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田中 奈奈(たなかなな)さん   (2013年11月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

大川お番茶会代表/田中農園(いちご・アスパラ農家)

人と人の間をつなぐ「お茶のある時間」を届けたい

 大川市のいちご農家の長男と結婚した田中奈奈さん。恵まれた環境の中で、のびのびと子育てしながら、家で栽培しているレモングラス等を使った「やさい番茶」を加工販売する「大川お番茶会」を立ち上げた。自ら働き方を見出し、人と人の間をつなぐ「お茶のある時間」を届けたいと日々奮闘している。

農業への憧れ。そして結婚へ

 長崎県島原市で生まれ育った田中さん。高校卒業後は、小学校の教員を目指して岩手大学へ進学した。そこで知り合った山形出身の友人の実家に遊びに行ったことが今でも印象に残っている。「農家の娘さんだったんですけど、ご両親の雰囲気がすごく温かくて。その頃から、“農業っていいなぁ。” と思い始めました」と言う。卒業後は地元に戻り、小学校の講師として4年間働いた。担任も受け持ち、“子どもを育てる”ことにやりがいも感じていたが、「このままでいいのか?」と仕事や結婚、将来についていい知れない不安や焦りを感じていたという。そんな時、お見合いの話が舞い込んだ。「どんな人がいい?」と尋ねられると、真っ先に「農家の人がいい!」と答えた。

義父母との距離を縮めてくれた“お茶の時間”

 紹介されたのは、大川市でいちご農家の長男で、市役所に勤める男性だった。とんとん拍子に話が進み、28歳で結婚。憧れの“農業”をやれることになったものの、知らない土地での生活、初めての農業は驚きと戸惑いの連続だった。「義父母は本当に働き者で、朝から晩まで一緒に作業するのですが、言われるがままついていくのが精一杯でした。夫も外に働きに出ていますし、慣れないことばかりで疲れ切っていましたね」。そんな農作業の合間のほっと一息つける“お茶の時間”は義父母との距離を縮める大切な時間でもあった。緑茶の日もあれば、摘み立てのレモングラスティーを楽しむ日も。「わぁ。おいしい!」ふと畑に目をやると、義父が植えたレモングラスが生い茂っている。「これをもっと活かせる方法がないだろうか?」その想いが、のちに【大川お番茶会】を立ち上げるきっかけとなった。

やさい番茶の誕生。農業の面白さや可能性を再発見

 二人の子どもに恵まれてからは、子育て中心の生活に。そんな折、義母に誘われ、厚生労働省の雇用創造プロジェクト【九州ちくご元気計画】の研修に参加することに。「月1回の勉強会はとても刺激的でしたね。商品を磨くことや情報発信の大切さを学ぶうちに“レモングラスを使ったお茶を作りたい”とやりたいことがはっきりと見えてきました。よし!自分でやってみようとグループを立ち上げました」。
 こうして2010年、大川お番茶会研究会をスタート。講師のアドバイスを受けながら、どんなお茶を作るのか、コンセプトやネーミング・パッケージなどを試行錯誤しているうちに、周りにお茶の素材になりそうな野菜や穀物、豆類が豊富にあることに気がついた。無農薬で野菜を作っている生産者たちとのネットワークもどんどん広がった。そして約1年をかけて大好きな“ちくご”の旬を詰め込んだ数種類の【やさい番茶】を商品化することができた。
 無(減)農薬でたくましく育った野菜を旬の時期に収穫し、心をこめて焙煎する。季節の味わいを楽しめて、体にもやさしい【やさい番茶】は、地元のカフェや雑貨店をはじめ東京方面でも順調に取扱店が増えている。
 それだけではなく、地元や福岡都市部のデパートなどで、やさい番茶のワークショップも行っている。手間暇かけて育てた素材の話や、ブレンドによる味や香りの変化についての話は、楽しく学べると大変好評だ。また、地元の女子学生に向け、子育て女性の起業についての講演も行った。聞き手にとってわかりやすい話には、小学校で教えた経験が生かされているようだ。
 ここ数年は、子育てと農業、お茶の商品化に向けて、駆け抜けてきたと語る田中さん。「家族をはじめ、協力してくださった皆さんすべてに感謝しています。おかげで、農業の面白さや可能性を再確認できました。自分たちが育てたものを、加工して販売するって楽しいですよ」と瞳を輝かせる。
 今年からアスパラの栽培もはじめ、1反ほどの畑を任せられた。「次女も小学校に上がるので、子育ても一段落。ここからは腰を据えて、続けていきたいですね。ゆくゆくは、夫と一緒に農業ができるようがんばります」。周りにあるものを磨き、やりたいことを仕事に変えてきた田中さんの生き方は、農業女性だけでなく、子育て中の女性や学生にも刺激を与えている。
(2013年11月取材)

コラム

 カフェを巡ったり、イベントにでかけていろんな店主や作家さんたちと繋がるのが楽しいと話す田中さん。アクセサリーやコサージュ、お洋服の作家さんなど、何かを作っている方とおしゃべりしていると、不思議と目指している方向が同じで刺激になるのだとか。「ずっと繋がっていきたい人たちとの出会いを求めて、続けていきたいですね」

プロフィール

長崎県島原市生まれ。岩手大学卒業後、小学校教員を4年間経験し、大川市の農家の長男と結婚。家業を手伝いながら、2010年、大川お番茶会を設立し、筑後で採れる野菜をブレンドした「やさい番茶」の商品化、販売を開始。やさい番茶のワークショップや講師、イベント出店など、活躍の幅を広げている。2児の母。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【た】 【起業】 【農林水産】

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