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吉水 請子(よしみずしょうこ)さん (2012年10月取材)

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極東ファディ株式会社 取締役 オムニチャネル戦略本部 副部長
(取材時:コーヒー事業推進室長兼ブランディング統括マネージャー)

失敗のエッセンスから成長が生まれる気がする~求められていることが分かった人に扉は開かれていく~

 コーヒーの芳しい香り漂う極東ファディのオフィス。コーヒー事業推進室室長兼ブランディング統括マネージャーの肩書を持つ吉水請子さんを訪ねた。しとやかで、物静かな雰囲気の吉水さん。2011年には北九州市立大学大学院にてMBAを取得。論文はその年の最優秀論文賞である『K2BS賞』に選ばれた。遅咲きの桜だと話すご本人だが、どんな歩みがあったのだろうか。

順風満帆に思えた学生生活から人生初の挫折へ

 北九州市出身の吉水さんは、高校卒業後、東京の大学に進学、アナウンサーの仕事に興味を持ち、放送サークルなどで腕を磨いていた。ところが、満を持して挑んだ採用試験では、あっけなく不採用の通知を渡されてしまった。「当時、私はオール・オア・ナッシングという感じだったので、自分が折れた気がしました」。家族の勧めもあり、内定が出ていた他の就職先も辞退して実家に戻ることにした。
 吉水さんの実家は代々続く浄土宗のお寺。周りの女性親族は皆、年ごろになれば結婚していくという状況だった。吉水さんの両親もそれを望み、実家に戻ると、“しばらく家の手伝いをして、お見合いをして結婚”というレールが引かれはじめていた。家庭教師などのアルバイトの傍ら、進められるお見合いを次々と受けて行った。どの人も素敵な人ではあったが、結婚に踏みきる気持ちの切り変えができないまま、時だけが過ぎて行った。
 そして、気が付けば12年と言う歳月が流れていた。「何の名前も持たず、取り残された気がしました。こうやって一個人として生きていくのかな?と思いました」。そんな時、ふと訪れたのがハローワークだった。ここで、吉水さんは社会に出るための一歩を歩み出すことになる。たまたま求人のあった極東ファディ株式会社の一般職へ応募した。社会経験無というユニークな履歴書に、採用陣も興味を惹かれた。「物珍しくて採用されたんだと思います」。

集まったのは失敗のエッセンス

 こうして入社した吉水さんだが、入社後は失敗ばかりを重ねていた。取引先に渡す資料を裏紙で印刷してしまったり、赤ペンを入れなくてはいけない書類をそのままの状態で渡してしまったり。次から次へと失敗のエッセンスばかりが集まった。これを分析すれば、なぜその失敗が起きたのか、解決策に繋がるかもしれない。そう考えた吉水さんは、失敗するたび、ノートに書き記すようにした。この『失敗のエッセンスノート』のおかげで、見る見る間違いがなくなった。そしてもう一つ、大切なことに気が付いた。「最初はお茶くみ、お掃除、コピーなど、言ってみれば末端の仕事ばかりでした。でも、これを頼んだ人がどんな意図で自分に頼んでいるのか、それが見えたらとてもスムーズに仕事ができるようになりました」。コピーを頼まれれば、何に必要な資料なのか、どこに送る資料なのかなどを考えるようになった。コピーの仕事は会社のどの部署からも頼まれる。こうしてコピー取りをするうちに、会社の中がどう回っているのかが分かるようになっていた。「書類作りを頼んできた社員が、万が一お休みしても、自分で資料をつくれるようになろうと思いました」。

空白を埋めるため飛び込んだMBAコース

 4年後、吉水さんは総合職に転身することになる。任されたのは、社長室秘書と人事総務、採用担当の仕事だった。この時も、何を自分に必要とされているのかを考えるようにした。自分に求められることが分かると、仕事は一段とはかどり、やりがいも生まれてきた。ところが、順調に見えるこの時期も、吉水さんの心の中には影のようなものが差していた。「空白の12年間」。このことから解放される道を探し続けていた。「何もしていなかった時間があまりにも長くて、時計を早く回したい一心で働いていました。どうしたら、12年間分の空白を埋められるのか、そればかり考えていた気がします」。そんな時、目に留まったのが北九州市立大学のMBAコースの話題だった。現場で働きながら、現場に役立つことを実践的に学び、高めることができるこのコースに、迷うことなく飛び込んだ。授業は夜間と土曜日。お客を社員と考える「インターナルマーケティング」について考察を進めた。3年後、MBAを取得、論文はその年の最優秀論文賞を受賞した。
 今、吉水さんに任されているのはコーヒーの仕入れから、販売に関わる全てのラインについての企画業務や広報業務など。福岡銀行本店のカフェ事業や、カタログギフト事業など、活躍の場はどんどん広がっている。「働く場所が与えられたことを幸せに思います」。前を向き歩み始めた吉水さんの時計は、未来へと時を刻み始めているようだ。

                                 (2012年10月取材)

コラム

 プライベートで外出中でも、お店に入るとついついスタッフの配置や人数などが気になってしまうほど仕事熱心な吉水さん。そんな吉水さんのホッとする瞬間は、寝る前に化粧を落とす時間。クレンジングクリームを塗って、くるくると顔をマッサージしている間は、その日のことを振り返ったり、何も考えずに気持ちをリラックスさせたりしているそう。毎晩30分はこうしてゆったりとした気持ちでお手入れをしている。この時だけは「時間の流れが変わる気がします」。吉水さんにとっては、翌日へのエネルギーを貯めるひと時のようだ。

プロフィール

1989年早稲田大学第一文学部哲学科を卒業。アナウンサーを目指すもかなわず、家庭教師をしながら家事手伝いとなる。2001年、ハローワークから一般職採用で極東ファディ株式会社へ入社。2005年総合職へ移行、社長秘書並びに人事総務、新卒採用担当となる。2008年K2BS 北九州市立大学大学院にMBA取得を目指し入学。2009年コーヒー事業推進室長兼ブランディング統括マネージャー。2011年MBAを取得。論文が『K2BS賞』に選ばれる。2014年執行役員 マーケティング本部副本部長を経て、2015年取締役オムニチャネル戦略室長兼マーケティング部長に就任。 
社外では、北九州市立大学MBAアドバイザリー委員、北九州市立大学COC+事業外部評価委員、北九州市ワークライフバランス活性化協議会幹事も務めている。

 

 


 

 

 


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