【ロールモデル】
ロールモデルとは
shoe closet PASSO&(シュークロゼットパッサンド) 代表
足の健康は、全身の健康維持の基礎となる部分。にもかかわらず、足に何らかのトラブルを持っている人や、靴が合わないと感じている人は実に多い。そこで、吉田惠さんは、足長や足囲を計測し、自分の足にぴったりの靴を提供するショップ、shoe closet PASSO&(パッサンド)を開店、多くの人の足の悩みをサポートしている。
吉田さんが店を開くきっかけとなったのは、事故により左脚を切断したというつらい出来事から。29歳の時のある晩、横断歩道を渡っていると信号無視をした猛スピードの車にはねられた。飲酒運転の車だった。飛ばされて歩道でうつぶせていた。ふと見ると脚がない…。
なんとか一命をとりとめたものの、骨髄炎を起こすたびに入退院を繰り返し、再手術も経験した4年間だった。その後作った、脚代わりの義足では立っているのがやっとという状態だった。「歩くことさえできず、外観も受け入れがたいものでした。どうせ歩けないのなら、形だけでもきれいな義足をつけたかったんです」。吉田さんは納得のいく義足を求めてイギリスへ渡った。
新しい義足を得て、以前より歩けるようになった吉田さんには、ある思いが強くなっていた。「ただ給料を得るためだけの仕事ではなく、社会に役立つ仕事がしたい」と。手に職はなく、体にも不安がある中、積極的に職業相談会などに参加し、仕事についての見識を広げた。
その後、「足と関わる仕事がしたい!」と『メリーグラシス』という足と靴の専門店で働き始め、足と靴に関する知識や接客についても学んだ。そして、吉田さんは店を開くことを決意。しかし、「開業を夢見ていざ動いても、なかなか思うように運びませんでした」。なんで、こんなにうまくいかないのだろう…。徐々に自信を無くし、しだいに自宅にこもりがちになる。1年半後、それでも変わらぬ自分の思いを確認し「とにかく外に出よう!」と決意。その間ボランティアや習い事などをしたりして積極的に外へ出て行った。そんな時、ちょうど思い描いていた物件と巡り合い、2008年5月ついに念願のお店をオープンさせた。
店には足に悩みを持つ女性が集まる。足や身体に負担をかけない、履き心地がよい靴であることはもちろん、ファッション性も含めた、女性ならではの視点で靴販売を行っている。1対1で丁寧にフィッテング。約1000足の在庫の靴の中から、瞬時にお客さまに合う靴を提案。今までにない履き心地と素敵なデザインにお客さまからは、つい笑顔がこぼれる。「ピアサポート(同じ立場の人によるサポート)のできる靴屋をめざしています」。
また、2011年からは、医療従事者、技肢装具士、靴専門家と一緒に『足もと健康サポートねっと』というNPO活動も始め、足に悩みを持った方々へのサポートを行っている。
「どんな足のトラブルのある方にも、女性ならではの視点でフォローをし、いつでも女性であることを感じてもらいたいのです。また義足を使う側からの意見をしっかり反映させていくことで、義足技術の一層の向上に寄与したい」。吉田さんの夢はさらに広がっていく。
(2012年2月取材)
お店にNPO活動にと日々多忙な日々をお過ごしの吉田さんですが、おいしいものをいただきながら、人と楽しい時間を共有するひとときを大切な時間とされています。お店を始めるときも、おいしいお店が近くにあることが店舗を探す条件の一つだったそうです。
『shoe closet PASSO&(シュークロゼットパッサンド)』代表。
交通事故で片足を失ったことにより、靴屋に転身。履き心地の良さ、ファッション的にも洗練された女性目線での靴を扱う。現在は、NPO法人足もと健康サポートねっとの理事として、医師・看護師・理学療法士・義肢装具士・フットケアリスト・運動指導士・管理栄養士ら足の専門家とともにカンファレンスなど行う。
キーワード
【や】 【働く・キャリアアップ】 【起業】 【NPO・ボランティア】 【福祉】