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外平 友佳理(そとひらゆかり)さん (2012年10月取材)

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到津の森公園 獣医師、学芸員

動物も人間ももっと幸せになれるように

 北九州市にある「到津の森公園」は、自然あふれる環境の中、約100種500頭の動物がのびのびと暮らす動物園。2001年の開園から、獣医師として動物たちを見守ってきたのが外平友佳理さんだ。

小さいころから動物に関わる仕事を志す

 幼いころから、トカゲやカエル、カメなどを捕まえては飼っていたという外平さん。家族は特に動物好きでもなかったが、「私には自然な感覚でした」というから、動物愛護の精神は素質なのかもしれない。「到津の森公園」の前進である「到津遊園」に何度も足を運び、『シートン動物記』に感動して、動物学者に憧れていた。
 高校生のときの話だ。羽が折れて飛べない野鳥のツグミを見つけた。近くの動物病院に駆け込んだが、「犬と猫しか診ない」と断られた。自宅に連れて帰るも、翌朝には息絶えて…。「誰のものでもない動物たちの命を救いたい」、外平さんが獣医師を志した瞬間だった。
 大学の獣医学科で学び、長崎の動物園に就職。園初のたった一人の獣医として、試行錯誤しながら様々な治療にあたっていた。3トン以上もあるカバの歯の治療にも成功した。麻酔を用いての治療は危険も伴うので、新人医師には到底無理とされていたものだった。そんな折、人気者だったラッコ3頭が死亡、目の前の動物を救えない現実に直面して、一から学び直すことを決意。園を退職すると、大学の動物病院をはじめ、動物にかかわる仕事を転々とした。いつかは動物園に帰る日を夢みながら。

故郷の動物園で働く喜びをかみしめて

 園を離れて4年、「経営難で閉鎖していた到津の動物園が生まれ変わり、獣医師を募集する」という知らせが飛び込んできた。「まさか想い出の動物園で働けるなんて。胸がいっぱいになりました」。開園準備が進む園で、動物たちは新居への引越や工事によるストレスで病気がちに。昼夜を問わず、獣医師としての仕事に打ち込んだ。開園まであと2か月に迫ったとき、40年間みんなに愛されてきたカバが老衰のため、治療の甲斐もなく息を引き取った。「あのときの悔しい気持ちは、今でも忘れていません。動物園の動物の命は、動物自身だけでなく、訪れる人のためにもあるのだと気づかされました」。

 「野生で生きる術として、動物はぎりぎりまで弱みを見せません。病気とわかったときは手遅れのことが多い」と外平さんはいう。そのため、栄養・衛生管理や予防接種を徹底しており、園の動物病院で治療を受ける動物はほとんどいなくなった。死亡した動物の死因を究明して、あとに活かすことも重要な任務だ。最近は動物も高齢長寿になり、介護が必要に。「年老いた動物たちに寄り添い、どうすれば快適に暮らせるか日々考えています。動物たちから、いつも多くのことを教えてもらっています」としみじみ語る。
 一方で、園外の動物に向き合う機会も多い。2年前まで、傷ついた野生の鳥などを園で受け入れ、野生に帰すための治療やリハビリを行ってきた。その数は、実に年間400件。また、同じ北九州市にある「ひびき動物ワールド」でカンガルー類200頭ほどの往診もしている。

地域と共に生きる動物園を目指して

 外平さんは現在、自分と飼育展示員9人から成るグループのリーダーを務める。獣医師としての仕事はもちろん、班員の仕事やスケジュール管理、動物の世話、ふれあい動物園でのえさ売り、お客さんが乗るロバひきなど、担当業務は多岐にわたる。
 外平さんが特に力を入れているのが、園と地域を結ぶための活動だ。園に持ち込まれる動物が負傷する原因は、窓への衝突や交通事故など、人間の生活に関わるものがほとんど。そのため、「野生動物との付き合い方」という冊子を作成し、学校や自治体に配布。小中学校をはじめ、大学や公民館などでの講演は評判をよび、各地から声がかかる。この夏には、障害のある子どもたちを園に招くイベントも開催した。「動物の話は命の大切さから人権、性、平和など、幅広いテーマを語ることができるんです。学習、レクレーション、福祉の3つを軸に、園と地域をつなぐ活動を展開していきたい」と構想を力強く語る。

 地域の学校にモルモットを貸し出すプロジェクトも進行中。「たった1匹の存在でも大きくて、子どもの動物への接し方が違ってきます」と目を輝かせる。「でもね、単に動物を大切にという話じゃないんです。動物との関わりを通して、他者を思いやる心、考える力が育まれ、自己肯定にもつながる。心が豊かになるんですよ」と真意を明かす。
 さらにもう一つ、温めている想いがある。女性獣医師や飼育員のネットワークを作り、パワーをつけること。そのために、女子会を立ち上げた。「獣医や飼育の仕事は、動物への深い愛情が根底にあり、女性に向いていると思うんです。でも、勤務体系がハードになりがちで、プライベートとの両立が難しいことも…。プライベートと仕事を両立させて頑張る女性にエールを送りつつ、ひっぱっていけるような存在になりたい」。
 明るくはつらつとした外平さん。獣医師の枠にとらわれず、楽しく熱く、想いをカタチに。動物と人への限りなく深い愛情を胸に、活躍のフィールドはどこまでも広がっていく。 

                                   (2012年10月取材)

コラム

わたしの大切な時間

外平さんの休みは基本的に週休2日のシフト制で、職業柄、なかなか連休がとれないという。それでも趣味を聞いてみると、「旅行に山登り、仏像鑑賞、あとはペットのウサギと戯れたり、お酒を飲んだりするのも好きですし…」と話題は尽きない。「これじゃ体、壊しますよね…」と自らで突っ込みつつ、とても楽しそうに語る姿が印象的だった。

プロフィール

大阪で生まれ、4歳のとき北九州市へ。戸畑高校、宮崎大学農学部獣医学科を卒業後、「長崎バイオバイオパーク」へ就職。3年で退社後、大学の動物病院での研修医、企業での犬猫用療法食の営業、大阪の動物病院勤務を経験。2001年、「到津の森公園」に就職。2004年、到津の森公園教育プログラムの立ち上げに携わり、企業や地域、学校などで臨時講義も行う。園と地域を結ぶための活動を積極的に展開中。日本野生動物医学会理事をはじめ、農林水産省獣医事審議委員(2008年~2012年)等、園外での役員も多数務める。

 

 

 

 


 

 

 

 

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