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芳野 元(よしのはじめ)さん (2016年1月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

医療法人寿芳会 芳野病院 理事長・院長

一人ひとりが働きがいを感じて、意欲と能力を引き出せる職場をつくる

 大正2年の開院以来100年以上にわたり、地域に根差した医療を提供する芳野病院。院長の芳野元さんは、「医療の質を高めるために、一番大事なのは職員のモチベーション」と語る。積極的に職員のキャリア支援や、ワーク・ライフ・バランスも推進。先進的な取組は全国的に評価され、昨年、厚生労働省の「キャリア支援企業2015大臣表彰」、「イクボスアワード2015グランプリ」を受賞。その他、数々の賞も受賞している。経営者として先陣を切って働きがいのある職場づくりをめざし、その信念を実現してきた。

アメリカ留学で受けた衝撃

 芳野さんが「イクボス」になったきっかけは、30年前のアメリカ留学。結婚してすぐに妻と一緒にアメリカで2年間暮らし、公私ともに大きな影響を受けた。直属の上司だった男性の教授が午後4時に帰宅し、毎日子どもを保育園に迎えに行っていることには驚いた。残業する人は段取りが悪いとみられてマイナス評価、パーティーは夫婦同伴、家事や育児も分担するのが当たり前。「日本とは違う習慣に衝撃を受けましたが、そういう考え方もあるんだ、と気づかされることが多く、今のものの考え方に大きく影響を与えています」。
 両親ともに医師の家庭に育ち、母親の働く姿を見て育った。女性が仕事をするのは自然なことだと思っているのも、ベースになっている。
 看護師をはじめ病院の職員は女性が多く、結婚・出産・育児で退職することになれば優秀な人財が流出してしまう。11年前、子どもができても働き続けられる環境づくりに、芳野さんは本気で取り組んだ。

先頭に立って突っ走り、ワーク・ライフ・バランスを実現

 芳野病院のワーク・ライフ・バランスの柱は、育児休業取得奨励、短時間勤務、連続休暇から成っている。最近では導入している病院や企業も多いが、当時は画期的な取組だった。またその後、より働きやすい職場を作るためにシフト数を増やしていき、現在57種類の勤務シフトがあるのも特徴。「早くから始めたので、うちにはたくさんのイクボスがいるんですよ」。育休や短時間勤務を使った経験のある人が今や管理職となり、理解が浸透しているため制度の取得率は高い。
 病院の改革を進める途中、悩んだこともあった。そんなとき背中を押してくれたのは、ある講師の「突っ走りなさい。あとは自然に付いてくる」という言葉だった。
 「自分は後ろから山を押そうとしていた。だから動かなかったんだ。先頭に立って突っ走れば、皆がいつかはついてくるはずだ。やるだけやってみようと、ホッとしましたね」。
 職員の自主的な活動でプロジェクトチームをつくり、ボトムアップで、皆の意見を吸い上げ、それをすぐに判断して制度を作り、ドップダウンで皆に伝える。そしてうまくいかないときは話し合って解決する。そんな風土が着実に育っていった。

キャリア支援にも力を注ぎ人財育成

 経営者として特に力を注いでいるのは、職員のキャリア形成支援だ。全員がキャリアファイルを所持し、それに目標や達成状況などを記入して上司と年2回面談を行う。病院全体のミッションと各部門の目標を連動し、個人目標まで落とし込む作業を徹底している。その他クリニカルラダーという習熟度別教育を行ったり、社外研修への参加も費用を持ち、人財育成には投資を惜しまない。「最近女性活躍の推進が叫ばれていますが、ワーク・ライフ・バランスの充実だけでは人は育ちません。これからはキャリア形成の支援が社会にとって不可欠になるでしょう」。
 芳野病院のモチベーションを高める施策は成功事例として全国的に紹介され、講演会の依頼も多い。成功の秘訣を尋ねると、「職員の意見を聞くこと。そしてトップが本気で決めて宣言すること。ボトムアップとトップダウンの両方がかみ合うことですね」と即答する芳野さん。「職員満足以上の顧客満足は得られない」という信念のもと、働きやすい職場をつくり、それがひいては地域医療の向上となることを目指してさらなる躍進を続ける。

                                                                                                        (2016年1月取材)

コラム

初めての楽器、サックスに挑戦

少年時代のアマチュア無線に始まり、いろいろな趣味に熱中してきた。スキューバダイビング、モーターボート、ハーブコーディネーター、ガーデンコーディネーター、そして最近は、フードアナリストなど多彩な資格も取得。写真、ドクター人形のコレクションは長く続けている。昨年からは「やったことのない何か新しいことをやってみよう」とサックスに挑戦。ドラムを習い始めた妻と一緒に、音楽を楽しんでいる。

プロフィール

北九州市出身。久留米大学卒業後、産業医科大学第一外科、ニューヨーク州立大学訪問助教授を経て、1990年芳野病院副院長に就任。1997年より院長、2003年理事長に就任。
【受賞】「キャリア支援企業表彰2015厚生労働大臣表彰」(厚生労働省)、「イクボスアワード2015グランプリ」(厚生労働省)、「平成25年度おもてなし経営企業選」(経済産業省)、「第6回ワーク・ライフ・バランス大賞優秀賞」(公益財団法人日本生産性本部)他受賞多数。
【認定】2015年7月「プラチナくるみん」取得(厚生労働省)。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【や】 【イクボス・イクメン】

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