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津田 利枝子(つだりえこ)さん     (2012年12月取材)

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幼児教育研究 ゆめコロリン

すべての子ども達の学びを保障したい!

 体験を通して生活に必要な学習を身に付けさせる活動を進める「ゆめコロリン」代表の津田利枝子さんは、田川市を中心に、県内外各地で子どもの学びのサポーターとして活躍している。入学前までに必要なことを身に付けることで、入学後の学習習熟度が格段に上がるという津田さん。エネルギッシュに活動する背景には、地域の学力を底上げしたいと願う熱い思いがあるからだ。

子どもを取り巻く環境の変化

 津田さんの活動は、子どもたちを対象に、時計の読み方や、重い、軽い、の違いなどを身近な道具を使って教える講座を開くというもの。「重い・軽い・釣り合う」 という "言葉と現象の一致” に気づいてもらう事に重点を置いたワークショップを行っている。また、学校に上がると、必ず必要な時間の感覚も、入学前に身についていれば、学習へのとりかかりもスムーズになる。津田さんがこの活動を始めたきっかけは、これまで、家庭の中や地域の中で自然と育まれていた「生活に必要な力」の低下を懸念してのことだった。「ある日、小学校の先生から『最近は時計に針があることを知らない子どもがいる』という話をきき、驚いたんです。時計の読み方を教えるのにも苦労しているということでした」。デジタル時計しかないという家庭も増えてきた。低学年で学習する時計の計算だが、アナログ時計の読み方が分からず問題すら読みとれない状態となる。「自分の子どもを振り返ると、短い針と、長い針の法則を、家の時計を見ながら無理なく自然に覚えていったのですが、自宅にアナログ時計が無いのでは、知らないのも当然です」。時計学習で算数につまずく子どもも少なくない。「時計の読み方は、問題を解く前の段階、ここでつまずいて算数が苦手になるなんて、なんだかもったいないですよね」。教師との会話をきっかけに、津田さんは地域の子ども向けに数字カードや、時計の教材を使ったゲームで、数の感覚、時計の読み方を習得させる講座を開くようなっていった。

親として関わる公教育

 津田さんは、大阪生まれの大阪育ち。父親は警察官という厳格な家に育った。大学を卒業後、企業に就職したが、親の勧めで数年後にはお見合いをして結婚と同時に退職。田川に移り住んだ。4人の子どもを授かった津田さんは、育児に奮闘する日々を送っていた。3人目の子どもが小学校高学年になった頃、PTA役員を務めるようになった。そして平成11年、小学校のPTA会長を任されることになった。「ずっと男性がされてきたんですが、この年はどなたに声をかけても、なり手がいなくて、それで、私にお話がきたんです」。長年、子どもたちが通っている小学校、先生たちともよいコミュニケーションが取れる関係になっていた。津田さんが教師たちの言葉を耳にするようになったのはこの頃だった。

 「学校と地域が協働で教育を見つめ直す、そんな取り組みができないかと思い、始めたのが『ゆめコロリン』の活動です」。世の中では、地域による学力格差が取り上げられるようになっていた。学力の差という問題は、津田さんの暮らす地域でも、無関係とはいえない状況だった。押し付けではない学習への意欲を自然と生み出したい、そんな気持ちで楽しみながら学力土台づくりとなる教材を独自に作成していった。「1年生に入学すると、嫌でも5段階で“評価”されるようになります。すべての子どもたちに教科につながる経験をさせることで『やったことがある、知ってる!もっと知りたい、上手になりたい!』という知的好奇心を芽生えさせたいと思ったんです。子どもは経験を通して驚くほど学んでくれます」。まず目を付けたのが重さの学習。安全面への配慮から、シーソーなどの遊具が撤去されている公園が多い中、重さについての認識ができていない子どもが増えたという。「昔はシーソーで遊んで、重いと下がるんだ、軽いと上がるんだということを感覚的に身につけていたと思います。今はそれがなかなかできない。だから、目で見て、体験させたいと思いつきました」。物干し竿を使った天秤遊びに、子どもたちは夢中になった。洗濯物を干せば重くなり、竿は下に傾き、取れば上がる、このゲームを、今度はお菓子を吊るしてやってみる。上に傾いている竿につるされたお菓子を取るには、どうしたらいいのか。重さを与えて竿を下げる。反対の重みを取って、お菓子の側を下げる。子どもたちは、頭と体をつかって色々な事を考え、試してみる。こうして、自然と重さの感覚を身に付けていくのだ。これが重さを通しての“言葉と現象の一致”の勉強。こども達の目は輝いていた。「私がやっているのは全て自己試作のカリキュラムですが、『就学前の遊びの全国統一保育カリキュラム』のたたき台となるような物になれたらと思っています。活動を通して、こうした学習の必要性を訴えていきたいです」。

地域の子どもが『学んで良かった』と思えるように

  「私は教育学を学んだ専門家ではありません。でも、地域の子どもたちの為に、何かをしたいと強く感じたんです」。ドライアイスを使った実験や歴史クイズも取り入れ、父親や祖父母の参加も増えていった。活動は地域を越えて受け入れられ、保育園や幼稚園をはじめ自治体などからも講座をして欲しいと声がかかるようになり、最近では小中学校や、幼稚園、保育所の教員研修会に講師として招かれるようになっている。「遊びを通して意味ある体験をすると、もっと知りたい!もっと学びたい!という気持ちが育まれます。『学ぶって楽しい』って思ってくれると嬉しいです。ひたむきに前を向く人達に寄り添い応援したい!秘められた可能性を伸ばしたい!という思いで活動しています」。自身の子どもが巣立った今でも、地域の子どもたちのためにとライフワークとしてこの活動を続けている。津田さんの熱い思いは、確実に田川市の教育力、地域力を伸ばしているように思えた。

                                                                                                      (2012年12月取材)

コラム

 動くことが大好きだという津田さん。体力維持のためにスイミングとウォーキングをしているそう。先日は田川の物産を見ながら周る金川中学校ウォーキング大会12キロコースにも参加しました。独立している子どもたちとも家族旅行に出かけたりと、私生活も大いに満喫中です。癒されるのは花と触れている時間。趣味のガーデニングと子どもたちの笑顔が、津田さんの元気の素になっています。

プロフィール

 関西外国語大学 英米語学科卒業。英語科中学1級、高校2級の教員免許を取得。平成11年田川市立金川小学校 PTA会長になり、田川市教育総合推進地域事業 推進委員を務める。平成12年には田川市 同和教育研究大会において「学校と家庭・地域の連携」についてPTA会長、保護者として報告、その後同じ報告で全国でも登壇。平成14年、田川市地域活動指導員として同市教育委員会 生涯学習課 学習振興係に在籍、平成19年田川市立弓削田中学校の英語科 非常勤講師として勤務する傍ら、就学前の子どもたちのためのワークショップ『わくわくドッキリDAY!』を開催、幼児教育研究「ゆめコロリン」主宰。NPO法人田川ふれ愛義塾理事、福岡県警ハートケアスタッフ、少年補導員なども行っており、青少年の立ち直り支援にも力を入れている。

 

 

 

 


 

 

 

 

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