【ロールモデル】
ロールモデルとは
株式会社ジーコム 取締役 調査研究部部長
福岡におけるマーケティング会社の先駆けとして、1986年に創業した株式会社ジーコム。官公庁から民間企業まで様々な顧客の課題を解決するため、生活者の意識調査からコンサルティングまで行っている。34歳という若さで同社の取締役に就任した神崎さんは、「折々で直感を大事にしてきた」とさわやかな笑顔で話す。
嘉穂郡で生まれ育ち、文学少女だった神崎さん。中学・高校時代は夏目漱石や三島由紀夫などの純文学を好み、大学は文学部日本文学科で学んだ。「学生の頃から、やりたいことや会いたい人にはわりと積極的で、作家の講演会などに出かけていました」と振り返る。
バブルの真っ盛り、大手金融機関に就職。4年制大学卒業の女性の採用が始まった年だった。支店の営業計画や社員研修などを担当し、大きなプロジェクトのメンバーにも選ばれた。「バブル期の高揚した空気の中、働くことに確固としたイメージがないまま就職したけれど、私は働くことが好きだと実感しました」。
5年ほど経つと、「大きな組織で歯車になるのではなく、全体像が見える仕事をしたい」と思うように。新しい舞台を求め、求人誌で目にとまったのがジーコムの募集だった。「当時、まだマーケティングは一般的ではなく、私にも未知の分野でしたが、『未経験者歓迎、私たちが育てます』という言葉に魅かれたんです」。
直感を信じ、27歳で社員6人のジーコムへ転職。マーケティングのいろはから貪欲に学び、「お客様や社外の方々にもいろいろ教わり、視野がどんどん広がりました」。早くも2年目から仕事を任され、マーケティングリサーチから博物館など文化施設の開発まで幅広い業務に携わってきた。「一般論として、どんな仕事でも初めの5年は成長のスピードが速い。私の場合、32歳の頃に成長の歩幅が小さくなったと感じ、心が少し揺れました。でも、私はこのフィールドで成長したい、納得いくまでやろうと腹を決めたんです」。そんな神崎さんの覚悟に呼応するように、34歳で取締役に抜擢された。
会社の舵取りについて学ぶべく、40代半ばで九州・アジア経営塾「KAIL」に入塾。各界・各企業から派遣された人材が一堂に会し、1年にわたり最先端の経営哲学に触れる場に、神崎さんは自費で飛び込んだ。「経営者の話やケーススタディを通して、多様な考え方を知り、判断や思考の幅が格段に広がりました。どの会社でも同じことがある、大事なことはいくつかに集約されると気付いたことで、心に余裕も生まれました」。
「マーケティングの仕事は奥深く、正解はない」という神崎さん。「調査データは1つですが、そこから導き出す分析や戦略に正解はなく、皆が納得できる最善策を出すことが重要。そのためには、深くやり抜くしかない」と力説する。だからこそ、仕事で大切にしているのは「一歩踏み込むこと。求められるところに達するのは当然で、その先どこまで深め、人と違うことができるか。先を考えすぎず、一つひとつ真剣に取り組んできた積み重ねによって、今の私がいる」という。さらに「いい人間関係を築き、ネットワークを大切にしたい。結局、いつも助けてくれるのは人。支えてくれる人たちに感謝しています」と穏やかに微笑む。
入社から21年、会社の業績が低迷した時期も乗り越え、走り続けてきた。「私個人の成長が会社の成長につながるという意識で仕事に打ち込み、結果がダイレクトに反映される環境にやりがいを感じてきました。これからは、後に続く人たちのサポートを主軸に考え、会社の成長を支えることが、次の扉を開く鍵になると考えています」。最後に、この仕事の面白さをいきいきと語ってくれた。「新しい時代や社会を創り出す一端を担えることですね。次の時代を読み解く種は、生活者の奥底にある。生活者の意識を調査・分析すると、未来へのヒントや兆しを発見できる。その発見をお客様に返し、お客様の成長や発展に貢献できるのがうれしい。今後も地元の会社、地域の発展に貢献していきたい」。 (2014年9月取材)
趣味といえば、読書からミュージカル鑑賞、旅行、買い物、食べることまで、いろいろ浮かぶという神崎さん。中でも、学芸員の資格を持っているほど、美術の分野には造詣が深い。「海外の美術館をめぐるのが好きです。昨年はニューヨークへ行き、事前に予約して個人所蔵の美術品を見せていただいたんですよ」。
嘉穂郡出身。梅光女学院大学文学部日本文学科を卒業し、1988年に大手金融機関に入社。支店営業計画、CSプロジェクト、社員研修などを担当。1993年、株式会社ジーコム入社。2000年から同社取締役を務める。専門分野は、生活者のライフスタイル・消費行動研究、流通・商業施設のマーケティングプランニング。福岡県農業・農村振興審議会委員、九州エコライフポイント省エネ製品審査委員などを歴任。
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