福岡大学の教室を会場としてNPO法人ママワーク研究所理事長田中彩さんに講義をいただきました。
田中さんは専業主婦の体験談を始める前に、「専業主婦」のイメージについて尋ね、学生たちは、「社会の中で職を持たない」「子育て、家事する人」「内助の功」等と答えていました。
現在も子育て中の田中さんは、社会復帰したいママをサポートするNPO法人を運営されていますが、大学を卒業後福岡・佐賀で仕事三昧の生活の後、第一子出産を機に東京で専業主婦生活に。子育ては幸せだったけれど、1年たった頃に、「社会人として評価されない」という思いに悶々とし、達成感を得るためにいくつもの資格取得に邁進。ママたちはお互いに〇〇ちゃんのママと呼び合い、自分自身のことや仕事のことを話せない雰囲気あった、そんな時、知人の紹介で再就職。会社側は、子育て中の田中さんに配慮した勤務時間を認めてくれたが、長時間働く同僚への遠慮や遠距離通勤、帰宅後の子育てや家事から身体が続かず退職。仕事と育児を両立する大変さを身をもって知り、大きな挫折を経験。専業主婦に戻り、しばらくして第2子を出産。その後は色々なボランティア活動を開始。その中の1つ「ワーキングマザーサロン」は、働くことをテーマにママ同士が話し合う場所。そこでは、子どもが発熱しても仕事は休めず病児保育先の確保が厳しいなど大変な「綱渡り生活」をするママと、一方子育てにはゆとりはあるけれど社会人として価値を感じられない専業主婦とに二極化してることが分かりました。
厚生労働省の21世紀出生児縦断調査によると、第一子出産後の退職は54%内、仕事復帰を希望する専業主婦は86%(福岡市内)との数字があります。
そこで、田中さんは、2010年に「育児中の専業主婦の就業について」調査されました。再就職希望ママ201名のアンケート結果から、ママたちの半数は3年以上勤務経験があり、業務実績や資格を持つなど能力のある方たちの存在が明らかになりましたが、働く場合には、子どもの病気の時には休むことを優先したいので育児と仕事の両立は不可能との思いから、一歩踏み出せない現状が明らかになりました。さらに、2012年には、「企業における『小さな働き方』受入ニーズ」のテーマで、企業の求人ニーズとママたちの可能な働き方を想定して調査したところ、企業は有能な人材を探しており、成果をだすのであれば短時間でも柔軟な働き方の対応も可能だとわかり、双方をつなぐために、1年前NPO法人ママワーク研究所を立ち上げたと語られました。
また、①現在の3人に1人という離婚率の高さ、②配偶者の転職・リストラ、昇給停止、③子どもの教育費の確保を考えると専業主婦はリスクがあること、育児に専念した後に社会に出るときには、壁が二つあり、①仕事をしながら家事を100%やろうとする。②パート・アルバイトは、大きな賃金格差が生じ、内閣府「平成17年国民生活白書」によると正社員を辞めずに働き続けると女性1人当たり約2億円の収入差があるというものでした。
「学生の時に 専業主婦になることでこんなリスクがあることを知っていたら、よりよい選択ができたと思う。皆さんが選択をしなければならないときに、挫折してなかなか戻れなかった私の体験談を思い出して欲しい。結婚相手は意見を出し合える関係が大切、家事も家族で分担し子どもも自立できるように育てること、また、普段から考える癖をつけると絶対強くなれる、困った時も情報集めと交渉することを忘れないでほしい」と学生に語りかける言葉はとても温かでした。
学生からは、「専業主婦になるつもりだったが。将来についてしっかり考えたい。」など、専業主婦についてのイメージが大きく変わったとの感想が多く寄せられました。
タイトル | 「外で働くということ② ~専業主婦を選択した一女性の体験談&これから~ 」 福岡大学2号館221教室 |
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開催日時 | 2013年11月19日(火) |