【ロールモデル】
ロールモデルとは
株式会社アヴァンティ 代表取締役会長・CEO （取材時：代表取締役社長） ／ 福岡県男女共同参画センター「あすばる」 前館長
大学を卒業した後、化粧品メーカーのOLとして３年間働いた後、退職。その後、役所の臨時職員に採用され、衝撃的な体験をします。そこでは、１日４回の‘職員のためのお茶汲み’が仕事に組み込まれていました。職員はひとりをのぞいて49人が男性。臨時職員は女性６人。「まるで、‘夫に仕える妻’のように、臨時職員は職員のひとりひとりの好みを覚え、いそいそと机に運ぶの」。村山さんは、「日本の社会は女性の労働力をこんなふうにしか見ていないのか」と体が震える思いだったといいます。その年は、いみじくも男女雇用機会均等法が施行された年。
「男女の能力って本当に違うのだろうか？─、いや、同じはずだ！」。もやもやした気持ちの勤務初日、村山さんは事務机に置いてあった小さな情報誌を目にします。一刻も早く職場を変わりたいと思っていた村山さんは、求人募集もしていないその情報誌に「アルバイトはありませんか？」と電話したそうです。それが、運命の分かれ目でした。契約期間の３ヶ月を待たず退職させてもらい、その情報誌の編集部に入ります。正社員ではなく嘱託。広告営業をして記事を書くのが仕事でした。お金さえ稼いでくれば会いたい人に自由に会える仕事がたまらなくおもしろかったそうです。OL時代、「他の会社の女性たちと話したい、刺激がほしい」と思っていた村山さんは、読者を集める食事会やツアーを積極的に企画します。
２つの情報誌を経験し、1993(平成５)年、有限会社ファウプを設立し、『アヴァンティ』を創刊します。起業する時、貯金は全くなく、資本金はすべて友人たちに借りたそうです。大変な赤字を抱えた数年間を乗り越え、発行部数や読者数、知名度も着実に上昇していきます。売上も創業時の６倍になりました。新卒採用も毎年されていて、「男女平等の視点で雑誌を作る」編集方針に共感できる人だけを採用するそうです。情報誌を出版、セミナーやシンポジウムを企画し、多くの女性たちにパワーを与えつつ、精力的に活動されています。
「自分が目指す情報誌を作りたいという、やむにやまれぬ思いから会社を設立しました。具体的にコレという形が見えていたわけではありませんが、やりたいことをやるには自分でリスクを負わないとダメだと思いました」。
「‘大丈夫’と読む人の背中を押してあげるような記事を書きたいと思ったし、読者の働く女性たちと刺激を与え合う場を作りたいと思っていました」「自分自身がＯＬの頃、刺激的な出会いがほしくて悶々としていたので、それが情報誌を出版し、読者を集めるセミナーなどをすることで叶えられると思っていました」。
「‘なぜこうなのか’‘ここが不満’といった自分なりの疑問や意見を持ち、『私ならこうする』『こんなものがあったらいいのに』と感じる心が起業の芽だと思います。」「今まで、一度も後悔したことはありません。会社設立から軌道にのるまではお金がなくて大変でしたが、それを苦労とは思わなかった。いつも『私のすることは、必ずうまくゆく』と思っていました」。
「起業することは、私にとって‘心が自由’という感じ。誰からも抑圧されることなく、物事は全て自分で決めることができます。そんな心が前向きな力を生むのだと思います。同時に、自分で物事を決めることは、やりがいのあることなので、どんどん部下に権限を委譲していきます。でも最終的な責任は自分自身が負うどっしりした覚悟が必要です」。
「情報誌は‘発信する’だけでなく、‘人を集める’こともできます。現在毎年１回、女性たちのためのセミナーを開いていますが、そこで読者の皆さんに参加していただくことで、いろいろな人と出会い、そこで何らかの刺激を受けてほしいと思っています。人と人が繋がることでエンパワーメントされます。『アヴァンティ』を通して女性たちが元気になったり勇気づけられたり、そんな輪がたくさんできていったらうれしいです。そして、働く女性たちの思いを社会に提言したり、女性たちのアイデアで新しい商品が生まれたり、それが私の夢です」。
（2005年12月取材）
1993（平成5）年に有限会社ファウプを設立し、働く女性を応援する「アヴァンティ」を福岡市で創刊。2002年全国商工会議所女性会連合会「女性起業家大賞奨励賞」、2008年内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞。2010年4月から2015年5月まで福岡県男女共同参画センター「あすばる」館長を務め、現在は株式会社アヴァンティ代表取締役会長・CEO。
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