ふくおか女性いきいき塾第2回「社会経済」の講義では、一般社団法人日本経済研究所チーフエコノミスト、地域未来研究センター長の鍋山徹さんから、「女性の活躍による経済の未来」と題し、経済と社会、そして女性の起業について学びました。
まず、現在の経済情勢について、リーマンショックからアメリカ経済が立ち直ってきた絶妙なタイミングで、アベノミクスが効果を発揮し、日本経済は回復の初期段階だと語られました。そして、日本経済を見る上での大事なポイントである経常収支について、グラフを使いながら分かり易く解説されました。日本のGDPは500兆円、この2倍以上の借金があるが、経常収支は1年間5~10兆円の黒字で、これを続けている限りは、それほど悲観的に考えなくてもよい。ただし、原油価格のさらなる高騰で貿易赤字が拡大して、経常赤字の月が続くようなことになれば、国家財政の危機が現実のものになるリスクが高まる、ということでした。また、500兆円の経済の流れをうまくビジネスチャンスにつなげて欲しいという期待も示されました。
次に、今日の大事なメッセージとして「量から質へ」考えを変えること、と伝えられました。経済は、労働力人口と労働生産性(稼ぐ力)で決まるのですが、人口減少・高齢化によって日本の労働力人口そのものは減るので、量の面からのみとらえると、これからの日本経済の未来は暗くなります。けれども、女性をはじめとする人材の多様化による労働力人口の質の向上や高付加価値化などによる生産性の向上を実現できれば悲観する必要はありません。このように質でとらえると明るい未来が展望でき、質を高めていくには、若手の能力、個性を伸ばすこと、多様な意見を聞く意識を持つこと、生活の質(ライフスタイル)を成長させていくことが重要なのだと述べられました。質に関連し、時代は「感性社会」へ移ってきていること、そして、この感性社会では、感性に訴え、共感を生み、目に見えない価値を与えることで、新たなビジネスにつながると、成功事例も紹介いただきました。
また、未来を語るときに大事な“3つの未来“の考え方の話をされました。一つ目は「ありうる未来」で、誰もが考えるので突飛ではないが、大きな発展には結びつかない。二つ目は「あるべき未来」で、専門家がこうあるべきだ、というような未来。楽しくないから長続きしない。一番大事なのが 「ありたい社会」で、夢と未来を語り、こうあって欲しい、こうありたい、という希望がもてる社会を実現していく、というマインドに転換することが大事だ、と述べられました。豊富な資料をもとにした説得力のある話が、強く塾生の印象に残ったようです。
女性の起業では、女性に顕著なリーダーシップ論や、女性起業家のビジネスプランコンペティションで賞を取られた方の事例をいくつか紹介され、最後に、ビジネスで大切な心構えで締めくくられました。
豊富な事例を交えながらのお話に、塾生との討議の時間にもたくさんの質問がなされ、「労働人口の減少、高齢化社会を悲観的なこととしてとらえていたが、“量から質“という視点でとらえると明るい未来を感じることができ、捉え方ややり方を変えていくことの大切さを学びました」「もっと幅広く興味を持ち、身近なことから社会情勢、そして世界の動静などを得、また、少しでも人間力を上げるため、週に一回情報と出会い、月に一回一流の場にいることを実践していきたい」「ハイエンド市場は手つかずであるという、起業におけるヒントをたくさんいただいたので、活かしていきたい」などの感想が寄せられました。
タイトル | 平成26年度ふくおか女性いきいき塾 講義②「社会経済」 |
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開催日時 | 2014年7月13日(日) |