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山口 信子(やまぐちのぶこ)さん (2011年2月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

G&E株式会社ザ・カルチャー 元代表取締役

学んだ英語を生かし男女共同参画社会へ尽力

 

母の後姿と父のひと言で人生が決まった

 山口さんの母は住み込みで働いていた。「ヴァイオリニストだった父が家にいない間、母は幼児の私を山里に預け働いていた。月に1度の母に会える日が待ちきれなかった。去っていく母の淋しげな後姿を見るたびに、病弱だった母がなぜそこまでして働かねばならないのかと子どもながらに思った」と言う。
 戦勝国である米軍関係者は、女性も生き生きと働いていた。「彼女たちの働く姿は、目隠しをされていた私達の目にキラキラと映った。それに比べ、男性中心の社会で働く日本の女性たちの姿は、同じ女性であるにもかかわらず格段の差があるように見えた」と述べる。
 戦後帰宅した父の「これからは英語を学ぶ事だ」という言葉に後押しされ、大学で英語を学んだ山口さん。卒業後は米国宣教師団の放送局「ラジオ・ミッション」に日本語講師として採用されたが、多才さがボスの目にとまり、スタジオ造りから番組制作まで、講師以外の様々な仕事も行った。「その中で、働く事や生きる事、働く価値には、性別は関係ない事が分かってきた」と語る。

世界を渡り歩き、歴史の現場にいた

 1975(昭和50)年、「国際婦人年世界会議(メキシコシティ)」が開催され、国連は「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を多くの国に批准させるため、「国連婦人の10年」として長い活動期間を設けた。
 当時はベルリンが東西に分断されており、東欧側は独自に「婦人年国際大会」を開いた。ロンドンで国際交流のボランティア活動をしていた山口さんは、新聞社の記者IDを持ち単身で西ベルリンから東ベルリンへ。3時間余の検問の後、ようやく駆け付けた会場。「準備したフィルムすべてを抜き取られた事に気が付いた。あわててフィルムを買い撮影した」と言う写真は、日本の新聞にスクープとして掲載。その後も1980(昭和55)年の「中間年世界会議(コペンハーゲン)」、1985(昭和60)年の「最終年世界会議(ナイロビ)」と取材を続けた。
 「差別撤廃条約」を日本がコペンハーゲンで批准すると言う誓約書に署名したのは、初の女性大使と政府代表を兼ねた高橋展子さん。「歴史が創られたその現場では感激し、日本女性たちと抱き合った。だが、世界には人種や性別などの格差は未だに残っており、現在も、国連やNGOの活動は続いている」と語る。

街づくりも国際交流

 「私は方向音痴。知らない町を歩く時は、ホテルでもらうウォーキングマップ、都市全体の地図とメモ帖、筆記用具を手離さない」と言う山口さん。英国で「ハート・オブ・イングランド」と呼ばれる田園地帯をドライブしたときは、村や町の分岐点の角にある、行き先を示す標示板が上下左右に打ち付けられたポ-ルにずいぶん助けられたと言う。
 「外から来る人にとっては、分かりやすい案内と地図が必要。パリには大きな鉄道駅が行き先別に数箇所ある。駅の窓口に英国旗が貼ってあるのは『英語でどうぞ』の意味。コンコースに出ると、学生ボランティアが『○○語』という案内板を立てた移動式カウンターでガイドをしている。『様々な国の人と話が出来て会話の練習になり、とても楽しい』と言われた」と語る。
 山口さんが京都に行くと、いつのまにか通訳やガイドになることが多い。「外国人は地図を持ってはいるが、古都の小さな通りには案内板や標示が少なく、神社・仏閣への道筋が分かりにくい。国際交流は国と国ではなく、人と人との交流から始まる」と述べる。
                                    (2011年2月取材)

コラム

男女共同参画の真意を平易な言葉で

 「男女共同参画」という言葉では「平等」の真意が伝わらない、と山口さんは危惧する。自分の生命は自分で創れないし性別も選べないのは当然。この大前提からの発想が忘れられて女性が男性と共に社会に進出する方法と成功だけが共同参画だと誤解されている。生命=平等=男女の基本的権利、を再確認して活動すべきでは、と言う。

プロフィール

 1953(昭和28)年、同志社女子大学卒業。「大阪ラジオ・ミッション」を経て、1969(昭和44)年、「九州国際文化協会」を創立。1975(昭和50)年から、東ベルリン、コペンハーゲン、ナイロビ、北京、ニューヨークで行われた「国連世界女性会議」を取材。
1978(昭和58)年から2007(平成19)年まで「国際文化研究会」会長を務めた。2007(平成19)年11月「福岡県男女共同参画表彰」県民賞を受賞。
著書に「私の旅物語」「英語発音入門」「海外旅行のための12章」などがある。

 

 

 

 


 

 

 

 

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