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奥野 美代子(おくのみよこ)さん (2012年7月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

福岡県認定農業者協議会女性部会 前会長

「知識の向上が意識を変える」~農業女性が自ら学び、社会参画へ一歩ずつ~

 内閣府「女性のチャレンジ賞」平成24年度の受賞者に奥野さんが選ばれた。
農業分野で女性の経営参画を推進し女性農業者のネットワーク構築に長年尽力してきたことや、JA女性部加工部に起業を働きかけ弁当屋の開業を支援するなど、女性農業者の活躍の場を広げ地域の活性化にも貢献してきたことが評価されてのことである。
 70歳という年齢は農業の世界ではまだバリバリの現役世代。「私の基本は田んぼや畑やハウスで農作業に直接携わる人たちの中にあります」と今も現場主義を貫き、大豆を中心とした農作業を続ける日々だ。
 福岡県には現在約2700名の認定農業者(農業生産によって生計をたて、市町村によって農業経営計画が認められ活動している農業者)がおり、ほとんどが男性である。その福岡県認定農業者協議会に「女性部会」が立ち上げられたのはようやく昨年のことで、奥野さんは会長を務めている。県単位での交流の場に女性の姿が見られるようになったのは実はごく最近のことなのである。

「女の階段」

 奥野さんは兼業農家の生まれ。結婚したのは稲作と酪農を営む専業農家の男性だった。
今から40年前のある出来事がきっかけで奥野さんは農業女性のための活動に力をいれるようになった。
 日本農業新聞に「女の階段」という投稿欄がある。当時そこに寄せられるのはいつも女性の泣き言ばかり。そうした投稿にうんざりしていた頃、「泣いて慰めあってばかりでどうする! なんとかならないの!?」という投稿が目に留まり心を打たれた。そしてそう感じていたのは奥野さんだけではなかったのである。呼応する投稿が次々と掲載され、それはやがて大きなうねりとなり、形となった。
 当時、農村女性問題に声を挙げ国際的にも活躍していた丸岡秀子氏の講演会が日本農業新聞社主催で開かれた。会場となった東京に全国から約250人の女性が参加。自由になるお金も時間もほとんど持たなかった農家の女性たちが「なんとかしたい!」という強い思いのもとに必死に旅費を工面して集まったのである。奥野さんも夜行列車に乗って参加した。
 そこで発足した『女の階段』愛読者の会は現在も続いており、農家の女性達が積極的に声を上げている。各地域にはこの『女の階段』を元に「回覧ノート」のグループが作られ、農家の女性たちの思いがノートに日々綴られている。奥野さんはそのグループの代表者として全国集会の企画運営にも携わり愛読者の会の会長も9年間務めた。3年に一度、各地で開催される全国集会には約350名もの女性が参加するという。

「一万円」がやっと・・・

 高度経済成長の時代、農家は銀行からの融資、国や県からの補助金も手厚く、年単位どころか月単位で次々と大規模化していった。その主役だったのは男性。酪農家の収入は組合を通じて一家の預金通帳に入る。通帳の名義は家長の男性で、現金も含めて一家のお金は全て男性が管理し、女性(妻・母)が現金を持つことはほとんどなかった。
 そんな慣習が長く続いていることに疑問を持ち、奥野さんは組合に「毎日頑張っている女性に月1万円をください」と交渉し実現した。こうでもしなければ農家の女性が自分で自由に使えるお金を持つことが出来なかったのだ。今から30年ほど前の話で、当時は全国的にも画期的な取り組みであった。こうして農家の女性の農業経営に対する責任や役割も少しずつ大きくなっていった。
 1991年に「福岡県女性農村アドバイザー」の制度が発足し、奥野さんがその第一期生に認定された。多くの仲間たちと農業技術や経営に関することはもちろん、社会人としての基本的な常識も学んだ。OBとなった今もその交流や活動は続いている。
 また、「元気な筑豊を目指す農業女性の会」を設立、女性の農業委員誕生に大きく貢献し、女性が地域社会参画へ踏み出す大きな一歩となった。
 福岡県が地域や企業で男女共同参画の推進役となる女性育成のために行っている海外研修事業「女性研修の翼」にも参加。アメリカ・カナダでの研修を体験し、国内だけでなく海外にも目を向けることで、より広い視点で女性の社会参画を考えることのできる機会となった。

頑張る女性を応援する

 「知識を身につけていくことも農業女性にとって必要、農業分野で女性が活躍していくのはまだまだこれから!」という奥野さん。ご自身の役割は、今までの道を粛々と歩み、地域の農業女性のよりどころとなることだと言う。
「農業生産だけで生計をたてていくことはとっても苦しいんです。様々な困難に直面することだって多い。何か問題が起こった時に相談できる人がいること、いつもどこかで見守ってくれる人がいるという安心感が、この厳しい環境の中で農業に従事する女性達の支えになっている」と奥野さんは考えている。
                                    (2012年7月取材)

コラム

私のオフタイム

 大家族で暮らす奥野さんが大切にしているのは「ひとりで過ごす時間」。
東京へ行く際には時間の余裕があれば飛行機ではなく新幹線を選び、ゆっくりとコーヒーを飲み、本を読む時間を楽しんでいる。
また、酪農を営んでいた時代はペットを飼うことなど想像できなかったのが、今は孫が貰ってきた犬の散歩係りに・・・。その日に起こった出来事や嬉しかったことなどを散歩しながら犬に話しかけるのも癒される時間なのだとか。

プロフィール

 飯塚市(旧:筑穂町)の生まれ。「福岡県女性農村アドバイザー」の第一期生。現在はOBとして活躍。1999年に「元気な筑豊を目指す農業女性の会」を設立し、女性の農業委員誕生へ力を注ぐ。「女性農業大学」の講師も務め、農業で生計をたてる女性のネットワーク作りや、農業分野での女性の経営参画を推進。2011年1月~2013年8月「福岡県認定農業者協議会女性部会」会長。2012年「女性のチャレンジ賞」(男女共同参画大臣表彰)受賞。

 

 

 

 


 

 

 

 

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