【ロールモデル】
ロールモデルとは
株式会社インターナショナル エア アカデミー 代表取締役社長・学院長
鮮やかな赤い制服に身を包み、凛と背筋を伸ばして街を闊歩する女性たち。客室乗務員やグランドスタッフを養成するエアライン専門校「インターナショナル エア アカデミー」の生徒たちだ。学院長の永江靜加さんも、もちろん元客室乗務員。高校生の頃、テレビドラマ『アテンションプリーズ』に衝撃を受け、約100倍と言われた難関を勝ち抜いて夢をつかみ取った。
「自衛隊芦屋基地が近い岡垣町の出身で、飛行機といえばジェット戦闘機。お客様を乗せて世界を飛び回るなんて職業がこの世にあるのか! 私もなりたい! ビビビッとひらめきました」。
しかし、当時の永江さんは猫背で声も小さく、常に伏し目がちな「コンプレックスの塊」。夢を語っても、周囲は笑って取り合わなかった。応援してくれたのは、部活の先生と母親だけ。「お前はこの世でたった1人、やりたいことをやれ」「人生は一度きりよ」との言葉に励まされ、見事合格。「諦めなければ夢は叶う。誰でも無限大の可能性がある」と悟った瞬間だった。
客室乗務員として充実した毎日を送り、やがて結婚退職。裕福な夫と娘たちに囲まれ、“女性の幸せ”をすべて手に入れた。しかし次第に「本当の幸せって、心の豊かさでは?」と考え始める。自分や家族のためではなく、社会のため、第三者のために役立つことを何かしているか?と。そんな時にかかってきた先輩乗務員からの電話に、永江さんは熱く訴えた。「スチュワーデスとして培ったサービス学、心の美学、魅力学で、21世紀の日本を支える女性教育の学校を作りたい!」。
運命の輪が回り出す。その場で役割分担を決め、わずか1カ月で会社を設立。理想のテナント物件を見つけた時には、いきなり飛び込んで夢を語り、見ず知らずの相手から「応援しましょう」の言葉を引き出した。一生安泰な生活を投げ打っての起業に非難の声は多かったが、「絶対成功してみせる」の反骨精神とポジティブシンキングで乗り越えた。
「奇跡は起こる。人の心は動かせる。経営にはヒト・モノ・カネと言いますが、モノがきちんとしていれば、ヒトもカネもついてくるんですね」。
今、永江さんのサービス教育・接遇マナー教育は、エアライン業界だけでなく、さまざまな企業の人材育成に活用されている。夢や希望、感動を持って働くことの幸せや感謝に気づいてもらうという、心のマナー研修だ。JR九州の「つばめレディ」や福岡市タクシー協会の「タクシーコンシェルジュ」など、私たちが身近に接する女性たちも多い。東京都恵比寿で開講しているサロン「R.GLOW」では特に、内面・外面を磨いて真に幸せな人生を送るための「魅力学」を広く伝えている。
「魅力とは何か? 強いて挙げれば謙虚であることです。客室乗務員時代、ファーストクラスのお客様はやはり別格でした。人の上に立つ成功者でも、自分一人の力ではなかったという謙虚さや、他者へのリスペクトの心、思いやりを持っている。凄く勉強になりました。謙虚に勝る美しさはありません」。
(2011年3月取材)
永江さんの教育方針は、とにかく“褒めて褒めて褒めまくる”こと。「あなたは素敵!」「あなたなら大丈夫!」が口癖だ。厳しく言って自信を失わせるのではなく、人を励ます言葉、喜んでもらえるポジティブな言葉を、惜しみなく使っている。「おべんちゃら、おべっか、お世辞…それが大事。1円もお金をかけないで、幸せになっていただけるんですから」。下心のあるヨイショではなく、「You made my day!」「Thank you so much!」と外国人が自然に口にする言葉の実践なのだ。「植木等の『ゴマスリ行進曲』、講座で歌いますからね。面白いですよ」。
福岡県出身。全日空の客室乗務員として勤務後、結婚退職。専業主婦生活を経て1984(昭和59)年、29歳で「インターナショナル スチュワーデス アカデミー(現インターナショナル エア アカデミー)」を設立。福岡の本校に加え、現在、東京、大阪、広島、長崎で学院長を務める。エアライン業界を目指す人材の育成に力を注ぐとともに、大学・短大での講演、国内外の企業の社員研修や就職セミナー、経営者セミナー、コンサルティングなど幅広く活躍している。著書に『感動』『幸せになる魅力学』がある。
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