【ロールモデル】
ロールモデルとは
有限会社ラピュタファーム マネージャー
豊かな自然に恵まれ、四季折々の景色が美しい田川郡川崎町。町から離れた山中にある『ラピュタファーム』は、行列ができるレストランだ。地元産の新鮮な野菜や、ラピュタの果樹園で採れた果物をたっぷり使ったランチバイキングを提供している。約60種類のメニューは、すべて竹内美香さんが考案したもの。オリジナリティにあふれ、おしゃれで体にやさしい料理が並んでいる。
「田舎にこんな素敵なレストランがあるなんて!建物と景色がすごく気に入って、よく来ていたんですよ。ここで自分も何かできたらと思いました」。
すっかりラピュタのファンになった竹内さんは、まもなくパートで働き始めた。未経験の仕事だったが、もともと料理をしたり、人を喜ばせたりすることは好き。お気に入りの環境で働く毎日が楽しかった。
しかし、季節によって来客数が変動する農園レストランの経営は厳しかった。社長が本業の農業に専念していたため、飲食事業への目配りが手薄になっていたのだ。そのことに気付いた社長は、メニューから接客まで、抜本的な改革を決意したそうだ。開店から約2年。当時、竹内さんは、その責任感の強さで一目置かれていた。そこで社長は、店の改革の旗振り役を任せようと、一緒に料理研究家のもとを訪ねることにした。
竹内さんは、「言われたことはやるけれど、スタッフの指導までは…」と、しぶしぶ同行した。そこで、「料理って簡単ではないし、スタッフとの関係も含め、甘くない」というプロの言葉に触発され、行くときとは別人のように気持ちが変わった。
「火が付いちゃったんですよね。帰りには、私がやります!って言いました」。
「自分が担当するからには、恥ずかしくないものを出したい。友達を呼べるような店にしたいと思って、盛り付けの美しさと手作りにこだわりました」。また、保育士と子育ての経験から、食の大切さを実感しており、アレルギーのある人でも安心して食べられるような素材と品数を心掛けた。
正社員となり、メニュー開発からスタッフの指導・管理まで担うようになったが、「自分は料理のプロではない」と気を引き締め、あらゆる努力を惜しまなかった。食べ歩きはもちろん、本やテレビからもヒントを得て、素材の良さを引き出す調理法や、味付けの試作を重ねた。手間暇かかる作業をスタッフに伝えるときは、現場の意見も聞き、お互いが納得できる形に着地させた。
すべての人が居心地よく過ごせるよう、赤ちゃん連れの親子のために離乳食を常備。メニューの7割を毎月更新し、バラエティ豊かな旬の味を提供している。
こうした努力がひとつずつ実を結び、やがてラピュタの魅力は口コミで伝わり、平日でも多くの顧客でにぎわうようになった。
オリジナルレシピはすべてオープンにして、興味のある人には作り方を教えている。「そんなに難しいものはないんですよ。家庭でも作ってもらえたらうれしいです」。創意工夫に満ちた料理は、一つひとつにストーリーがある。どれも愛情を込めて生み出してきたものだ。将来はレシピ本を出す構想があり、たくさんの顧客が心待ちにしている。
「お客様の言葉と笑顔にいつも感謝しています。喜ぶ姿を見ていると、毎日とても楽しく働けるんです」。
遠方から足を運ぶ顧客に心から満足してもらいたいから、仕事には妥協しない。料理も接客も最高のもてなしができるよう、スタッフには厳しく指導をしている。何か問題があれば、その場ですぐに解決するのがモットーだ。社長と意見がぶつかることや、理想とのギャップに落ち込むこともあるが、「やっぱりここが好きだから、何があっても楽しいです」と明るく言い切る。
田川の自然と美味しい料理、心を込めた接客を通して、これからも笑顔の輪をつないでいく。
(2014年10月取材)
ラピュタファームでは、ヤギと犬を飼っている。動物が大好きな竹内さんにとって、かわいいパートナーたちは大切な存在。警察に保護されたヤギを引き取ったこともある。毎日声をかけ、コミュニケーションを欠かさない。家にも3匹の愛犬、ウメ・モカ・メリーがいる。「どんなにいたずらをしても、ワンちゃんには甘いんですよ」と満面の笑みで語る。
田川郡出身。短期大学卒業後、保育士として地元の保育園に5年間勤務。1998年『ラピュタファーム』にパート採用され、2001年より正社員。マネージャーとして20代から70代まで20名の従業員を取りまとめ、レストラン全般の経営に関わっている。
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【た】 【働く・キャリアアップ】