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工藤 洋子(くどうようこ)さん   (2014年5月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

イオン九州株式会社 執行役員 人事総務本部 人事教育部長(取材時:南福岡事業部 事業部長)

育休制度などを有効活用して管理職をめざしてほしい

 2013年9月、イオン九州株式会社に女性初の事業部長が誕生した。5つある事業部の一つ、南福岡事業部の事業部長の工藤洋子さんだ。ピンと伸びた背筋、穏やかな表情と柔らかな声で、明朗に話す。管轄する11店舗を飛び回り、売上目標を達成するための売り場づくりや、店長たちの指導教育を行う日々だという。

均等法前に入社~悩みながらもキャリアアップ

 工藤さんが入社したのは1981年。当時、4大卒の女性の就職先がほとんどない中、やりがいのある仕事を探し続け、1979年から男女の区別なく採用・処遇を行っていた同社に就職を決めたという。
 一方で、仕事量や出張の頻度など、求められていることも男女で同じだった。同期入社の女性約25人のうち、現在も同社に勤めているのは工藤さんだけだ。「みんな結婚・出産を機に辞めました。私は社内結婚で、夫婦が無理なく通える勤務先に異動させてくれるシステムなので、夫の理解もあり仕事を続けられました。でも、夫婦とも親元を離れていますし、当時は育児休暇制度などもありませんでした。子どもがいなかったから続けられたのかもしれません」。
 初めのうちは、目の前の仕事をただ一生懸命やってきた。 挫けそうになったこともあったが、仕事で出会った人たちに支えられたという。店舗の主任を経て、40歳で管理職(課長)になった。責任の重さに伴い、できることも広がり、次第に仕事が面白いと思うようになったという。「経費のコントロールや予算の作成、従業員の教育も担当しました。それから屋根の雨漏りの修理を手配したり」。5年後に副店長へ。「サービスカウンターやレジといった、お客さまと一番接する場所の責任者です」。少しずつ従業員をマネージメントすることを学んでいくと同時に、客の生の声を真摯に受け止め、サービスの向上や消費者のニーズへの対応を心がけたという。
 これまでの努力が認められ、2001年、店長へ昇格した。小規模な店舗の店長から少しずつ大型店舗へ、その都度ステップアップし、前職ではイオン九州最大の香椎浜店の店長を務めた。「小さな店の悩み、大きな店の悩み、それぞれを知っているので、その経験が現職に活きています」。
 2013年、部長職に昇格した。11店舗を束ねる南福岡事業部の部長だ。今度は長いスパンで物事を捉える経営者の視点が求められるという。そのために、消費者の変化を見据えて各店舗をどう運営していくか学んでいるところだ。数値分析力や折衝スキルを磨くことが課題だという。

女性が活躍できる社会へ

 現在、イオン九州では女性管理職の登用に力を入れている。課長以上の管理職のうち、女性はまだ全体の10%くらいだが、2020年までに25%を目標にしているという。「お客さまの8~9割が女性です。有能な女性社員も育っているのに、決定権を持つ人が男性ばかりという状況は良くありません。個人的には、特に食品のバイヤーに女性を増やしてほしいです」。メーカーとの金額の交渉があり、深夜や早朝に市場に行くことも多いため、基本的に男性が担当することが多い。だが、普段から料理をしているなど、生活者として共感できる人が売り場の陳列を考えるほうが、自然なものになると期待する。
 しかし、昇進を希望する女性はまだ少ない。「仕事が大変そうに見えるのかもしれませんね。やりがいや達成感が伝わるように、いきいきと働いている姿を見せることが大切ですね」と、自らを省みる。

人の成長に喜びを感じる

 現在、同社には、8時間の勤務に対し、5~7時間までの短時間勤務を選べる育児勤務制度がある。法律より優遇されており、子どもが小学校を卒業するまで取得が可能だ。「そんな制度がなかった時代、私の同期の女性社員は、仕事を続けたくても退職せざるを得なかった。それは会社にとってもよくないこと。育成した人に辞められるより復帰してもらう方が、新たに育成するより効率がいいんです。だから、産休育休制度をフル活用して、ぜひ復帰してほしい」。
 この仕事をしていて最も幸せな瞬間は?と尋ねると、「自分の部下だった人が課長や店長になること」と言う。「人と人はご縁ですから、一時なりとも関わりのあった人が伸びて行くことは、本当にうれしいですね」と、工藤さんは幸せそうに顔をほころばせた。   (2014年5月取材)

コラム

 「お休みのときはショッピングとか、邦画を観たり推理小説を読んだり」と、昨今は限られた時間でできる娯楽に限られる。「ゆっくり休めるようになったら、夫の実家に顔を出したいです。不義理が続いているのが気になって、申し訳なくて…」と、義理の両親の健康を思いやる優しい顔をのぞかせた。

プロフィール

佐賀県出身。九州大学文学部を卒業後、1981年、イオン九州株式会社(当時ジャスコ)に入社。1999年から課長、副店長を経て、2001年には店長に昇進。九州各県複数店舗の店長を経験し、2011年、イオン九州最大の香椎浜店の店長に就任。2013年9月、南福岡事業部事業部長に就任。2016年、ダイバーシティ推進室長、2017年執行役員兼ダイバーシティ推進室長、2018年3月から執行役員 人事教育部長に就任。

 

 


 

 


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