわつきや意識の変化などの「つぶやき」を付箋に書いて、回し合い、「これっていいね!」と思った「つぶやき」を披露しあいました。その中で、「計画してもその通りにはいかないことを改めて気づかされた」「今、何をしていいのかがわからず悩んでいる」という「つぶやき」に対して、「計画して思った通りにいかなければ軌道修正しながら進んでいくことが大切なのではないか」「考えていても理想通りにはいかないのはよくあること。でも現実は理想より多くのものを与えてくれる」とアドバイスがありました。松田館長からも「planned happenstance(計画された偶然性)というキャリア理論では、偶然起こることにいかにして意味を見出すかが大事で、目の前のことを一所懸命やることで湧いてくるものもある」「その時々ではわからなくても自分の人生を振り返ったときに、点と点がつながっていて今があることに気づく」という話がありました。
「人生において無駄なことは一つもない。それを糧にできるかどうかは本人次第です」との岩永さんの言葉で締めくくられました。
参加者からは、「学生生活ではイメージしにくい『働くこと』のリアルな話が聞けてよかった」「今やっていることは無駄ではないかと思うことがよくあるが、この先未来にその経験を役立てることができる機会があると知り、すっきりした」との感想が寄せられました。
※パラレルキャリア
ピーター・ドラッカーが提唱しているこれからの社会での生き方のひとつ。現在の仕事以外の仕事を持つことや、非営利活動に参加することを指す。
タイトル | 「熱談!働くこと・生きること」Vol.1 |
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開催日時 | 2015年10月18日(日) |