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Misato食育サロン 代表
各市町村には、農地利用の調整などの役割を担う「農業委員会」という行政委員会が存在する。男性が多いその組織の中で、大野城市には、異色の若い女性がいると聞いて取材した。菓子工房「LeBonheur」のパティシエ、Misato食育サロンを主宰するなど食に関する幅広い活動が注目されている古賀美里さんが、その人。
2011年7月、大野城市に若い女性農業委員が誕生した。しかし委員12名のうち女性はわずか2名。「男女平等」とはいうが農業関係の女性を取り巻く環境は、まだまだ課題が残る。研修会等活動に対する予算配分の男女差など、気付いたことを声に出す古賀さん。「地域として本当に女性に活躍してほしければ、そこから変えなければいけないと思います」。
農業関係者で構成されているのが一般的な農業委員の中で、パティシエである古賀さんはさらに異色な存在だ。「私は農家ではないうえ、自営業。何のしがらみもなく自由に意見できるのが強みなんです。加えて大野城市は発言のチャンスが多く、感謝しています」。隔月1回の定例会で女性農業者の活動や現状について、気付き、理解してもらえるよう心がけている。
その一方で、異例の農業委員就任を地域の方に受け入れてもらうのも大変だった。「農業委員は毎年夏に各農家さんへご挨拶に伺うのですが、初年度はどこへ行っても、『なぜあなたが農業委員になったの?どこの人?』と聞かれ、男女ともに良い顔をされませんでした」。しかし2年目は笑顔で迎えてもらえ、とても嬉しかったそう。「親子クッキング教室の講師をしたり、大野城市食育推進イベントで野菜スイーツを配布したことなど、食育推進の努力を少し認めて頂けたのではないかと思っています」。
菓子工房のパティシエを務める傍ら、農業委員の活動をベースに食育推進にも力を注いでいる古賀さん。そうすることで、「面白いことをやっている人がいる。やっぱり女性の農業委員も必要だ、と感じてもらえたらと思っています」。
古賀さんは「Misato食育サロン」を運営し、定期的に食育講座を開催している。食育講座を始めたきっかけは、「一緒に野菜のお菓子を作ったら、息子が野菜嫌いを克服できた」という自身の経験。「ほかの子も自分で作ったら食べられるようになるのでは」という思いがわいた。以前、大阪でホリオクッキングスクールの料理教室のアシスタントをしていた経験も助けとなり、最初はボランティアで始めた。その後、口コミであっという間に広がり、人気の講座に。
そして、この食育講座は農業委員就任のきっかけにもなった。「私の食育講座を知ったJA筑紫さんが専属フードコーディネーターとして起用してくださり、それを知った大野城市の農政担当の方からお話を頂いて」。その後市議会議員の推薦を受け、農業委員就任に至った。
外国産に頼りすぎている現在の日本の食糧事情に、古賀さんは危機感を抱いている。「外国産は収穫から日が経っているため栄養価が低い一方、地元の獲れたての野菜は栄養価が高い。特に、少量しか食べないご年配のかたや子どもは、効率よく栄養を摂ることが重要。そうなるとやはり地元の野菜を食べることはとても大切なのです」と、古賀さんは子を持つ立場だからこその意見も。「地産地消は私達にも地元の農家にとっても、良いことなんです」。
そのことを多くの人に知ってもらうためには、誰もが関わりのある「食」をテーマにした食育講座が良い機会だという。「私が運営する講座は参加費を抑え、家にあるもので簡単に作れるレシピにするなど、ハードルが低くなるよう工夫しています」。講座では農家の方と交流し、農家の想いを知ってもらう機会も作り、農家と消費者を結ぶ役割も担っているという。
2012年9月からは、現在運営している「Misato食育サロン」で更なる食育事業を展開していくという古賀さん。旬野菜のクッキング教室、アレルギー対応クッキング教室など講座の数も増えるため、「子どもがいてフルタイムの就職は難しい、栄養士などの有資格者の女性を講師として積極的に採用していきたいと考えています」。古賀さんの今後の展開が、ますます楽しみだ。
(2012年7月取材)
農業委員、パティシエ、食育サロン代表、1児の母…と何役もこなす多忙な古賀さんの毎日の楽しみは、お酒を飲む時間。ワインや焼酎を好んで飲む。「ワインなら3日で1本あけるペースかな」。また、最近は知り合いから勧められて始めたというゴルフも趣味に加わった。「まだコースをまわれるほどではないのですが、ときどき打ちっぱなしに出かけています。ゴルフを始めてから、さらに人脈が広がって楽しいですね」。
福岡女子短期大学食物栄養科卒業後、大手証券会社や銀行に勤務。働きながらホリオクッキングスクールでフードコーディネーター養成コース受講、「ル・コルドン・ブルー」の神戸校 菓子ディプロムなど食関係の資格を取得。2009年に自宅を改装し菓子工房「LeBonheur」をオープン。2011年にはJA筑紫専属フードコーディネーター、大野城市農業委員に就任。Misato食育サロンの代表も務める。1児のシングルマザー。
キーワード
【か】 【起業】 【農林水産】 【子育て支援】