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森 久栄(もりひさえ)さん (2013年3月取材)

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取材時:道の駅たちばな 総務企画課長

地元の人達の協力と女性の知恵で獲得した日本一

 2013年2月で8周年を迎えた「道の駅たちばな」。一昨年の『直売所甲子園2011』では優勝・農林水産大臣賞を獲得。見事、日本一に輝いた。直売所甲子園で、皆の思いを代表し熱くプレゼンをした、課長の森久栄さん。「道の駅たちばな」が、人と人の触れ合いを大事に地域の皆様から愛されるようになった背景には森さんの存在が大きい。いつも誰に対しても気さくに言葉かけをする森さんの人柄に惹かれて、また自然と会いにいきたくなる人達も多い。今回はそんな森さんにお話を伺った。

どうしても“ここにしかない”道の駅たちばなをつくりたかった!

 「直売所は作ったものをその場で渡せる場。採れたてを安心して食べることができる、そして素材が持つ本当の美味しさを知ってほしいのです」。そう語るのは道の駅たちばなの森久栄課長。ここでは採れたての筍を売場に出して、購入されたお客さまにはその場で大釜で湯がいてお渡しするサービスは大好評。もちろん道の駅たちばなのオリジナル。「筍を湯がいている時の、あの春の薫りを、かいでほしかったのです」と森さん。とにかくここには地元で生産された旬のものがとびきりの鮮度で並ぶ。
 「ここがオープンしたのは立花のお祭り『観梅会』にあわせた2月。この寒い時期、店頭に並ぶ野菜を考えていた時にどうしよう玉葱がない…ってなったのです。いや!でもここにしかないものを出そう!って。その時は地元の農家の方に冬野菜をたくさん作って頂きました」。森さん達の「ここにしかないものを!」の思いはオープン時から今も変わらない。

30年間農業をしていて感じていたこと 「美味しいものは美味しい時期に食べるのが一番」

 そんな思いは森さん自身が農業に携わっていた経験からくるもの。みかん、キウイ、筍を生産する現場で日々感じたことが、道の駅たちばなにも大きく影響している。
 立花はみかんの生産地。森さんも結婚後、30年間、そこに携わっていた。「採れたてのみかんは甘味も酸味もあってそれはそれは美味しい!でも、通常のルートだと出荷までに時間がかかるため、その美味しさを伝えることができないのです」。友人たちから「あんたが作ったみかんはどこに行ったら買えるの?」と尋ねられても答えることができず、生産者と消費者の思いが繋がっていない事に気付いたという。「旬のおいしさを届けたい」、「皆と楽しい農業をつくりたい」との思いから「作った人の直売所を作ろう!」と農家の仲間と決意。
 森さんをはじめとする農業に携わる人達の思いは地域の人たちを動かしていった。当時から八女市との合併の話がありこれから先、農家の人達、地元の人達の“立花町の自慢を残したい!”という思いと行政の支援で、道の駅事業がスタートしていった。
 「美味しいものを売るためにはそれを売る場所が必要だったのです。山間部に位置する立花町は観光地らしきものもない、シンボルもない場所。でも立花にはこんなに美味しいみかんや筍、キウイがある!だったらこの農業力をいかさなければってなったのです」。
 道の駅たちばながオープンするまでの2年間、森さん達はあらゆる直売所や道の駅を視察に行き勉強に励んだ。「朝は6時に家を出て、夜は11~12時に戻る生活が続きました。家族の理解と地域の方達の協力があったからこそやってこれたのだと思います。本当に感謝しています!」。

女性の知恵を活かした接客で皆がここで笑顔になって帰ってほしい

 ここには旬のものに限らず、ここにしかない雰囲気がある。「ここに来ることが楽しい!って言われたいし、何よりここに来て笑顔になって帰ってほしいですね。私たちは一つの商品の背後にあるストーリーも知ってほしいと思っています。ものを作った人の背景がみえるような販売の姿を目指しています。だからこそお客様とのコミュニケーションを大切にした接客をしていきたいですね」。
 森さんの思いを一番に理解してくれる同じ誕生日で同じ歳の道の駅長と明るいスタッフの方たち。明るく飛び交う会話が道の駅全体の朗らかな雰囲気を醸し出している。
 「女性が持つすべての知恵を活かせるのが直売所だと思っています。女性は一番の消費者でもあります。これからは女性の知恵をつかって食育にも取り組んでいけたらと思っています」。
 2010年に立花町は八女市と合併。森さんをはじめ地域の人達の“ここにしかない”道の駅づくりが「たちばな」の名をしっかりと根付かせている。

(2013年3月取材)

 

コラム

 森さんのホッと息を抜く時を尋ねると「鳥のさえずりを聴いたり野草を探したり…山でボーッとしている時が好きなんよねぇ」。と穏やかな表情。「あ!手芸や編み物をしている時も好きですね。うちの子どもの手提げ袋も全部手作りでしたよ」。30年間、農業をしながら男の子3人を立派に育て、現在は3人のお孫さんにも恵まれている森さん。孫が遊びに来た時のために自宅はおもちゃでいっぱいとのこと。孫の近況はお嫁さんとのメールのやりとりで。携帯の待ち受け画面も可愛いお孫さん♪

プロフィール

八女郡広川町出身。農家の男性と結婚し、子育てと農業に専念。その後、生産者グループ及び部会などでの活動に参加。立花町JA女性部フレッシュミズ部長就任。福岡県女性農村アドバイザーに認定され、5年間農業、農村の活性化等に取り組み、地域のみなさんとともに活力ある地域づくりを目指す。また、立花町農産物等直売所設立に向け、準備委員会を設立。利用組合の立ち上げ、地域への啓発、直売所の営業開始への準備に取り組んだ。2005年2月から2014年9月まで、道の駅たちばな勤務。日本ベジタブル&フルーツマイスター取得。福岡県花のアドバイザー認定。

 

 


 

 

 


キーワード

【ま】 【働く・キャリアアップ】 【農林水産】 【国際・まちづくり】

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