新井洋子（あらいようこ）さん　　（2005年12月取材）

エントリーサービスプロモーション株式会社代表取締役社長

女性の可能性を開拓していきたい

起業に至るまで

　新井さんが大学を卒業された当時「女性は22歳で結婚」が当たり前の時代でした。「いかに素敵な男性を見つけて卒業と同時に結婚するか」女子大生の多くがそう思っていた時代でした。それでも「私は仕事がしたい。何か大きな足跡を残して生を全うしたい」と新井さんは漠然と考えていました。彼女にとって、「花嫁修業をして家に落ち着く人生」は耐え難いものだったのです。
　女性が働くのは夫の稼ぎが少ないからだという偏見があったこともあり、結婚当初は『世間の笑いものになる』と働くことを夫に反対されました。子どももおらず、家事だけをする不満だらけの毎日。働きたい想いが今にも破裂しそうなほど膨らんでいたとき、ふと大学の卒業旅行で訪れたホテルで見た「パーティーコンパニオン」の姿を思い出します。大学時代消極的で挨拶すら苦手だったという新井さんにとって、お客様を笑顔と明るい声で迎える彼女たちの姿は魅力的でした。福岡にはコンパニオン派遣の会社がなかったため、「これはチャンスかもしれない」と思い立ちました。広告代理店福岡営業所の支店長をしていた夫も、当時新聞社の人からパーティー代理業の事を聞き、独立するのだったら２人３脚でと、1975年にエントリーサービスプロモーション（株）が誕生しました。

時代の風に乗って

　1970年代、それは福岡の街が急成長している真只中でした。山陽新幹線開通やOA化（オフィスオートメーション化）を進めようという電気機械メーカーの動きが盛んな時期でもあり、会社設立の祝賀会、ホテルでのさまざまなパーティー、OA化のためのイベントのサービスプロモーションなど、コンパニオンやキャンペーンガールの需要が急激に伸びました。時代の風をつかんだ新井さんは「仕事がなくて苦労する」というような経験をすることなく、事業を拡大していきました。新井さん自身も社交的でなかった自分を捨て、そうなりたい自分を作って仕事をすることで性格が変わっていったといいます。「不満だけ、文句だけを言っていた結婚当初からは考えられないほど充実した毎日を送り、笑顔だけの毎日になりました。夫（現会長）が、仕事への理解とチャンスをくれたのです」。

女性であることの強み

　コンパニオンには、細やかな心遣いと人を癒す笑顔が欠かせません。新井さんはそのような能力があることは女性の大きな強みであると考えられています。また、女性経営者がまだ少ない時代に男性経営者の中に入り、なおかつ順調に業績を伸ばしたことで注目を浴び、新聞や雑誌で取り上げられました。「ライバル会社がほとんどない状況で、運がよかったのよ」。
　「運がいい」と繰り返し言われる新井さんですが、苦労がなかったわけではありません。しかし「苦労はゲームで言う敵と同じ。どうやったらクリアできるかを考えて攻略するのが楽しいのよ」と笑顔で語られるその姿からは、すべてをプラスに変えるパワーがあふれていました。

夢をカタチに

　「世の中を正直に生きる」これが新井さんの成功の秘訣です。そしてもう一つ、新井さんの大好きな言葉があります。「夢をカタチに―」。
　「強い思いだけが夢を叶える力となります。本気で「叶えたい、叶えるんだ!」と思えば、たとえ挫折して遠回りしたとしても、最終的には夢は形になる。だから最後まで叶える努力を続けてほしいのです」「私にも叶えられたのだから、皆さんが叶えられないわけがない。私の姿を見て、女性も夢が叶えられるんだって思ってほしい」いつもそういう思いで講演などを行われている新井さん。「女性に夢を与えたい。女性の可能性を広げるためにも自分自身が開拓していきたい」「仕事がしたい、何か大きな足跡を残して生を全うしたい」その思いを諦めることなく大きく育てていった結果、ビジネスのアイデアが生まれついに形となった新井さん。今も新しくたくさんの夢を描き、それらを形にするために充実した毎日を送っています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2005年12月取材）

☆近況紹介☆

〔近況をお聞きしました！〕
九州新幹線の全線開通、新博多ビルの開業など福岡は大きく変わろうとしています。
弊社は山陽新幹線開通がきっかけで伸びた会社ですので、今回もこの不況を打破するチャンスにしたいと思っています。
時代は変わり、何かと不安定な世の中ですが、幸い私どものスタッフは各派遣先から高い評価を得ています。それは「仕事に対する愛情とプライド」をお客様に感じて頂けるからだと思います。
時代は変わっても「人の気持ちの大切なところは変わっていない」と私は思います。これからも、働くスタッフや社員が仕事に対して愛情とプライドを持ち続ける事のできる環境づくりを進めていきたいと思っています。
（２０１１年３月）