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【センター長コラム No.63】地域における男女共同参画のすすめ(自治会・町内会編) (2021年8月30日配信)

こんにちは。お変わりありませんか。

暑い日が続いていますが、9月が来るのを知っているかのように、ムラサキシキブの実が紫色に変わってきました。夏の花、ムクゲも元気に花を咲かせています。

   

 

今年度も、女性団体や市町の行政の皆さんから、研修講師や講演の依頼をたくさんいただいていましたが、昨今の新型コロナウイルス感染の急速な拡大のために、ほとんどの研修や講演会が中止になってしましました。

 

そこで、当面、このコラムの中で、いただいていたテーマに関してお話をしていきたいと思います。

 

今回は、「自治会・町内会における男女共同参画」についてです。

 

世界経済フォーラムが今年3月に発表した日本のジェンダーギャップ指数は、世界156か国中120位と、日本の男女不平等の大きさが浮き彫りになっていますが、国レベルだけでなく、身近な自治会・町内会も、女性の参画が非常に少ないという課題があります。

 

福岡県の状況を数字で見てみましょう。

『令和2年度福岡県男女共同参画白書』によると、福岡県内の60の市町村に7,799人の自治会長がいますが、女性はそのうちの745人で、9.6%です。

 

この数字は、市部と町村部を合わせた全体の数字であって、町村だけを見ると、1,051人中43人(4.3%)と、さらに少なくなります。

 

福岡県の人口の男女比は、市部も町村部も、男性が48%、女性が52%となっており、女性は半数以上いるのに女性の自治会長は非常に少ないのです。

 

自治会の「自治」とは、文字どおり、自分たちで治めるということで、自治会活動は、自分たちの地域が、より安全で住みやすくなるよう、住民自身の力で課題を解決していくことです。

 

地域にはいろいろな人が暮らしています。性別や家族構成、生活スタイルなどさまざまで、日々の生活で抱えている課題もさまざまです。

地域に暮らすみんながずっと幸せに暮らし続けられるよう、誰も取り残されないように、地域の課題を見つけ出すには、そこに暮らす多様な人々の目や意見が必要です。そして、その課題を解決するためにはまた、多様な知恵や経験が必要なのです。

 

昨年12月に閣議決定された国の第5次男女共同参画基本計画では、「地域活動における男女共同参画の推進」の施策の基本的方向として、

  • 誰もが身近にある地域社会を、活力があり、持続可能なものとするためには、性別に関わらず誰もが地域活動や地域づくりに参画することが必要である。
  • 自治会や町内会をはじめとする地域活動や地域づくりのプロセスに、男女共同参画の視点、女性の意見を取り入れ、反映することができるよう、地域の実情に応じて、組織・団体の長となる女性リーダーを増やすよう取り組む。

ことが示されており、地域活動において、固定的な性別役割分担意識が根強く残っているので、男女双方の意識改革を行う必要がある、とされています。

 

具体的には、

①自治会・町内会などの長となる女性リーダーを増やすための機運の醸成や
女性人材の育成

②男女ともに多様な住民が参加しやすい活動のあり方の検討

が課題としてあげられています。

 

そこで、女性の自治会長が増えるための課題や方策について考えてみたいと思います。

 

内閣府が2018年に行った調査によると、女性が自治会長になるメリットとして、「話しやすい」、「真面目」、「細かいことに気をつけてくれるので安心」、「女性の要望が届く」といったことがあげられています。

私が以前、インドネシアのジャカルタの町内会で行った調査でも同様に、女性の町内会長は真面目で、話しやすいという声を多く聞きました。

 

近年多発している災害への備えにしても、いろいろな目で、危険な個所や、支援が必要な人、あるいは、避難生活で必要になる物資や生活環境などを点検することが必要です。

現実に、家族の日々の生活、衣食住の管理を担ってきたのが女性ですから、女性の視点というのは非常に重要です。

 

ですから、災害対応、危機管理という点においても、女性が自治会長になることは、女性の声が届きやすく、メリットがあると思います。

 

福岡県の『令和2年度男女共同参画白書』によると、令和元年の意識調査で、「地域の意思決定の場に女性が積極的に参加することについてどう思うか」という問いに対して、男性で90.6%、女性では88.6%の人が「必要」と回答しています。

 

ところが、自治会長就任を依頼されたらどうするか、という問いに対して、「引き受ける」と回答した女性は14.2%で、82.6%が「断る」と答えています。一方、男性は「引き受ける」という人が22.1%、「断る」という人が75.9%です。

 

女性のほぼ9割が、地域の意思決定に女性の参加が必要と思っているのに、その参画を依頼されたら、8割以上の人が断るというのです。

 

女性が断る理由で最も多いのが「責任が重いから(53.7%)」です。次が、「知識や能力の面で不安があるから(45.1%)」です。

男性で「責任が重い」と感じているのは35.7%、「知識や能力の面で不安がある」と考えているのは31.4%で、大きな違いがみられます。ちなみに、男性が断る理由で多いのは「時間的余裕がないから(49.9%)」、「人間関係が煩わしいから(42.3%)」です。

 

私はいつも、女性の皆さんに言っているのですが、女性の皆さんは、自分の力をあまりに過小評価していると思います。地域に暮らし、地域をいつも見ている人が一番地域を知っています。知っていることは一番の強みです。また、女性には横のつながりがあり、コミュニケーション能力がとても高いと思っています。

 

自分は人財であるという自信を持っていただきたいと思います。

人財の「財」は、材料の「材」ではなく、「財産の財」です。

 

女性の自治会長が増えるためには、女性の皆さんが自信を持つだけでなく、周りの人のサポートも必要です。

男性の後押し、男性の支援は特に重要です。男性の自治会役員が女性の自治会長をバックアップすることで、地域全体が自治会長を支援するようになり、女性の自治会長は、心強い気持ちでリーダーシップを発揮することができると思います。

 

それから、女性自治会長を増やす必要があるといっても、いきなり経験のない女性に会長を任せるのではなく、まず、自治会の役員になってもらい、自治会運営を経験したうえで、会長を任せるというような段階的なステップアップも1つの方策だと思います。

 

さらに、自治会活動そのものを見直すことも大切です。これは、ある女性団体の例ですが、若い人に役員になってもらうために、昼間の時間帯に行っていた役員会を、夜7時ごろからに変更したり、会合の回数を減らしたりした例があります。また、昨今では、オンライン会議を行っている町内会もあります。

 

ここで誤解のないように付け加えますが、男女共同参画とは、女性が常にリーダーであるべきであるということではありません。今回お話ししているのは、女性の自治会長があまりに少ない、という問題提起であり、「男性が自治会長を務めるのが慣例」という状況になっていたり、「自治会長は男性しか務まらない」といった意識があるとしたら、従来のやり方にとらわれず、老若男女、いろいろな人が参画できる自治会・町内会活動を考えるときが来ているという提案です。

 

いま、時代の進むペースが大変速くなっています。

よく、社会教育で、「人材を発掘して、育成し、実践へ導く」と言いますが、時代に迅速に対応していくためには、実践しながら、多様な住民が参加しやすい自治会活動のあり方を考えていくことが必要になっていると思います。「まず行動」のときにあると思います。

 

終わりは、マイ農園だよりです。

鉢植えで栽培しているイチジクに実がなりました。プランターのオクラは順調に花をつけています。

ではまた。                         (2021.08.30)

 

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