孔雀サボテンが咲きました。吸い込まれそうなピンクの色と形、私の大好きな花の1つです。紫の花は、ニオイバンマツリ。この花は、咲き始めは紫で、だんだん白い色に変わっていきます。
お変わりありませんか。
今日は、あすばるライブラリー所蔵の本の中から、2冊をご紹介したいと思います。
1冊目は、山中伸弥、藤井聡太著『挑戦 常識のブレーキをはずせ』(講談社、2021年)です。
この本は、iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥さんと将棋の藤井聡太さんの対談録です。
研究と将棋、分野は違いますが、お二人は、それぞれの分野の第一線で活躍している方です。
研究の世界も勝負の世界も、第一線に立ち続けるためには、自分を高めるための人一倍の努力が必要です。
お二人とも、その努力、つまり、本のタイトルにあるような「常識にとらわれない挑戦」を日々、続けてきたからこそ今日があるのだと思います。
「限界を自分で決めない」、「自らの可能性を広げる」といった二人のお話は、仕事への向き合い方や学び方にとても参考になります。
特に、私は「負けから学ぶ」という二人の考え方に大変共感しました。
藤井さんは、将棋の勝敗が決した後に、対局を振り返って行われる「感想戦」についての「感想戦は敗者のためにある」という言葉がお好きとのことで、勝った将棋はもう過去のこと、負けた将棋から反省点を抽出して次につなげることのほうが大切だと言っています。
そういえば、野球の野村克也さんも、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を残しています。江戸時代の剣の達人の言葉の引用らしいですが、負けには必ず敗因があるので、負けにつながった要素を見過ごしてはならない、負けからどれだけ学ぶかが重要だということです。
研究の分野は、何度も何度も実験や挑戦をして試行錯誤を繰り返し、その中から新しい知見を生み出す分野であり、試すことを繰り返す、挑戦をしないと始まらないわけです。
山中さんは、「何もしないのが一番の失敗」と言い切ります。
そして、「やらずに後悔するよりはやって失敗するほうがよい」とも。
私も、これまで多くの選択をしてきましたが、必ず後で、その選択について、反省や後悔をします。やってもやらなくても後悔するので、いつの頃からか、同じ後悔をするなら、やらないで後悔するより、やって後悔するほうがよいと思うようになりました。山中さんの言葉はとても励みになりました。
本書の最終章は「強くならなければ見えない景色」です。
「強くならなければ見えない景色は確実にあると思うので、そうした景色を見るところまで行きたい」。
わくわくしませんか。おすすめの1冊です。
2冊目は、川島良彰、池本幸生、山下加夏著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社、2021年)です。
この本は、コーヒーの専門家、アジア研究の大学教授、国際NGOでの豊富な経験の持ち主という3人の専門家が、コーヒーというフィルターを通してSDGsを読み解く、とても分かりやすい解説書です。
SDGsは、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」で、2030年までに達成すべき、持続可能でよりよい世界を実現させるための17の目標と169のターゲットが掲げられています。
「誰一人取り残さない」というキーワードとともに、SDGsという言葉は、もうすっかり広く定着した感がありますが、「もう少し身近にSDGsを理解するにはどうしたらよいか」という声を多く聞いてきました。「17の目標のどれに取り組めばよいのか」といった声もききます。
そんな質問にお答えするのに、この本は最適だと思います。
本書は、「コーヒー」という私たちの身近な生活の中にあるものを取り上げ、その生産から流通・消費までの間にどのような課題があるか、ということを解説しているので、わかりやすさにつながっていると思います。
コーヒーが私たちの口に入るまでを概観すると、コーヒー農園のコーヒーの木になった実から種を取り出し、乾かした生豆を日本に輸入し、その豆を焙煎して砕き、熱湯で抽出した液を飲む、という流れだと思います。
SDGsに関連づけて見てみると、現在のままのペースで経済活動や開発を続ければ、自然環境の破壊や温暖化が進み、コーヒー生産国で土砂崩れ等が発生し、コーヒー栽培に適した地域が減少することが予想されます。また、コーヒーの生産量を確保するために、新たに森林が伐採されると、災害が懸念されます。
生産労働に携わる労働者と農園経営者との関係はどうでしょう。私たちは安くておいしいコーヒーを飲みたいと思いますが、生産国の人たちの生活はどうでしょう。
この本には、自然環境や人権に配慮しながらおいしいコーヒー生産に携わっている生産者の取組みが17の目標ごとに紹介されています。私たちが飲んでいるおいしいコーヒーを、これからもずっと飲み続けられるような世界を今から作っていくために、私たちはそのような取組みを理解し、生産者を応援することが重要だと気づくことができます。
SDGsを理解するための新しいアプローチの一冊です。この本のアプローチを参考に、「チョコレート」や「アボカド」からSDGsを考える、といった独自の学習をすることもできると思います。
是非、お読みください。
あすばるでは、ほかにもSDGsを学ぶために参考になる書籍の展示をはじめ、そのときどきの話題に関係する書物を集めた企画展を開催しています。
現在は、男性の家事育児に関する企画展をメインに、いくつかのコーナーを設置しています。皆様のご来館をお待ちしています。
おしまいは、マイ農園だよりです。今年はグミが豊作です。たくさん収穫できたのでジャムにしました。
ではまた。(2022.05.23)