ふくおか女性いきいき塾、第6回目の講義は「政治参画」。現役の数少ない女性町長のおひとりである苅田町長の吉廣啓子さんを講師にお迎えしました。
全国に女性町長が何人いるかご存じですか。実は6人しかいないのです(平成27年10月10日現在)。全国には約930町村ありますので1%にも満たないことになります。九州では私一人です。皆さんは、「町長」と聞いたとき頭の中に何となく浮かんでくるのは男性の顔だと思います。それが現実です。「女性が町長なんてあり得ない」と思われているのです。
私は、町長の仕事をさせていただいて3期目、ちょうど10年になりますが、それまでは政治に興味があったわけではなく自然体で生きてきました。ただ、何にでも取り組む姿勢は子どもの頃からありました。例えば、着物を着る機会が増えると、一人で着付けできるように学んだり、せっかく着るなら自分で縫ってみようと和裁を習ったり。和裁ができるようになると次は洋裁をやってみようかと、一歩先、一歩先をやってきました。もう一つ、何かを頼まれたとき、「私でよければ」と引き受けてきました。相手は、この人ならできると思って頼んでいるはずですから、できないと分かった時点で断ればいいのです。
私は高校で英語を教えながら、もっと社会のために役立ちたいという思いから朗読ボランティアを始めました。そしてボランティア連絡協議会を立ち上げ、会長になり、町の中でたくさんの町民を巻き込みながら様々な活動をしてきました。町長への打診が来たのはその頃でした。
町長になると色々と苦しいこともありますが、町長にならないとできないことがあります。政策決定です。町を変えていくことができる。さらに言えば、全町民と知り合えたり、大企業のトップなど普段は出会えない人たちとの出会いは私の最高の宝物です。
私は、町長に一番必要なのはバランス感覚だろうと思います。女性の町長だから「女性のために頑張ってくれる」「女性の登用や管理職が多い」という見方をする人がいますが、女性でも男性でも、町長は町長です。全町民に対して何がベストか、という考え方が大切です。ただ、女性に対する偏見はまだあります。例えば私が何か失敗すると「女はだめだ」と言われる。「吉廣はだめだ」じゃないんですね。女性の代表として見られてしまうのです。私が10年前に町長に就任した時も女性町長は6人でした。減ることはあっても増えはしない。女性の政治家を増やすためにも、この壁を超えなければなりません。
しかし、町長に就任して10年が経ち、変化も出てきました。私は職員の家庭状況をできるだけ知るようにしています。例えば、お子さんが生まれたという届け出があれば、名前を覚えておき、「〇〇ちゃんは元気に育っとうかね」など、声を掛けるようにしています。すると、ちょっとした会話ができます。何気ない会話でつないでいく、それがお互いの信頼関係をつくっていくのです。これまでの町長とは違うということを徐々に分かってくれているようです。
これからは、女性が思い切って議員にも手を挙げる時代になってほしいと思います。そうやって少しづつ町を変えていかないと、私一人では変えられないこともあると感じています。だから、皆さんもチャンスが巡ってきたとき、「私なんか・・・」「女性だから・・・」と断らないでください。難しく考えなくていいのです。今日、私の話を聞きながら「やってみようかな」と思われた方がいたら、ぜひ挑戦してみてください。
【講師プロフィール】
苅田町出身。約30年間高校の英語講師を勤めながら、文化や教育、福祉の分野で活動を続け苅田町ボランティア連絡協議会を設立。2005年苅田町長に就任し3期目となる。2011年に「第2回全国女性町長サミットinかんだ」を開催。
タイトル | ふくおか女性いきいき塾 ⑥政治参画 |
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開催日時 | 2015年10月10日(土) |