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若江 皇絵(わかえはなえ)さん   (2013年3月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

NPO法人 くるめ日曜市の会 理事長 はなえ矯正歯科院長

久留米のメインストリートに活気あるマルシェを!

 かつて栄えた久留米市の中心街に、もう一度にぎわいを取り戻したいと立ち上がった歯科医がいる。熊本県出身の若江皇絵(わかえ はなえ)さんだ。「久留米には魅力的なものが点在している。それらを集めて市場を開けば、絶対に人は集まる。自分が暮らす土地が、住む人にとっても幸せな場所であってほしい」。そんな想いからNPO法人を設立し、月に1度の日曜市を企画・運営している。

人や地域が元気になれる、高知の日曜市をヒントに

 「筑後川が流れ、緑あふれる久留米は、どことなく故郷の熊本県芦北町に似ていると感じました。この地なら間違いなく好きになれると思ったんです」。2008年、若江さんは、当時勤務していた久留米市内の総合病院近くに「はなえ矯正歯科」を開院した。「筑後川が育む豊潤な土壌、そこで採れる上質な野菜。久留米は福岡市とは違う独自の文化圏で、久留米絣やゴム産業など誇れるものがたくさんある」。若江さんは久留米の魅力をそう捉えた。散策ついでに訪れた飲食店などで、「以前は、一番街のあたりはとても栄えていたのに」と残念がる地元の人々の声に、胸が痛んだ。そんなある日、出張で訪れた高知市で地元の農産物を売る日曜市に出会った。まちの大通りが2キロほど歩行者天国になり、大勢の人々でにぎわっていた。「おばちゃん、これどうやって食べるの?」「塩でもんで、酢味噌で食べるとおいしいよ」。そんなやりとりを新鮮に感じた若江さんは、「久留米でもこんな市ができるのでは。八女のお茶、大川の木工品など、筑後地域の特産品を集めれば、博多からも客が呼べる市場になる」と思い立った。
 着目したのは、久留米市中心街にあたる西鉄久留米駅とJR久留米駅を結ぶ「明治通り」。「明治通りで、大きな産直市を開きましょう。歩行者天国にすれば新しく建物を造る必要もありません。地元の産物で人を呼び込み、まちを活気づけましょう」。2009年、久留米市の助成事業に公募し、プレゼンでそう呼びかけた若江さんの提案は「目標が壮大すぎる」と却下された。

まずは地元の人々に親しまれる市場を目指して

 若江さんは市役所の各課窓口や警察などを転々と回り、突破口を模索し続けた。2009年9月、賛同する仲間とともに、「NPO法人くるめ日曜市の会」を設立。商店街の店主らに日曜市のことを話して回るうち、地元の「ほとめき通り商店街連合会」の会議に誘われて参加するように。商工会議所の人々とも面識ができ、「そげんやりたいんやったらやってごらん」と協力を得られるまでになった。臨時的に産直マーケットを開催することからスタートし、2012年4月からは毎月最終日曜日に明治通りの歩道で開催するようになった。
 現在、月に一度の日曜市には、地元の新鮮な農産物や加工品、伝統工芸品、雑貨類など、約20軒の出店がある。今のところ、リピーターは徒歩や自転車で通える圏内の客。告知・集客の難しさに頭を悩ませる一方で、市に並ぶA級品の野菜に「よかもんば食べてもらわんと」という生産者のプライドを感じるという若江さん。「地元の人がいいものを食べて、『やっぱりこのまちが一番!』と思ってほしい」と目を輝かせる。
 だが、2012年は北部九州豪雨災害の影響で夏場に野菜がほとんどなく、楽しみに足を運んでくれた客を落胆させることに。地元の旬の野菜を安定して供給することが最大の課題。運営にかかる活動資金は、出店料と久留米市からの助成金でまかなっている。資金面の安定化も運営体制の課題のひとつだ。「市場の規模が今の2倍になれば、福岡市内にもPRできる」と張り切る。

人が好き、久留米が好き、仕事もまちづくりも志高く

 「肥後もっこすは気が強いと言われるけれど」と、笑いながら話し始めた若江さん。「久留米人にも同じ『素質』があると思うんです。心の奥に地域に対するプライドを持ち、言いたいことをはっきり言う。その心意気、嫌いじゃないんです」と、人なつっこい笑顔をみせた。
 仕事では、歯並びや歯のクリーニングなど「矯正」という分野で、歯の健康から心身の健康づくりに取り組む。歯科医としても高い目標を持ち、「世界で通用する一流の仕事をしたい」と、東京や大阪での勉強会にも積極的に参加している。「歯科医としては若いけれど、知識やテクニックは常にアップグレードしていきたい」と表情を引き締めた。
 「今は、仕事以外の時間やエネルギーを地域のために使える状況。歯科医という枠にとらわれず、自分の力を地域のために尽くせれば、私自身も幸せなんです」。華奢な体に秘めた情熱が、キラキラと輝く瞳からあふれ出す。
                                   (2013年3月取材)

コラム

登頂の達成感に魅せられて

 友人に誘われて初めて登ったのは大分県の由布岳。頂上までたどり着いた時の達成感とすがすがしさに魅せられ、山の虜に。2012年の夏には久留米青年会議所の青少年育成事業で、小学生・中学生らと富士山に登った。「朝、ご来光を見た瞬間、自然と手を合わせたくなりました。いろんなものが金色に光って、あっという間に温かくなった。神様がいるような気がしました」と、感激は今も色あせない。だが、若江さんの志は、富士山よりもっと高い。

プロフィール

熊本県芦北町出身。福岡歯科大学卒業後、九州大学歯学府博士課程修了・学位取得。日本矯正歯科学会認定医。聖マリア病院非常勤、今村矯正歯科非常勤を経て、2008年に「はなえ矯正歯科」を開院。2009年にNPO法人くるめ日曜市の会を発足させた。2012年4月から、毎月最終日曜に久留米市の明治通りで、くるめ日曜市を企画・運営している。2013年3月に久留米商工会議所より、「中心市街地の賑わい創り並びに地域の活性化に多大な貢献」をしたとして感謝状を贈られた。

 

 

 

 


 

 

 

 

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