西村澄子（にしむらすみこ）さん（2012年7月取材）

取材時：福岡県ＰＴＡ連合会会長

子どもたちが、夢に向かってのびのびと羽ばたける社会に

　2011年、福岡県PTA連合会で初の女性会長が誕生した。福岡県においては、PTA会長の女性の割合は7％（平成23年度）。実際の活動は、ほとんど女性が担っているにもかかわらず、トップは男性が大多数を占めている。「PTAの会長は女性にも十分果たせます」。そう語るのは、やわらかい雰囲気が印象的な西村澄子さん。3人の母として、これまで10数年PTA活動に従事した長年の実績を評価され、県内の政令指定都市（福岡市・北九州市）を除く公立小中学校684校のPTAを代表する立場となった。

人との出会いが魅力です

　西村さんは短大卒業後、中学校の体育講師を8年務めた。「子どもと接するのが大好きで、充実した毎日でした」と当時を振り返る。結婚を機に退職し、長女が小1の時に役員を引き受けたのがPTA活動のスタートだった。「学校側の大変さも分かっていたので、先生の手助けをしつつ、保護者とのパイプ役になれればという気持ちでした」。とはいうものの、当初はあまり乗り気ではなかった。「だれもなり手がいなくて仕方なく手を挙げたんです。でも、実際に活動を始めると、だんだん楽しくなって」。未知の世界を知る喜びと、たくさんのすてきな出会いがエネルギー源となったのだ。そして2008年、尊敬する女性の校長先生から「西村さん、あなたなら会長もできるわよ！」と背中を押され、会長職を引き受ける。「この先生と一緒に子どもたちを支えていきたいと思ったんです」。

チャレンジしないのはもったいない

　以前は、どんなことに対しても、“私にできるのだろうか…”と考え、断ることが多かったそう。しかし「認められているからこそ、声を掛けられる」という言葉に心を大きく動かされ、西村さんは変わった。「とにかく、言い訳せずにチャレンジしてみることが、女性の社会進出のために大切だと感じています」と、自分自身を振り返り、笑顔で語る。会長は特別な女性でないと務まらないのでは？　そう思っている人も多いようだが…。「そうでないことをお伝えするのが自分の使命。女性会長が増えて活躍してもらえたら嬉しいですね。PTAの活動は、学校運営を学ぶよいきっかけになりますし、子どもや自分の成長にもつながるのではないでしょうか」。PTA活動をもとにステップアップを果たした彼女の言葉だけに説得力がある。最近では、西村さんの活躍で、各学校のPTAの会長にも女性が推されるようになったという。

子どもが大きな夢を持てる社会に

　PTA連合会の会長1年目、女性に会長が務まるのか？　という男性からの視線を感じたこともあるという。しかし西村さんは、これまでの経験を活かし組織に新しい風を送っている。さまざまな声を聞きながら見えない部分をあぶり出し、連絡を徹底するなど、分かりやすい組織作りを進めている最中だ。西村さんからは”会長だ”という気負いが、いい意味で、あまり感じられない。自然体で無理をせず、だが、決断が必要なときにはびしっと決める頼もしい存在だ。そんな彼女を見て家族も変わった。「夫もゴミ出しや料理を作るなど、家事に積極的に参加するようになりました」。覚悟を決めて前進する妻を応援する、心強い味方だ。西村さんは、子どもたちの幸せを心から願っている。「前に進んで頑張ろうとする子どもたちのパワーを見ていると、誇らしく思います。男女関係なく大きな夢を持ち、実現できる社会を作っていくことが、私の役目だと思っています」。いつかは、自分を支えてくれた地域に貢献し、お世話になった恩返しをしたいとも考えている。そんな彼女の背中を見て育った子どもたちの中から、すばらしい女性リーダーが誕生する日は近いかもしれない。

（2012年7月取材）

「スポーツはエネルギー源！」という西村さんは、ビーチボールバレーを14年続けている。無心になれてストレス発散できるのが魅力だそう。ビーチボールバレーとは、室内でビーチボールを用いて行う4人制の競技。手軽にできるスポーツとして人気だ。忙しい合間をぬって、週2回の練習には必ず顔を出す。その実力は全国大会で2回の優勝を果たすほど。「結果はごほうび！　勝利は嬉しいですね」。