ふくおか女性いきいき塾3回目の講座は、成蹊大学経済学部教授の丸山桂さんをお迎えし、「103万円の壁」や「130万円の壁」を中心とした「社会保障」について学びました。
世界の社会保障の原点は、1942年のイギリスのベヴァリッジ報告であり、女性は結婚前しか働かない、結婚した後は働かない、離婚はないと、男性が生計を立てるという家族像に基づいていました。しかし、家族を取り巻く状況は、経済がグローバル化したことによる労働市場の非正規化や、企業内福祉の衰退、更には、共働きの増加、離婚率の上昇、単身世帯の増加など、制度創設時とは大きく様変わりしています。そして、急速に進む少子高齢化によって、社会保障の費用は上昇し、少ない支え手だけでは支えきれない状況になりつつあります。このように、セーフティーネットとしての社会保障の継続を揺るがす大きな問題がいくつもあることを、具体的なデータを示しながら話されました。
そして、「103万円の壁」となる所得税の課税最低限度額、配偶者控除、家族手当の3つの要因や、現行の年金制度における「130万円の壁」について、年収が103万円、130万円を超えると可処分所得が減少する「逆転現象」が生じるしくみと、それが女性の就労調整につながっていることを、ホワイトボードに図示しながら、わかり易く説明されました。
また、日本の子どもの貧困率が高く、特にひとり親世帯における子どもの貧困率が約50%とOECD加盟国の中でトップであり、また、日本だけは非就労世帯より就労世帯の方が、貧困率が高いということや、家族や子どもの為の財政支出が少ないという事実には、とても考えさせられました。
最後に、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2014」には、女性のさらなる活躍推進として、学童保育の充実と、女性の就労に中立的な税・社会保障制度の実現が揚げられているが、具体策は乏しいと指摘されました。「103万円の壁」「130万円の壁」を単純に制度上取り払うのは簡単ですが、女性の多くはパート労働者で低賃金であるために長時間働かないと壁を乗り越えることができません。そして、女性が働くには、男性の長時間労働を見直し、家事や育児、介護を夫婦で分担すること、待機児童、学童保育の問題なども合わせて着手する必要があり、まだまだ、課題が多いと締めくくられました。
アンケートでは、「これまで税制・年金制度に目を向けたことがなかったのですが、103万円・130万円の壁が女性が活躍する機会を限定するような制度であることに大変驚き、衝撃を受けました」「社会保障制度、年金について深く考えたことがなく、現状を知り驚きが大きかった」「女性が社会進出してきた中で、税や社会保障の根幹は男性社会の中で創られたものから変化していないという現実を知りました」「先進国の中でも日本は子供の貧困問題が深刻だという事実に驚きました」「昨日、今日の講義で女性活躍の壁だと思うことがつながった」などの感想が寄せられました。
タイトル | 平成26年度ふくおか女性いきいき塾 講義③「社会保障」 |
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開催日時 | 2014年7月13日(日) |