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大谷 順子(おおたにじゅんこ)さん (2011年4月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

NPO法人 子どもの村福岡  専務理事

子どもの問題に取り組む数々のNPO法人を設立

 

虐待、放任…。複雑で根の深い問題に直面

 子どもの権利に関する国際基準『子どもの権利条約』が、日本で批准されて15年以上が過ぎた。しかし、この国の子どもを取り巻く現況は、極めて厳しい。2009(平成21)年度の児童虐待相談対応件数は、全国で対前年比4%増の44,210件、福岡県では849件を数える。また、親の病気、死亡、貧困、失踪、放任などさまざまな原因により親といっしょに暮らせない子どもたちは増加の一途をたどり、乳児院や児童養護施設は常にいっぱいというのが現実だという。
 こうした子どもを取り巻く問題に取り組んできたのが、『子どもNPOセンター福岡』の代表理事であり、『子どもの村福岡』の専務理事を務める大谷順子さんだ。そもそも、こうしたNPOを立ち上げる契機となったのは、1966(昭和41)年に『子ども劇場』の創立に関わったことに始まる。
 「子どもを取り巻く状況は悪化しており、健全な文化に接することでいい方向へ向かうと思ったのが契機でした」。ところが、状況を知るほどに問題の根は深く、複雑であることに気づく。大谷さんは、さまざまな問題に取り組むべくNPOを立ち上げていった。

情報の受発信と政策提言がNPOの存在意義

 1998(平成10)年、TV局勤務の経験もあったことからNPO法人『子どもとメディア』を設立した大谷さん。TVやネットなどによる諸問題を検証し、社会提言を行う活動を続け、次いで子どもの声に耳を傾ける『チャイルドラインもしもしキモチ』を立ち上げ、これまで表に出ることのなかった虐待や不登校などの切実な問題を浮き彫りにさせていった。
 こうした問題を解決するには、ひとつのNPOでは限界がある。そこでネットワークを作って全体で対応しようとの気運が生まれ、NPO法人はもちろん弁護士や行政、企業が参加した『子どもにやさしいまちづくりネットワーク』が誕生した。事務局長を務める大谷さんは「子どもに関わる情報の受発信や政策提言を行うことがNPOの存在意義であり、役割である」と明言。福岡市とともに子どもの虐待防止活動推進委員会を立ち上げ、シンポジウム開催などを手がけていく。
 2005(平成17)年、福岡市から委託を受け、市民参加型里親普及事業に着手。大谷さんにとっては未知の分野だったものの、わずか6年で里親委託率を全国平均の2倍にするなどめざましい実績を上げた。

2010年4月『子どもの村』開村

 里親普及事業を始めて半年。大谷さんは、国連の『子どもの権利条約』を保障する国際NGO・SOSキンダードルフの存在を知る。子どもの村という家庭的な環境と専門的なサポートをセットにしたプログラムを擁し、世界規模で活動するNGO。 里親事業を行う中で、子どもには家庭的な環境が必要だと感じていた大谷さんは、その理念に共鳴し、福岡に子どもの村を作る決意をする。
 2006(平成18)年4月、NPO法人設立に向けての準備会が発足。以後、SOSキンダードルフ国際本部との協定締結、子どもの村建設候補地検討、後援会設立など、やるべきことの余りの多さに一時は迷うスタッフ。「資金集め、人材づくり、プログラム作成、土地探し…やるべきことが多かったから、勢いをつけて同時進行で進めました」。大谷さんをはじめ、共鳴して駆けつけたスタッフ、後援会の法人・個人、いろいろな人と組織がひとつの志で結ばれた。
 そして2010(平成22)年4月、福岡市西区今津の地に日本初、世界では133番目となる『子どもの村福岡』が開村。1年が過ぎたいま、子どもたちは育親のもとで安心して眠り、よく育っているという。
                                    (2011年4月取材)

コラム

自然にふれてリフレッシュ、そしてまた子どものために

 多くの賛同者や支援者に恵まれ、『子どもの村福岡』が誕生しました。私にとって志を同じくする仲間に恵まれたことは、本当に幸せなことだと思います。「大谷さん、苦労が多いですね」と言われることもありますが、虐待やネグレクトを受けてきた子どもに比べれば、苦労のうちに入りません。
疲れたら自然にふれてリフレッシュ。子どもたちのために、まだまだ走ります。

プロフィール

1958(昭和33)年、奈良女子大学文学部卒業後、RKB毎日放送に入社。1966(昭和41)年、『子ども劇場』の創立に関わり、以来、子どもを取り巻く問題解決に取り組むようになる。1998(平成10)年、NPO法人『子どもとメディア』を設立。2001(平成13)年NPO法人『チャイルドラインもしもしキモチ』を設立し常務理事に就任。
2004(平成16)年、NPO法人『子どもNPOセンター福岡』が設立され代表理事に就く。2009(平成21)年、NPO法人『子どもの村福岡』専務理事へ就任する。

 

 

 

 


 

 

 

 

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