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在日米国大使館 総務部 運輸課 スーパーバイザー
在福米国領事館で首席領事のドライバーとして活躍する岡村さん。在日米国大使館・領事館始まって以来、初の女性首席ドライバーとなった彼女は今、妊娠9か月。仕事、生活、今どんなことを思いながら働いているのだろうか。
在福米国領事館のプライマリードライバー。首席領事はもちろん、要人の来福の際、公用車のハンドルを握るのが岡村さんの仕事。目的地までいかに安全に、素早く領事を送り届けられるかが求められている。しかし、それだけではない。ハンドルを握るということは、命を守るということ。重大な責任が岡村さんの腕にかかっているのだ。仕事を始めたころ、在日米国大使館・領事館初の女性公用車ドライバーに、周りの視線が注がれた。領事たちが会合に出席している間、ドライバーたちは駐車スペースで待機する。待ち時間は自然とドライバー同士の交流が始まる。狭い世界、岡村さんのことはすぐに噂になった。そして、気が付くと他のドライバーたちが“見物”にくるようになっていた。「はじめのうちは、窓をコンコンと叩かれたりして、人が見に来ましたよ。女にできるわけがないとか、茶化されることもありましたが、“女だからできない”なんてないと思って頑張りました」。驚いたのはアメリカ本土で行われた世界中で仕事をする米国国務省首席ドライバーを集めての講習訓練でのこと。日本初の女性公用車ドライバーは、なんと世界でも3人目の異例のことだったのだ。「一緒に日本から訓練を受けに行った男性ドライバーと、夫婦かと思われたりしました。“私もドライバーです”というと、ビックリされました」。銃を向けられた時どうするかや、前方を車両でふさがれた場合の突破の仕方など、アクション映画さながらのシチュエーションの実施訓練も、持ち前の負けん気の強さでこなしていった。
「留学をきっかけに、アメリカの行政に興味をもち始めました。アメリカの行政機関で働けたらと思っていました」。大学を卒業後、いったんは地元の県庁で働くが、若いころの思いが捨てきれず、アメリカに移住することを決意。アメリカ国内で働くようになった。若く、好奇心旺盛。2、3年ごとに色々な州へと引っ越し、行く先々で働く場所を獲得していった。数年後、一人目を出産。これを期に、一度は仕事を辞めた。しかし、訳あってシングルマザーとなり、生活の為、働く先を探すことに。「たまたま領事館で募集があったので、受けることにしました」。そして、ここでも道を切り開く。東京の在日米国大使館で契約職員として働き始めた。その後、2010年8月、300人近くが受けた在福米国領事館のプライマリードライバーの試験に合格、総務部に正規職員として採用されることとなった。「体力勝負の仕事ですが、とても楽しく働いています」。
とはいえ、ドライバーの仕事は出張もある。幼い子どもを抱えて、どのように乗り切っているのか。「私はアメリカでの職歴が長かったので、現地の女性の働き方を見てきました。彼女たちがベビーシッターなどを上手に利用していたのを思い出し、私もベビーシッターのサービスを利用するようにしました」。日本ではまだまだ馴染の薄いベビーシッター。アメリカの女性はもっと気軽に利用して、キャリアと生活をやりくりしているという。「アメリカの働く女性達には、自分が働くことで、子どもによい環境、教育を与えることができる、そんなプライドがある気がします。日本では今の時代、人によってはキャリアを大切にしたいから子どもを持たないという考えの人もいるようですが、私は逆。子どもがいるから、頑張れている気がします」。
そんな彼女も、今年1月、新しいパートナーと出会い結婚、お腹には小さな命が宿っている。「日に日に体はきつくなりますけど、やめたらいけない!と思って頑張っています。首席領事はじめ、周りの人たちも“僕たちのエンジェルが産まれるのだから”と、気づかってくれています。もしもの時は公用車で病院に行きなさいとまで言ってくれたりと、まるで家族のように温かく見守ってくれています」。こうした職場の理解のおかげで、安心して働けているそうだ。だからと言って仕事の手は抜かない。その代わり、長距離の運転など、どうしてもできない仕事をリスト化し、医者からサインをもらい、できること、できないことを明確にした。このリストがあれば、周りもどこを手伝えばいいのかが分かり、仕事も円滑に進む。「常に前を向いて生きてきましたが、人生にはなんでもタイミングがあると思います。なんでもうまくいくタイミング、待つタイミング。そのタイミングをしっかり見極めれば、時期は向こうからやってくる気がしています」。年末の出産後は産休に入る岡村さん。その時々、自分の場所をつかみとり、立ってきた彼女は、人生の波をしっかりと捉えて進んでいるように見えた。
(2012年10月取材)
体を動かすことが好きな岡村さんの趣味はヨガ、ピラティス、サーフィン。夏には糸島の海で波と戯れているそう。「サーフィンは自然と一体化している気がしてすごく好きです。全てが海まかせで、自然の中ではなんて自分は無力なんだって、思い直させられ、新しい自分になれる気がします」。来年の夏は、ベビーの海デビューと、長女のボディーボードの手ほどきができたらと、にこやかに語ってくれた。
(写真は岡村さん撮影)
高知県出身。大学を卒業後、高知県庁で臨時職員として働いた後に渡米。13年間、アメリカでキャリアを積む。その後、在日米国大使館で契約職員として働き始め、2010年8月、在福米国領事館総務部の正規職員となる。在日米国大使館・領事館内で初めて、そして世界では3人目の女性公用車ドライバー。
キーワード
【あ】 【働く・キャリアアップ】