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リレート-ク 「困難を声にする」 ~現場からの問題提起~

 労働市場の規制緩和が進められたことにより非正規雇用が拡大しています。特に女性労働者の多くが非正規雇用で、自立し、安心して生活することが本当に困難な状況にあり、くたくたになって働く女性の悲鳴が聞こえてきます。
 更に、固定的性別役割分業を前提とした制度や慣習が、女性の労働を家計の補助として低い賃金に抑え、また、セクハラやパワハラにもつながっています。そして、それらに対してどのように抗議や相談をすればよいのか知られていないことが大きな問題です。
 ワーク・ライフ・バランスの実現はとても大事な課題だと思っていますが、現実は、男性は長時間労働が当たり前、女性は家事・育児の大半と労働も担い、また、いくつもの仕事を掛け持ちしないと生活が成り立たない非正規雇用労働者など、ほど遠いものがあります。
 これらの課題は決して必死で頑張っている個人の責任ではありません。また、国のかけ声、個々の企業・個人の努力で解決することも困難です。労働者を代表する労働組合や経済至上主義の社会が、このような課題にしっかりと目を向けてこなかったことも事態を深刻化させた一因です。
 今後、安心して生活ができる労働環境を実現する法律、制度を整備し、不当な労働条件や不快な職場環境を解決していかねばなりません。そのために、まず問題を抱えている当事者が実態を声にして、一人ひとりが学び、気付き、さまざまな立場の人たちが課題を共有し、ネットワークを作って行動につなげることで、社会を動かしていかねばなりません。


 全国で122万世帯余りの母子家庭があり(平成15年)、生別母子家庭の割合が増えています。国の政策は、給付から自立支援へと大きく軸足を変えていますが、母子家庭の年収は200万円以下が7割です。母子家庭の母親が仕事を探す場合、育児の都合から勤務時間、休日、勤務地などが限定され、パート労働を余儀なくされます。そのパートも1日4時間、週3回など細切れなので、生計を維持するためには、何カ所かでダブルワークをしなければならない状態で、どんどん貧困になっていると実感しています。この状態が続くと母子家庭は本当にどうなるのだろうと暗澹たる思いになります。
 また、子供に何か問題があった場合、「勝手に離婚したから、あなたのせいではないか」というような風潮から、母子家庭が孤立してしまうということが多くあります。ネットワークを作るにしても、時間的、経済的余裕がなく、地域での活動なども難しい状況で、お母さんが病気になったら、子供はたちまち困ってしまうのが現状です。
 女性は働き続け、経済力を持ち続けることがやはり大事です。仕事を持っていて離婚するか、専業主婦で離婚するかでは雲泥の差があります。パートと正社員の均等待遇や、正社員を基本として雇用するなど、企業にも社会的責任を果たしてもらいたいと考えています。
 また、持ち家率が低い母子家庭のために公営住宅を増やしたり、お母さん一人が全部を担うのではなくて、たくさんの友達や地域の支えなど、子育ての社会化も必要です。経済的な苦しさから塾に行きたくても行けない子どもがさらに貧困になるという貧困の再生産にならないように、子どもの将来の選択肢が広がるような社会になってもらいたいと思います。


 高齢者の問題は、介護される・する側双方に女性が多いことから、女性が抱える大きな問題であるという認識を強く持っています。‘介護はこれまで嫁がしてきた’と、介護が女性に任されるとともに、評価されないことは大きな問題です。
 平均寿命の伸びは、介護が必要となる可能性と期間にも影響していることを認識
していただきたい。
 多くの女性が夫の扶養という形です。自分のお金を持たない。「女三界に家なし」といわれる高齢者問題を、ぜひ、自分の問題として捉えていただければと思います。
 皆さんには、是非ホームヘルパーの資格を取ってほしいと思います。介護し上手、され上手になれば、双方が心豊かになれます。そして是非、ボランティア活動をやりましょう。友達ができるし、福祉サービスや制度を理解し、自分はこうすればよいと学ぶ場になります。その第1歩として、学んだこと、考えたことを伝える情報ボランティアをやってみてはいかがでしょうか。
 自分らしく生きるために、ご自宅を皆さんに提供して、ともに生きることを実現していかれることを提案します。誰かが建てた老人ホームでお世話になるのではなく、ともに生きる地域を作っていこうではありませんか。
 日頃から誰かに自分の人生を依存してしまうのではなく、「私はこう生きたい。こうありたい。」と発信し、高齢者になっても自分らしく生きることを求めていけば、制度、政治を動かすことにもつながります。



 内縁も含む夫から殺される女性は1年間に117人です(2006年)。また、DVは元夫からの被害や、デートDVが注目されてるように10・20代の若い女性の間でも広がっています。身体に対する暴力を受けたという女性は4人に一人、心理的な暴力、言葉の暴力も含めると女性の3人に一人が何らかのDVを経験しています。これらは特殊な問題ではないのです。
 このことによって女性は、健康を害したり、労働意欲をなくしたり、子育てをするエネルギーを奪われたり、あるいは命を失ったりしており、本当に緊急に取り組まなければならない課題の一です。全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられる相談件数は、5年間で約2倍となりました。しかし、それは我慢していた女性が声を上げるようになったということだと思います。長年我慢してきて、高齢になってようやく相談できたという人たちもたくさんいらっしゃいます。子どもをかかえた専業主婦が経済的な困窮でDVから逃げられないという状況もあります。これまで、多くの被害女性が、「もっといい妻になれば夫も殴らないようになるのではないか」とも思ってきました。
 被害女性にとっては、一時保護後の自立生活ができない経済的な貧窮も大きな課題です。”こういういい夫婦でなければいけない。” ”こういった家族が理想の家族”だというのはあるかと思いますが、そうではない多様な生き方・働き方、多様なカップルも認められ、選択できる社会に変えていかなければならないと思います。

終わりに~堤さんのまとめ~
日本の女性の地位は、世界130国中98位だとの記事が新聞に載っていました。これは経済的な地位や政治的な地位をすべて評価したもので、先進国では最下位です。この状況をなんとか変えていかねばならないと思います。今日提起されたさまざまな課題について考えると、その根底に固定的性別役割分業の壁、一人ひとりの生き方や個性と能力が十分に尊重されない社会が見えてきます。まず、”さまざまな課題に取り組む団体の会員になる。” ”ボランティアをする。”など、一人ではなく仲間を増やしましょう。そして、そこで学んだことを自分の問題として、仲間とともに課題を解決していく目標を設定し、行動を起こしていただきたい。自分たちでできることを実践し、一人ひとりの力がついていくと、政治も女性の声、行動を無視できないということにもなります。今日のこの場から、皆さんとともに社会を変えていこうという思いを共有していきたいと思います。






【フォーラム2008】

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