【ロールモデル】
ロールモデルとは
嘉麻市商工会女性部 部長
「好きな言葉は『一灯照隅(いっとうしょうぐう)』や『和顔施(わがんせ)』」と話す嘉麻市商工会女性部長の永光祐子さん。その言葉どおり、周囲を照らし出すような存在感を持つ女性だ。嘉麻市から東京やドイツへと、フットワークも軽く活動する永光さんの半生はいかに。シャンと伸びた背筋に心地よい緊張感を覚えながら、インタビューは始まった。
高校を卒業後、西鉄バスのガイドとして働き、21歳で結婚。相手は6人家族の農家の長男で、結婚と同時に家族の食事の支度や家事をこなす生活が始まった。2児をもうけてからは子育てに追われながらも、「外の社会にも触れたい」と会社勤めを始めた。10年間に及ぶ営業の仕事の経験が30代の永光さんを仕事人として鍛えたという。その後、夫の会社設立を機に、取締役として経営に携わるようになった。
多くの親と同じように、「息子や娘には自分の好きな道に進んでほしい」と願い、子育てに力を注いだ永光さん。「私ももっと自分を豊かにしたいと思って、子どもが勉強する時間は、同じテーブルで一緒に勉強したんですよ」と笑う。
稲築町商工会(現嘉麻市商工会)の女性部長を引き受けたのは2007年。「子育てにかけてきたエネルギーをこれからは地域のために費やしたい」との想いからだった。それまでは地域活動に目を向ける余裕がなかったが、市内の施設や幼稚園などにゴーヤを植えるグリーンエコ活動(緑のカーテン)や、勉強会、地域行事への参加などを積極的に行っていくうちに、地域のことがよくわかるようになったという。そうして持ち前の明るい性格と行動力で、女性部のリーダーとして力を発揮していった。2011年に、のど自慢の出張番組が嘉麻市から全国中継されることになった時、「商工会女性部をPRするため、出場しよう」と提案。恥ずかしがるメンバーに対し、「歌は私が歌うから、みんなはいつも慰問で踊っているあの踊りで大丈夫」と説得した。10名余りで出場し、カラフルな衣装をまとって演歌を披露し、合格の鐘を響かせた。番組出場のおかげで、女性部の結束も強くなり、人脈の輪も広がったという。
以前から環境問題に関心があった永光さんが、筑豊地区の女性林業研究グループ会長の荒木光子さんと手をとって実現させたのが、地域の間伐材を利用して作った「もりのきしょうぎ」だ。「人のご縁ってすごいわよね。子どもも楽しめる将棋セットを作りたいという話をしていたら、娘の友人に『どうぶつしょうぎ』を考案した女流棋士がいることがわかったの」と、目を丸くする。2011年の4月、永光さんらは東京に、女流棋士・北尾まどかさんに会いに行き、「もりのきしょうぎ」の監修を依頼した。「木育」に共感した北尾さんの快諾を得て、将棋セットは夏に完成、嘉麻市でお披露目イベントも行った。さらに10月には3人でドイツ・エッセン市にも出向き、ボードゲームの国際見本市「エッセン・シュピール」にも出展した。「せっかく外国に行くなら、日本の文化をもっと知ってもらわなきゃ」と、キリリと着物を着こなして。
また「健康一番!かま体操」を企画したり、特産品プロジェクトチーム「カマダス」の一員として「嘉麻の釜めしの素」を考案したり。その発想力や行動力は日を追うごとにパワーアップしている。
「私は、自分にできることを果たしているだけ。お世話になった地域に少しでもお役に立てれば嬉しい」と語る。
女性へのメッセージを求めると、「まずは家族を大事にすること。やりたいことがあっても、家族の協力を得ないと何もできないでしょう。そのためには、相手を思いやって言葉を発することが大切ですね」と実感のこもった答えが返ってきた。
「やりたいことがあっても動けない時は、助走期間だと思って勉強をしておけばいい。いつか必ずチャンスがくるから。助走がないと、ホップ、ステップ、ジャンプって跳べないでしょう。今思えば、子育てが私にとっての助走だったのかもしれないわね」。
新しいプロジェクトに向け、永光さんはすでにウォーミングアップを始めている。
(2013年6月取材)
茶道を趣味とし、お正月には毎年着物を着るなど、日本文化をこよなく愛する永光さん。実は、風呂敷にノートパソコンを包んで持ち歩いている。インターネットで情報を得たり、フェイスブックで情報を発信したりと、パソコンは良き相棒なのだ。「徹夜で仕事をする時や、家の掃除をする時は、パソコンから流れるジャズやクラシックを聴きながらやっています」。風呂敷包みを抱えて、今日も永光さんは駆け回る。
飯塚市生まれ。地元の高校を卒業後、西日本鉄道に入社しバスガイドとして勤務。21歳で結婚し、嘉麻市へ。平成3年より有限会社永光産業取締役。平成19年に嘉麻市商工会女性部部長に。趣味は、茶道(裏千家)・太極拳(初段)など。
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